幸せで穏やかな妊娠期間のはずが......夫の借金の肩代わりに奔走する日々 ギャンマネ(32)
長女を妊娠し、幸せで穏やかな妊娠期間を送るはずが、夫の借金が次々に発覚し、肩代わりに奔走した私。借金を返し終え、無事出産して、「これで夫も博打をやめるだろう」と一息ついていたのですが......

公開日:2025/08/07 01:59
連載名
ギャンマネさて、まんまと妊活に成功した私。第一子の束の間の妊娠期間は、私にとっての短い専業主婦時代でした。とてつもなく暇で、人生で一番心穏やかな日々......と思うじゃないですか。
もちろんギャン妻の専業主婦時代はそんなのんきなものじゃありません。
当時の私にタイムリープで出会うことができるなら「あんたね~、のんきなことやってないでとにかく稼げる仕事に就きなさい!」と叱咤激励するところです。
闇カジノ仲間からお祝い10万円!喜んでお礼を言ったら......
まず、我々結婚式は流れてしまいましたが、あっちゃこっちゃからお祝いは頂きました。
帰宅した夫から「今日、ナベ長に会ってさ。お祝いくれたよ」と言ってカジノ時代のディーラー長からのご祝儀袋を渡してくれました。中を見るとなんと10万円!店は摘発を受け、ディーラー長ももちろん起訴され、執行猶予とはいえ有罪判決となったので、これから先どうすんのかな?と思っていた矢先のこと、私は有難くって翌日速攻でお礼の電話をかけました。
「ナベ長、お祝い有難うございました。色々大変な時にすみません」
「いやいや、遅くなっちゃってごめんね。おめでとう!」
「ありがとうございます。でもいいんですかお店が閉まっちゃったのに10万円も頂いちゃって」
「......俺があげたのは30万だよ」
「えぇ!そうでしたか!すいません。夫に貰ったご祝儀袋には10万しか入ってませんでした。いや~、すいません。」
もう、こっちはしどろもどろです。
ディーラー長はしばらく沈黙のあと
「大丈夫、姐御?幸せ?」
なんて聞かれてしまい、もう恥ずかしいのなんの。
早速、帰ってきた夫をとっちめます。
「あんたね~!また博打やってんでしょ。ナベ長がくれたの30万らしいじゃん」
こんな時の夫は速攻で詫びを入れます。
「ごめん。ごめん。でももうやらない」
相次ぐ借金 サラ金のカードが11枚も
そしてまた別の日には、夫が立ち上がった瞬間にお尻のポケットからカードケースが落ちてきて、サラ金のカードが11枚も出てきたのです。
「何よこれ。一体どういうこと。あんたまだギャンブルやってるの?」
夫は即座に正座をして詫びを入れます。
私は、財布も奪い中身を確認します。案の定180万円の質草も出てきます。
「カジノの餞別でもらったロレックスでしょ!質屋に入れたわけ?どうすんのよ!!!」
この頃の我が家は、どーんと住宅ローンがあり、私は仕事を辞めてしまいシングルインカム、さらにはこれまでの借金も細々と払っている状態でした。夫の収入は決して悪くはありませんでしたが、こんなに借金だらけになればさすがに生活はキュウキュウです。借金を返すだけで精一杯。ダイヤがギラギラとはいったロレックスは残念ながら流してしまうことになりました。余談ですがロレックスが高騰している今、あれがあったらいくらになっただろう?と思わないでもありません。
夫が多重債務を増やす中、妻は肩代わりに奔走
この頃、まだまだド共依存の私は、借金をなんとか減らさなくてはと速攻で奔走します。しかも私は一度だって夫に、肩代わりしてくれとか、金を貸してくれなんて言われたことがないんです。
夫は、ひたすら私を恐れ、黙々と多重債務を増やしていたんですね。当時は消費者金融の総量規制なんてものはありませんから、究極の自転車操業で、この時は11社で確か230万円くらいの借り入れだったと思います。
余談ですが、サラ金地獄を救うという名目で成立した総量規制ですが、あれは人々を、少なくともギャンブラーを救ったのか?と思います。依存症者は貸し渋りでより危険な方に流れた感じがします。当時の自助グループにはそういう調査を行うとか外部の学者に協力するなどという発想がなかったので、エビデンスが残っていないのは残念ですが、私の肌感覚では当時の問題は、今より単純なただの多重債務だったという気がしています。
婚約指輪まで売って金を工面
さて、夫の多額の借金を発見した私は、「私がなんとかしなくっちゃ」とばかりに、数少ない手元に残っていたブランド品を売り飛ばします。すごい剣幕で荷造りをする私は、夫から「売って後悔するようなものは売らないで。自分で何とかするから」と言われました。
私はその言葉にまた激怒し「あんたが自分で何とかしたことなんかある?自分でなんとかするって、どうにもできないじゃん」と怒鳴りつけ、鬼の形相で次々とブランド物を袋にぶっこんでいきました。
その中には、前の夫から貰った三越で買ったダイヤモンドの婚約指輪もありました。前の夫に未練はありませんでしたが、当時の私は有吉佐和子さんの「悪女について」に多大なる影響を受け、めちゃくちゃダイヤモンドの品質に詳しかったんです。なのでクラリティVVS1、カラーF、カラット1.18という100万円以上する代物を買わせたんですね。これだけは売ることに断腸の思いでした。
質屋のおっさんが「これ三越って刻印があるじゃない。三越で買ったの?見事だね。これ売っちゃうの」と憐みの眼差しを向けてきました。「うん、それ前の亭主から貰ったものだから、もういらないんだ」と精一杯の強がり。しかし私の指には、新しい婚約指輪も結婚指輪もありません。
おっさんは何かを察したかのように「じゃあ、奮発して30万円で買うよ。どう?」と聞かれました。100万円以上の指輪がわずか30万円。私はへなへなと膝から崩れ落ちそうでしたが、「うんOK」と気丈に振舞い、その他バブル時代に買った、ヴィトンだエルメスだのバックを売り飛ばし合計で確か150万円位の金を作りました。さらに掛けてあった生命保険を解約し、私は見事夫の借金を返すのです。
ホッとしながら、夫と自分に向けられた怒りと恐怖
同じギャン妻なら、この借金を返し終わった時のほっとした気持ち、そして何とも言えない惨めさ、怒りは夫に向くのですが、その夫と別れようとしない自分も情けなく腹立たしい、そんなアンビバレンツな気持ちを共感してくれると思います。更にこの頃はまだ「依存症」「自助グループ」なんて言葉すら全く知らない時代ですから、「これから先、子供まで生まれて、私たちはどうなるのだろう」という恐怖しかありませんでした。
解決策が分かる今だからこそ、私は当時の自分と同じような失敗をして繋がってくるギャン妻に檄を飛ばしていますが「よ~くわかるよ。だからこそここでその失敗を止めるんだよ!私がこっから先どうやったらいいか教えてやっから、ついてきな!」と内心ではこんな風に強く思っていますね。
無事長女を出産!これで夫も博打をやめると思っていたのに......
こうして全く安泰でも安全でもない妊娠期間を過ごした私ですが、無事出産の時を迎えます。出産って本当に神秘的だなぁと思ったのは、この日東大病院の産婦人科にかかっていた、出産日の近い妊婦たちが一斉に産気づいたんです。陣痛室は満員状態で、次々と妊婦が分娩室に移動していきます。
私はこの時「これが噂に聞く出産か。鼻からスイカが出る痛みなんて聞いてたけどまだそんなでもないな」なんて思ってたら、看護師さんが「田中さん分娩室に行きましょう」と言われたんです。「えっ、もう?これからが本番の痛みじゃないの」なんて思ったんですね。
でもなんか私その時う〇こがしたい気がして、(汚い話ですいません)看護師さんに「すいません、トイレ行ってきます」と言って、トイレに入った。でも全然出ない。看護師さんに何回も声かけられて、「それう〇こじゃなくて、多分赤ちゃんです。早く来てください」と最後は怒鳴られ、「えぇ!」とばかりに、陣痛室まで慌てて行ったんです。そして無事出産になったんですが、その時「なんて出産てエキサイティングなんだ」と思ったんですよね。人生でこんなに興奮することってないなと思いました。
この時、東大病院は産科のベッドがいっぱいになってしまい、最後の方に分娩した我々数人は陣痛室で入院期間を過ごすことになったんです。あとから来た陣痛中の妊婦を我々が励ましながら過ごす......という不思議な入院期間。まぁでもみんな幸せなのでそんな小さなことは気になりませんでした。
しかもめっちゃ短い入院期間で確か4日間くらいしかなく、その上陣痛室で過ごしたので、なんと入院費用が22万円という破格の安さ!だったんです。自分のラッキーさを天に感謝しました。なんせ当時は25万円しかでない出産一時金でおつりが出たんです。これはギャンブルの神からのご褒美だと思いましたね。
そして嬉しそうに娘を抱っこする夫を見て、「これでこの人も博打をやめるだろう」とのんきに考えていました。
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