大阪府の若者向けオンラインカジノ啓発動画に待った! 「偏見を助長する」支援団体や専門医が批判
大阪府の若者向けオンラインカジノ対策の啓発動画「ギャン太郎」に、支援団体や専門家から批判が相次いでいます。何が問題なのでしょうか?

公開日:2026/01/27 12:56
大阪府が若い世代に対して違法なオンラインカジノをやらないよう啓発しようと作った動画に、依存症支援団体や専門家から批判が相次いでいる。
「誤解と偏見を助長する恐れがある」「病気としての説明が欠落している」
ギャンブル依存症問題を考える会は、公開停止と内容の是正を求める要望書を府に送る予定だ。
何が問題なのだろうか?
高校生が違法なオンラインギャンブルにハマり、回復する動画
問題が指摘されているのは、大阪府地域保健課依存症対策グループによる違法オンラインギャンブル等対策啓発動画「ギャン太郎」。
「桃太郎」を模し、ゲームとスマホが大好きな高校生「ギャン太郎」がスポーツ賭博のサイトを見つけ、友達と一緒に違法なオンラインカジノにハマっていくストーリーだ。最初は勝っていたものの、最終的に負けがこんで、行政の相談窓口に相談し、回復するという結末となる。
何が問題?ギャンブル依存症者のスティグマを強化
ギャンブル依存症は、他の依存症と同じく脳の病気。しかし、世間一般には「本人の意思が弱いから」「だらしないから」「怠け者だから」と偏見の目で見られがちだ。
啓発動画で、主人公のギャン太郎は、「ラクして生きる」がモットーのキャラクターと設定されている。そしてスポーツ賭博のサイトを見て「ラクして生きる人生見つけたかもしれん」と惹かれたのが、始めるきっかけだったように描かれている。
これについて、ギャンブル依存症問題を考える会は、「ギャンブル依存症になる人間は怠け者であるという誤ったステレオタイプのギャンブル依存症者像を強化する」 と批判する。
ギャンブル依存症の患者を数多く診ている昭和医科大学烏山病院精神科の常岡俊昭准教授も、「ギャンブル依存症になる人を『楽して生きたい人』と貶めている点は医学的に間違っているだけでなく、ギャンブル依存症だと告白する事=楽して生きたいと思っていた人認定されるという意味で有害だ」と指摘する。

常岡さんはギャンブル依存症の患者を数多く見てきた経験から、この「啓発動画」が、ギャンブル依存症の人に「自分とは別の話」と思われてしまうリスクを懸念する。
「ギャンブル依存の人のほとんどが『楽して儲けよう』ではなくて、『ギャンブルでしか返しようがない』と視野狭窄して追い詰められて受診します。受診の場でも『ギャンブル依存症はギャンブルで儲けようとする依存だと思うけど、自分は返さなきゃって追い込まれているから依存じゃないんじゃないか』という話になることがあります。この動画だと『自分は楽して稼ごうではなく、家族のために必要だと思ってやった』『借金のために仕方なくやっている』『友達に付き合っているだけで楽しいと思わない』などという動機の人たちに、『自分はギャンブル依存症ではない』と思わせる危険性があると思います」
解決法、精神論は不適切
また動画では、行政の相談窓口につながったギャン太郎に対して、ギャン太郎の心の中の良心の姿が「自分の中の鬼に勝つこと。それがほんまの”退治”や」と語りかける。

これについて、ギャンブル依存症問題を考える会は、「ギャンブル等依存症が、本人の性格や気の持ちようの問題であるかのような誤解を与えます。依存症は脳の機能不全を伴う『病気』であり、意志の力や根性論で克服できるものではありません。病気としての説明が欠落している点は、公的機関の発信として極めて不適切です」と問題を指摘する。
専門医の常岡さんも、「『自分の中の鬼に勝つ』という精神論の表現も問題ですし、相談に行ったのにやめられない人は『自分に勝てない人』ということになり、これもスティグマを悪化させそうです。そもそもギャンブル依存症に『勝った』という言葉自体が、また普通にギャンブルをやることができるかのように聞こえますし、今後のケアも要らないという誤解を生みそうです」と疑問を投げかける。
相談先、それで大丈夫?
また、行政の相談窓口で一回相談しただけで回復するかのような筋書きは、回復まで行きつ戻りつして時間がかかることが多い依存症患者には危険だと常岡さんは指摘する。
「相談することが第一歩だという点は良いとしても、紹介している相談先が相談センターだけで、1回話せばすぐに治るかのようになっていて、これは相談センター(精神保健福祉センター?)も困らないのか心配になります。保健センターから自助グループを紹介してそこで仲間に出会って回復の道を進めていくというストーリーは簡単に作れるはずですが、あえてそれをせずに保健センターで、しかも1回の相談で改善するかのように作らせるのは、一回行って劇的な改善がないほとんどの人たちを追い込むことになります」
さらにギャンブル依存症問題を考える会は、「『鬼』の表現は、本来であれば未成年や若者をターゲットに違法行為を行わせる『違法業者』に向けられるべきです。依存症という病気に苦しむ当事者を『鬼(=異質なもの、排除すべきもの)』として描くことは、当事者の自尊心を傷つけ、孤立を深める結果となります」と、退治すべき「鬼」をギャンブルにハマる人に当てはめていることも問題としている。
そして、相談先情報として、自助グループや民間回復施設が紹介されていないことも「利用者の回復の機会を狭める」と批判している。
これについては常岡さんも「相談する先が親・先生・相談窓口となっていますが、『親や先生には言いたくない』『相談窓口も自分の身元を明かしたくない』という人もたくさんいるはずです。そういう人に身元を明かさなくても良い自助グループの存在や、守秘義務がある医療の存在を出さないのは啓発としては片手落ちと思います」と心配する。
大阪府は問題を認識せず
大阪府地域保健課依存症対策グループは、この啓発動画の作成を請け負う事業者を、価格だけでなく企画内容を審査して選ぶプロポーザル方式(企画競争入札)で公募・選定した。
- オンラインカジノは違法で行ってはいけないことを若い世代に伝えること
- 万が一オンラインカジノにハマってしまったとしても相談先があること
この2点を伝えるショート動画にするという条件で公募したところ、広告代理店を中心に6事業者の応募があった。選定委員会委員は、広報プロモーション、デジタルコンテンツ、法律の専門家で、ギャンブル依存症に知見のある人はいなかった。最高点を獲得したのは、広告代理店「株式会社博報堂プロダクツ関西支社」で 、応募した6事業者のうちの一つ「ギャンブル依存症問題を考える会」には最低点がつけられていた。
作成した博報堂プロダクツ関西支社のプロデューサーは、記者の取材に対し、「大阪府の仕様書に基づいて作成しており、我々は専門家や支援者の助言は得ていない。内容については大阪府に確認してほしい」と話している。
大阪府地域保健課依存症対策グループの担当者は、「主人公は『普通の高校生』を想定しており、みんながそうだとは言わないが、こういう子もいるだろうということでキャラクター設定した」と説明。「ギャンブル依存症の人は怠け者だという偏見を助長している」という批判に対しては、「貴重なご意見ありがとうございます」とだけコメントし、問題とは認識していないことを明らかにした。
また、ギャンブル依存症が病気であるという医学的な説明はせず、解決法として「自分の中の鬼に勝つ」と精神論を提示していることについては、「桃太郎をオマージュした物語なのでこういう表現になっているが、人に相談することで回復につながることを示している」と反論した。
自助グループや民間回復施設などを紹介していないことについては、短い動画なので入れられなかったとし、「相談センターから自助グループや専門医療機関に繋ぐこともある」として、十分な選択肢を示しているという認識を示した。
ギャンブルに依存した人を支援する団体や診療する専門医が、問題を指摘していることについて、依存症対策グループの責任者、市川勝義参事はこう述べた。
「偏見を助長するつもりはなかった。厳しい指摘があるのを受け止め、今後作る時はそういう視点もあることを理解した上で進めたい。然るべき手続きを踏んだ上で関係者とも調整して掲示している動画なので、現時点で公開を止めることは考えていない」
ギャンブル依存症問題を考える会「人権に配慮を」
ギャンブル依存症問題を考える会は、大阪府に問題を指摘した上で、、動画の公開停止と、内容の是正、専門機関と連携して制作することを求める要望書を近く提出予定だ。
同会の田中紀子代表は以下のコメントを寄せた。
大阪は、カジノを誘致した際に「ギャンブル依存症対策のトップランナーになる」と、吉村知事が豪語されていました。当時、私たちはその力強い言葉を信じ、依存症対策推進に期待もしていました。
ところが、あれから8年もの月日が流れても、大阪のギャンブル依存症対策は一向に進みません。TOPランナーどころか、いまだにギャンブル依存症で入院できる病院もなく、入院が必要な大阪の当事者達は他県の病院に頼っている状況です。

その中でやっと若者向けの予防教育を始めると聞き、当会もコンペに参加しましたが、他のコンペ参加者は全員が広告代理店や映像業者などの依存症の専門外の業種の方々でした。結果は当会の採点は最下位で、コンペを勝ち取ったのは「株式会社 博報堂プロダクツ 関西支社」とのことでした。広告代理店が依存症のことを学び、連携し良い作品を作ってくれるのであれば全く問題はありません。
けれども今回の映像は、社会にはびこるギャンブル依存症者のひどい誤解や偏見を増長するものであり、医学的でも科学的でもない、ただの根性論に過ぎません。
そして依存症に苦しむ人々の心を「鬼」と表現するなど、当事者家族を二重三重に苦しめるものとなっています。
審査員となった先生方を見ても、依存症の専門家は入っていません。どうしてこのようなコンペを企画したのか、責任の所在を明らかにし、即刻動画を取り下げ、是正されることを望みます。ギャンブル依存症対策をやるためには、専門家や我々当事者家族の声を取り入れ、科学的エビデンスと人権に配慮して下さい。
コメント
息子がギャンブル依存症です。『ギャン太郎』を見て、辛く悲しい気持ちになりました。ギャンブル依存症の病気の事、理解されてないです。脳の病気であり、意思や根性では回復出来ない、本人も辛い病気なのです。削除を願います。
こんな動画を行政がつくり、しかも高校生向けに学校に周知しているなんて恐ろしい。これ以上観られないよう早く取り下げてほしいです。医療や専門家の監修が入ってないなんて、ありえない。
ギャンブル依存症は脳の機能不全、れっきとした病気というご理解もなく制作された動画は、一般人にも浸透し、ギャンブル依存症は怠け者、楽して金を儲ける人がなる病気だと認知してしまいがちです、大阪府のIR推進委員の方々はもっとギャンブル依存症で苦しんでいる人からの聞き取りや専門家の話を調査し、本当にこの日本に、大阪にカジノが必要なのかを精査するべきだと思います、まずは啓発動画の削除を要望します。
大阪府の若者向けオンラインカジノ対策の啓発動画「ギャン太郎」を拝見し
家族にギャンブル依存症という同じ病気を持つ者として、強い違和感と悲しさを感じました。
依存症は脳の病気であり、本人の性格や気持ちの問題ではありません。
しかしこの動画は、その事実が十分に伝わらず、本人や家族をさらに苦しめる誤解を生む内容だと感じます。
高校生や一般の方がこれをみると思うと、不安をおぼえます。
現実にもっと寄り添った表現、本当の鬼とは何なのかを見直し、停止を強く求めます。
このような軽いタッチの動画が今は大衆受けするようですが、ギャンブル依存症の問題はそんな軽いものではありません。この病気に罹ると本人の意志だけではやめられず、取り組みを間違えると家族や周りの大勢の人を巻き込んで皆の生活を一変させてしまいます。
本人は勿論、家族も一生緊張を保っていかなければならないのです。
ギャンブルを始める時期が若年化しているようなので、若者をまもるためにも依存症の事を丁寧に説明し、もっと掘り下げたものに作り直してもらいたいです。
公的機関が何の基礎知識もなく、発信するなんてあり得ないと思います。
「偏見を助長するつもりはなかった。」とありますが、専門医やギャンブル依存症の団体の知見を踏まえて作成していないのですよね。今後作る時は、ではなくすぐにでも公開を止めてください。
間に合わせ的に制作したとしか思えない、陳腐な動画で対策ができたとする行政の姿勢、固定観念に失望しました。
未来の日本を生きていく若者のギャンブル依存症を減らしていくためにも、今一度真摯な対応をお願いしたいです。
動画を見ましたが、絶句しました。知識のない人達がノリで作っていいものなのでしょうか。
ギャンブル依存症考える会はギャンブル依存症のスペシャリストなのに最低点だった事にも驚愕です。いったいどんな基準で審査したのでしょう。
大阪はカジノ誘致したのだから、他県よりもずっと先に進んだ依存症対策がなされているのかと思えば、入院出来る病院がないなんて、驚きより呆れてしまいました。
息子がギャンブル依存症です。
息子の心の中には"鬼"がいた、と言われたようでとても悲しくなりました。例えば他の重い病気を患っている人にむかって、「それは、心に鬼がいるからだ」と言うのでしょうか?
専門家や支援者の助言は受けていない、と堂々と言う企業を選んだ側にこそ、問題があると思います。
「大阪府の仕様書に基づいて作成しており、我々は専門家や支援者の助言は得ていない」とのことですが、大阪府はカジノ誘致をしておきながら依存症対策に対する姿勢が甘すぎると思います。そもそも専門家や支援者を介さず、このような依存症に対する偏見を助長する動画を製作・公表することが信じがたく、表向きだけやってます感を出したいというのが目的に思えて仕方ありません。動画の取り下げを求めます。
日本では、ギャンブル依存症という病気の認知が世界基準に全く達していないのが改めてわかました。このような認識に誤りのある動画は世の中に出さないでほしい。
その通りだと思いました。
この動画を見ると随分簡単なようですが、実際は、もっと深刻で切実で真剣な話です。
ギャンブル依存症は、WHOも認めている「病気」であり、少し調べればすぐに分かる事実。
今やAIでも即座に示せる基本的な情報すら確認せずに制作されたのではないかと疑ってしまうほど、今回の内容はお粗末な動画でした…
根拠のない表現や誤解を招く情報を発信することは、現在の広告業界において明確にアウトです。
それを天下の博報堂が関わり、大阪府が容認していること自体、自らの無知を公に晒しているように見えてしまいます。
本来、子どもたちを守る立場にある大人が行うべき行為とは到底思えません。
この動画はあまりにも問題が多く、速やかに取り下げるべき。
大阪府の「違法オンラインギャンブル等対策啓発動画」を観て愕然としました。
あまりにも無知で誤った内容!
ちょっと調べればわかることすら調べずに作っています。
しかもこれが選ばれたという。審査をされた方々も同様に何も調べず何も知らず、なのでしょう。
呆れてしまいました。
吉村知事に直談判しないとですね。
大阪府地域保健課依存症対策グループによる違法オンラインギャンブル等対策啓発動画
依存症対策には、当事者、当事者家族の生の意見を取り入れ、そこに医学的エビデンスで証明しなくてはいけないといけないと思います。苦しむ当事者を鬼扱いするのは違う。大阪府は正しい情報を提供すべきです
啓発どころか、誤解や偏見を生み出す動画だと思います。依存症の人を楽して生きたい自堕落な人間と言わんばかりの表現で、人権侵害だと感じました。また、心の鬼に打ち勝つなど、まるで心の弱い人が依存症になってしまうかのような言い草は、依存症者を家族に持つ者として大変悔しく悲しいことです。鬼は依存症者ではなく、依存症ビジネスで成り立っている産業側だと思います。
ギャンブル依存症は本人の意思の問題とかスティグマがひろまっていますが、WHOが認めた脳の病気なのです。
このギャンブル依存症啓発動画は全く病気のことを理解していない人が作ったものと思います。
この動画では、より孤立してしまいひどくなってしまいます。
きちんと知識のある方が監修したものを使っていただきたいです。
私は息子がギャンブル依存症になり、家族みんながとても苦しい思いをしています。そんな人を増やしたくないのです。
ですので、この動画は取り下げてください。
大阪大丈夫か?こんなひどいものを子供達に見せないでほしいです。
