Addiction Report (アディクションレポート)

夫がまさかのギャンブル再開! 「俺、病気なんだよ。助けてくれ」 最後の賭けで大当たりした私の引きの良さ ギャンマネ(38)

子育ても仕事も順調!と楽しんでいたある日、突然発覚した夫のギャンブルによる借金。「俺、病気なんだよ。助けてくれ」と言われ、最後の大博打で見せた私の引きの良さとは?

夫がまさかのギャンブル再開! 「俺、病気なんだよ。助けてくれ」 最後の賭けで大当たりした私の引きの良さ ギャンマネ(38)
ママ友とお出かけ。 幸せ家族を演じていましたが......

公開日:2025/12/30 05:14

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弁護士事務所に就職し、債務整理の仕事を毎日毎日こなし、水を得た魚の様に忙しく過ごすことになりました。「忙しくても、仕事は楽」ってことあるじゃないですか。人間関係とか面倒じゃなく、さらに忙しいけどやりがいがあって、自分の好奇心を満たしてくれる、まさにそのパターンで私はこの職場に腰を据えていきました。

おまけに忙しくなりすぎたので、先生が新しく社員を入れてくれ、これがまた弁護士を目指して勉強中のめちゃくちゃイケメン!かつ性格がめっちゃ良い若者だったものですから、私の毎日はますます楽しくなりました。

謎の引き落とし27万円

こうして年収も上がり、夫も決して給料が悪い会社ではなかったので、30代のこの時すでに我が家の世帯年収は2000万円を超えていました。住宅ローンや、自動車ローンもあるものの、無事にこのままいけば、闇カジノ+夫の隠れ競艇+私の先物取引といった失敗で、減ったと思ったらまた増やした借金も、これで順調に返せると思っていた矢先のことでした。

それは忘れもしません、2004年1月27日、夫の給与口座から、オリコ27万円という謎の引き落としがあったのです。当時、子供たちは2歳と3歳になっていました。いくら年収がソコソコあるとはいえ、我が家は超がつくほどの借金家計。余裕など一度もありません。こんな金額が引き落とされてしまったら、今月支払いが足りないわ、とちょっと焦りました。

夫に「なんか思い当たる?」と電話をすると「あっ、それね。帰ったら説明する」とのことだったんです。非常に冷静ななんでもないような声で「家では話しにくいから、ジョナサンに来て」と言うんですね。私の方も「了解!」とばかりに深く考えずに返事をしました。

というのもこの頃夫の会社の友達に中村君という人がいて、我が家にもちょくちょく遊びに来ていたのです。その人もギャンブル好きで、夫に度々「金を貸してくれ」と言ってくる(注:のちに嘘が判明)。夫がそのために手元不如意になり、「困った奴なんだよ」なんて言いながら私にお金を請求していたんですね。「中村が返してくれないから、ちょっと5万ちょうだい」なんて具合です。

この私、今とは違い何の知識もありませんから、微塵も疑わず「ちゃんと返してもらいなよ」なんて言いながら夫にお金を渡していたのです。

ですから「また中村君に貸したのかしら。返して貰わないと困るなぁ」なんて、本当にのんきに思っていたのです。

まさかのギャンブル再開、借金280万円!

夫が、待ち合わせしたうちの近所のジョナサンにやってくると、なんか神妙な顔つき。嫌な予感がすると案の定「ごめん。それ借金なんだ」と言うのです。

「え?自分の借金なの?」

「うん」

「何に使ったの?」

「......競艇」

「えっ!また博打やってたの?」

「うん」

「えええええええええええ」

とばかりに私は大パニックです。

だってですよ、闇カジノ時代の借金が全然減らないどころか、私自身も先物の「とうもろこし」で200万円も負けて借金を増やし、夫の前回の隠れ借金でブランド物も何も全部売り飛ばしてしまい、我が家には貯金も財産も本当にすっからかんになり、その上子供が2人の老人1人を抱えているんですよ。「借金払えないから、ちょっと水商売のWワークで稼いでくるか!」ってな訳にもいかないじゃないですか。

しかも、この出産と年子の子育てで目まぐるしい忙しさの中で、夫は非常にマメに子育てもしてくれたし、ちゃんと家にも帰ってきていました。博打をやっているなんてそんな影は微塵もなかったんです。

それなのに、あれからずっとギャンブルが止まってないと聞いて「うっそでしょう!」と思わず叫んでしまいました。まさに青天の霹靂。なんなら2階から目薬が命中するくらい信じられないことでした。

「いくらあるの?借金」

「280万円」

「あんたバカなの!」

私の怒りと驚きを想像して頂けるでしょうか。

「おいおい2000万円も世帯年収があるなら、そのくらいの借金どうってことないだろう」と思われる方もいらっしゃるかと思います。けれど、貯えがない生活というのはですね、何か緊急事態があったら全て借金でしのぐしかないので余裕がなく、借金の枠も常にカツカツなんですよ。

例えばですね、我々が結婚し子供を産んだってことはですよ、周りにも結婚・出産適齢期の友人知人がいるってことですから、お祝いを出すことも頻繁にある。そういう時は「はい、キャッシング」ってな感じで生きていくしかない。

おまけに博打だと借金の額も1回で数十万とか時には数百万円を一気に借りるのですが、生活費の不足って数万円なんですね。すっかり金銭感覚が狂っているので、数万円の借金なんかむしろ自分の貯金のような気がしちゃうんです。

「お祝い金3万包むとして、2次会だなんだってあるから5万借りておくか」なんて、余裕を持ってお借入れして、家計の余裕をなくしていくんです。

当時の我々は、借金が返せなくなるのが怖いんじゃなくて、借金ができなくなる、借金が回らなくなることが恐怖でした。

しかし、ここにきて更なる借金が280万円も出てきたとなると、これはさすがに万事休すです。家計が回る訳がないです。売り飛ばせるブランド物もありません。

家族も分断、両家の親を巻き込み大暴れ

ここから私は、両家の親を巻き込み大暴れをします。

私の頭の中では「こんな息子に育てた親が悪い」という構図ができあがります。起こっている出来事があまりに不可解すぎて、恐怖しかなかったんです。この恐怖を和らげようと、原因探しに走り、勝手な理屈でなんとか自分の心の落としどころを作ったのです。

夫の両親の前で、「この金は、そちらで払ってください」と老夫婦に食って掛かり、私は両親の前で夫をひっぱたいてしまいました。もちろん夫の両親はお金を工面してくれ、さらに自分たちの原因探しにも走り出します。「お父さんが競馬をやっていたから」などと言い出し、今ならわかりますが、こうしてギャンブル依存症の家庭は、家族も分断されていくのです。

二重人格なの?夫が得体のしれない人のように見え

この頃の私は、夫のことが不可解で得体のしれない人の様に思えました。優しくて頼りがいがあって、面倒見のいい私達家族に見せる顔と、博打をやり続け借金で家族をどん底に突き落とす裏の顔、どっちが本物の夫なのか不気味でした。

「この人は二重人格かもしれない」と思い、90年代に大流行した「24人のビリー・ミリガン」を再び読んでみたりしました。でも、本にあるような人格が入れ替わっている様子もないしなぁと、ますます不可解になるばかりでした。

とにかく理由が判らないというのは人に恐怖をもたらすものです。私は怖くてしかたがなかったのですが「怖い」などと口にしようものなら、恐怖を認めたりしたら、本当に怖さが自分の中に蔓延して、へなへなと崩れ落ちてしまいそうな気がしたんですね。今なら、それが全く逆の努力だったと分かるのですが、当時は必死に怒りをぶちまけながら立っていました。恐怖を支えるには「怒り」は格好の隠れ蓑なんですよね。

自分の本当の気持ちを隠しながら、精一杯強がり、夫を罵倒することで、自分を支え、その叱咤こそが夫を真人間にする唯一の方法だと思っていました。

そう、今でこそ百戦錬磨のこの私だって、無知な時はこんな間違いをしでかしているんです。ギャンブル依存症対策で一番やらなくてはならないことは「無知の解消」。つまり正しい知識を広めることなんですよね。

「俺、病気なんだよ。自分じゃ止められない。助けてくれ」

さて夫との関係も冷え切っていた時、例によって例のごとく怒りが込み上げてきた私は、我慢がならず一緒に通勤していた満員電車で

「バカは死ななきゃ治らないっていうけど、あんたも死ななきゃ博打止めらんないんじゃないの。あんたの博打はね、ビョーキだから」と罵倒します。

この時の私は、本気で病気と言ったわけではなく、あくまで比喩として言ったのですが、なんと夫は「俺、病気なんだよ。自分じゃ止められない。助けてくれ」と言ったんですね。

この時の私、無知ゆえにご多分に漏れず、夫の言葉でますます怒りに火がつき「病気?甘えんじゃないわよ!」ってな感じで夫に言い放つんですよね。

はい、初心者オブ初心者だった頃の私は、ビギナー対応の教科書みたいなことをやらかしております。皆様と同じでございます。

最後の賭けで大当たり 依存症専門医を探し当てた私の引きの良さ

でも、ここからです私が偉いのは!

とは言え、夫のあの様子は変だったと思い、「博打 夫 借金」とか「競艇 夫 やめない」とかそんなキーワードでですね、都内にあるギャンブル依存症を診てくれるクリニックを発見するのです。

いや、現代ならそんなクリニックは良くも悪くも、玉石混交ながら、いっくらでも情報が出てきます。

でも2004年当時なんか、自助グループのHPもただ単に12STEPが掲載されているだけの怪しげな宗教団体のようなものしかない。そもそも「ギャンブル依存症」なんて言葉すら、世間では「なんじゃそりゃ?」みたいな状況です。ギャンブル依存症を診てくれる医者なんて、それこそ砂漠で井戸を見つけるような確率だったんです。

HPだってまだまだメジャーじゃないあの時代に、「ちょっと調べてみよう」そう思いつき、しかもど真ん中の依存症専門医を引き当てた私は、やっぱり最高のいや最強のギャンブラーだと思いますね。やるときゃやる!この引きの強さは金なんかには代えられません。

ちなみにそのお医者様は「こまごめ緑陰診療所」の福田博文先生です。

あの時で私は、ギャンブラーとしての運を使い果たしたと思います。そして本当に、そこからギャンブルは一切やっていません。

さて、これでギャンマネ第2章は終了です。

このギャンブル三昧だった第2章の教訓を次回振り返り、来年からはいよいよギャンマネ解決編の第三章に突入します。

 それでは皆様良いお年を!

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