Addiction Report (アディクションレポート)

「ジョシダイセイ」ブランドで目指すは下剋上!  ギャンマネ(2)

居場所ができたと思ったのも束の間、半同棲していた彼氏に振られて実家に戻った私。進学に活路を見出し、女子大生ブランドを全開して、下剋上を目指していきます。

「ジョシダイセイ」ブランドで目指すは下剋上!  ギャンマネ(2)
貧乏でレートの安い麻雀にハマっていた高校生の頃

公開日:2024/03/11 01:00

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さて前回、わずか17歳にして「貧乏長屋暮らしから抜け出すには、男に養って貰えばいい」という方法に気づいてしまった私、その後どうなっていくかと言えば、もちろん男選びに失敗をしていきます。【プロデューサー・田中紀子】

半同棲した彼氏に振られて実家に逆戻り

まず、高校卒業後も「浪人」という身分の詐称を手に入れた私は、違法ポーカーゲーム屋勤務の彼氏と、その周囲の人達と麻雀三昧の日々を送り、プータロー状態でした。

1980年代前半って、麻雀が流行っていて大人達はもちろん、学生達もはまっている人が多かったんです。私も高校時代から麻雀はしょっちゅうやっていましたが、浪人時代は本当にどっぷり浸かっていましたね。なんせ金はないけど、ヒマは死ぬほどあった。そんな時、安いレートの麻雀は最高の娯楽でした。

半同棲時代、麻雀にハマっていた頃

この頃の私は、Discoだサーフィンだというキラキラを演じ続けた高校時代から、一気に70年代「神田川」の貧乏学生世界に逆戻りしていましたが、退廃的な金のない若者達の集まるアパート暮らしは、生まれてはじめて心地よい「居場所」を得た気がしていました。

しかしもちろんそんな暮らしは長くは続きません。

彼に新しい彼女ができたのです。だって今なら良く分かりますが、そんな人なんですから。彼は、泣いてすがる私に対し「リコちゃん、若いんだから俺みたいな男と一緒にいちゃだめだよ」と、実に正論を吐きました。今思えば、「おめ~も若かっただろうよ」とか、「何カッコつけてんだよ」と思いますが、当時はまだ18歳の私。生まれて初めてこっぴどくふられるという経験をし、コテンパンに傷つき、やっと得た居場所をなくし、目の前が真っ暗になりました。

けれどもどうにもならず、一人惨めに実家に戻ることになりました。

ちなみにあの時「一緒の人生じゃなきゃ死んだ方がマシ」なんて泣きつきましたが、今になってみると「生きてて良かった~!」と思いますね。失恋くらいでいちいち死ぬの生きるのと大騒ぎするヤバかった私。ちょうど流行っていた、松田聖子ちゃんの「ハートのイヤリング」に自分を重ね合わせ「春になる頃、あなたを忘れ~る」と泣きながら自己憐憫に浸っていました。

窮屈な実家暮らし、進学でリベンジ!

親との関係は最悪です。

戻ってからは実家に友人から電話がかかってきても、「いません。2度とかけないで下さい」と全てガチャ切り。

これは早いとこ逃げ出さないと、やばいことになります。

貧乏なくせに、いえ貧乏だからこそ学歴信仰の強い母親は、受験料と学費だけは出してくれました。

やることもなければ、行くところもない、男には手ひどくふられ心はズタボロ。戻った実家は貧乏かつ不自由。

こうなったらなんとしても「進学するしかない。そしてリベンジだ!(当時この言葉はまだ使われていませんでしたが)」と切り替えるしかありませんでした。

なぜならこの時代に伝説の素人参加バラエティ番組「オールナイトフジ」が開始され、女子大生がもてはやされはじめていたのです。「ジョシダイセイ」は、いよいよバブルに王手がかかったこの時代に、自分をいつわりの輝いた姿に見せるには最強の印籠だったのです。

問題は高校時代から全く勉強していないことです。この印籠を掴むには「数を打ちゃあたるだろう」と運試しに賭け、できるだけの学校を受験しました。その数なんと11校。そして1校だけ奇跡的に短大にひっかかることができたのです。

昔から国語だけは勉強しなくても抜群にできた私。この学校だけ国語が他教科の倍の200点だったからと思われます。

あの時代は、「女が4年生大学をでたら結婚できない」と言われ、大学よりも短大に人気があり、25歳までに嫁に行かなければ「クリスマスケーキ」と揶揄されました。

若い人は、この比喩が分からないかもしれませんが、25日になると「売れない」ということにひっかけていたんですね。

そのため我々のようなそれほど勉強が好きでもない女子は「なんとしても24歳までに、稼ぎの良い男を見つけて結婚せねば!」と、気合いが入っていました。

ゆえに進学も結婚が有利な方、就職も良い男が捕まえられるところという基準で選ぶのが普通でした(少なくとも私の周りでは)。ですから受かったのが短大でも、私にとっては願ったり叶ったりでした。

「ジョシダイセイ」ブランドで”下剋上”目指す

こうして高校時代に世間のDiscoとサーフィン、なんとなくクリスタルなキラキラ生活を演じることに疲れ果て、もともと貧乏人の娘である私が安心できる6畳アパート同棲生活に逃げ込んだのものの、再び「男」「結婚」による下克上めざして戦線復帰したわけです。

バブルというのは、正確には1986年から1990年までを言うらしいのですが、私が晴れて「ジョシダイセイ」になった1984年には、すでに時代の狂乱ぶりが始まっていました。

短大生になって、女子大生としてのブランドを全開していた

もちろんまたしてもバイト命に逆戻り、私は死ぬほど働き、稼ぎは全て洋服代に消えました。それも丸井の赤いカードでリボ払い。あの頃は、例え未成年でもローンを組むのに親の許可なんかいらないという悪魔のような時代でした。

私は、ものすごい勢いで当時流行となっていた、renomaやアライアといった海外ブランドや、日本のDCブランドと呼ばれた、ジュンコシマダやピンキー&ダイアンなどの洋服を買いあさり、借金返済にヒーヒーする毎日となりました。

そしてこの年、あの伝説のDisco「マハラジャ」が登場したのです。

よくバブルDiscoと言うと「ジュリアナ」と言われますが、あれは間違いです。ジュリアナはバブル崩壊後にできたDiscoで、最後のあだ花という感じ。時代を一変させたのは、なんといってもマハラジャです。

大理石の床、金ぴかの内装、そしてダサい奴は入れない服装チェック。Discoの従業員である「黒服」は時代の花形職業となり、遊んでいる、イケてるジョシダイセイは、黒服に知り合いがいるというのが自慢の種でした。

「黒服からタダ券が貰えるから、Discoはどこでも全部タダではいれるのぉ」と、インビテーションカードをトランプのように束で持ち、見せびらかせればもういっぱしです。デカイ顔ができました。

もう一つデカイ顔をするのには、ブランド女子大生になることです。

あの頃「遊んでて、ファッショナブルで、可愛くて、お嬢様が多い女子大」は、学生証を見せればタダでDiscoに入れる曜日というのが決まっていたのです。「白百合は月曜日」「聖心は火曜日」といった具合で「青短(青山学院大学の短大)」「赤短(青短に対して、赤坂にあったので山脇学園がこう呼ばれた)」「学短(学習院短期大学)」「館(やかた:東京女学館)」などなど、都心のお嬢様女子大生と呼ばれた学校の子達は、それだけでチヤホヤされたのです。

「美人揃いの『やかた』の女の子がわんさかと来る金曜日」となればそれだけで若い男の子が集まってきました。

自分を偽り「本当の自分」との間で引き裂かれ

私はというと、かつて田中康夫先生に「ブスしかいない」と言われた、都心にありながら校則がめちゃくちゃ厳しくて自殺者まででたという女子大だったため、この恩恵には預かれませんでしたが、縁あって当時Discoではありませんが有名カフェバーの黒服と仲良くなり、なんとかこのインビテーションカードマウントにしがみつくことができました。

今では想像もできない華やかな時代。

東京の若い女子として、いかにお嬢様に見せ、自分を高く売りつけるか、しかもあの時代は簡単に自分を偽ることができたのです。

例えローンでヒーヒーしていてもブランドモノで身を包み、夜な夜な六本木に出かけタダでDisco遊び、都心の(と言っても中野区)、一戸建て(正確には二軒長屋のしかも風呂なし借家)に住む、自営業(正しくは小さな雑貨屋)の娘で「女子大生です!」と言えば、誰でもエセ川島なお美様になれたのです。(ちなみに今の若者には信じられないでしょうが、故川島なお美様は当時の女子大生タレントの先駆けであり、それに続いたのが同じく青学出身である蓮舫センセイなのです。)

そしてヤンエグと呼ばれた、東京海上や三井物産の会社員や、良く分からない職業のやたら金を持っていたオジさん達が、エセなお美に瀬里奈で焼き肉を食べさせてくれたりしたのです。

こうして自分をお嬢様と偽りながら、良い男奪取戦線に邁進する私は、またしても自分が引き裂かれ、外で見せる自分と「本当の自分」の二面性に苦しんでいきました。

「本当の自分を知られちゃいけない」「本当の自分がバレたら、皆に嫌われる」必死に演じ続けていました。

自信のなさから、ギャン妻気質が目覚める

けれどもやはり今回も自分に自信のない私は、結局バイト先で知り合った「学歴もまぁまぁで、顔もそこそこで、将来性もありそうだけど今は貧乏」みたいな彼氏に落ち着くことになるのです。

どんなに周囲にあわせ調子に乗った振りをしていても、キラキラとした本物のブランド男子、つまり高学歴で、遊んでいて、高級車に乗り、人気者で顔が広く、実家も太い!なんて人は絶対に自分には掴めないと、心のどこかで分かっていました。

もしアタックしても「貧乏人のダサいブス」と言われ傷つくのが怖かったのです。

私には、デヴィ夫人のような美貌も才覚もそして根性も持ち合わせていませんでした。

こうして自信のなさから「今はそんなでもないけど、将来の有望性に賭ける」と自分の心を誤魔化すギャン妻気質が目覚め、男に養って貰いたい→でも本当の金持ちで条件の整ってくれる男は私なんか相手にしてくれない→だったら将来性のある男を青田買いしよう!という私の人生ゲームの図式ができあがり、40歳で自助グループに繋がるまで共依存魂が炸裂していくのです。

そして養って貰いたいと言いながら、私は男に貢ぎまくっていきました。(次号に続く)


【ギャン妻が教える お金の心配をしないですむ方法】

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  2. 「ジョシダイセイ」ブランドで目指すは下剋上!  ギャンマネ

コメント

2ヶ月前
ハイ

同じ年齢で同じような環境、時代です。

ギャンブルの街なので幼少期から

当たり前にそういう中で育ち、

借金で家を失う家族も今も尚あります。

一千万円くらいの借金はザラです。

昭和時代は、それでもギャンブルをしていて借金をしているのが

いくら隠していても物理的に分かりました。

今、怖いのはスマホバカラなど

目に見えない借金です。

これで、子供の肩代わりで、家を失った人が

近所に2件あります。

ギャンブル依存症とは気がつかず

根性論にしてしまい

支援もなく

情報弱者で、破産しても尚、借金を繰り返す。

近所に沢山います。

2ヶ月前
minyu

時代が!正に!

ぴったり同じ時代です。

なので、必然的に同じような

浅はかな人生をすごしました。

私は、夜霧のハウスマヌカンでしたから、

自身も含め周りも

何枚も持てたカード地獄で

500万以上〜は借金がありましたから 

これが買い物依存症とは当時、気が付きませんでしたね。

りこさんのコラム、

懐かしく、その当時を思い出し、

時代の流行に埋もれていたな~っとクスッと、幸福な笑みも出てきました。

私は、結局、借金は親にもバレないように

自分で、全額返しました!

2ヶ月前
よねっち

面白かったです。

りこさんに聞きたい内容です。

りこさんと車のこと

りこさんの考える女性の美しさとは

思春期の子育て りこさんの場合

りこさんとローマ法王

りこさんの理想の男性とは

…など。いっぱいあります。

次回も楽しみです!よろしくお願いします。

2ヶ月前
まり

りこさん、ギャンブル依存の相談

お仕事にされていますが

恋愛依存症のカウンセラーも

できそう!思いました。

2ヶ月前
ミカ

毎回楽しみにしています。

働くギャン妻として、リコさんの会社員時代の話を深掘りして聞きたいです。

2ヶ月前
すー

世代が近いので、昔の様子は「そうそう、そういう時代だった!」と、面白おかしく読みました。

二面性に苦しんでいた…ACの私も共感するところでした。

物語がとても面白く、この先が楽しみです!ぜひ、書籍化して欲しいです。

2ヶ月前
まぼろし仮面

氷河期世代なので、バブル世代の事は岡崎京子の「東京ガールズブラボー」「Pink」や初期の短編集の漫画のイメージだったり、山本英夫の「おカマ白書」にヤンエグという存在が出てきたので、その辺りのイメージしか湧かないのですが、王道の女子大生ではなく、DCブランドを着ていたカラス族とは棲み分けがあったのか気になります。

その時代の漫画や読み物を読み直すとリテラシーがかなり違い、「おカマ白書」に関しては後々アカーという団体が後書きにセクシュアルマイノリティの表現についてコメントを寄せています。

非常に自由そうで、経済的にも恵まれた時代で羨ましくも感じますが、今のようにリテラシーが厳しくなった時代と、今の記憶を持ったまま過去に戻るとしたら、どちらが良いと思いますか?

2ヶ月前
キャサリン

2連続でめちゃくちゃ面白い。

ちょっとびっくりするくらいの貧乏な生活(失礼)なのに、全く貧乏ってのを感じさせないのはなんでだろ?

良い男争奪戦に邁進する超絶ポジティブさと、自信のなさ、そこにヒリヒリするけれど、なんかまたやってくれそう、そんな期待をさせる魅力が溢れ出ている。

しかし、東京ってやっぱすごいなあ。

キラキラしてるなあ。

こうやってキラキラな世界を傍目で見てる分にはいいけど、その中で生きてくのは私に無理。

自分の生きられない世界を生きてくれている感が私の気持ちも高揚させる。

書籍化、ドラマ化を心から願う。

読みながら主演は誰がいいか、と勝手に妄想して楽しんでいる。

2ヶ月前
匿名

懐かし過ぎる時代。私の住む地方のマハではチークタイムにひざまづいて誘われるのが女子の誉でしたわ😆

私が共依存体質になって行くのを見ているようで共感しかありません。次回も楽しみにしています♪

2ヶ月前
匿名

私は田中紀子さんより6つ下ですが、まさに同じ時代を生きていた!指定校推薦だったのに赤短に落ちた私は家柄が普通過ぎたのか?(笑)でも自力で受験して当時にしたら一番レベルの高いところに受かったからそれでよかったのか(笑)そして結婚式は超ハデ婚!結婚式の二次会はあのマハラジャ(笑)司会はお笑い芸人!田中紀子さんのあの時代背景を語る語り口が共感の連続で笑えました!あの時代、田中紀子さんも私も皆、生きてる世界は違えど、それぞれが必死にキラキラしながら生きてたんだなあと振り返ることが出来ました。田中紀子さんの文章展開、本当に面白い!!続きが早く読みたい!楽しみにしています!!

2ヶ月前
匿名

「本当の自分を知られちゃいけない」

この一文すごく共感しました。私の中にもこの感覚がずっとある。本当の自分を出せない苦しいより、知られる事の恐れや恥があった。

続きが気になります。どうなってくんだろぅ。

2ヶ月前
匿名

今回も痛快な文章て一気に読んでしまいました!

赤裸々で正直な自己開示に尊敬しますし、私も思い当たるところが沢山あり、凄く共感しました。

特に、読んでいて感じたのは、

自分も"はりぼての自分"を守る事に必死だったな…、ということ。

私もキャリア思考の強い母から勧められて、

都内の私立高校→有名女子大→大手金融企業に就職と、世間一般から見れば【良いキャリア】を築いてきました。

でも、ハイレベルな周りに着いていけず、仕事にも勉強にも集中できない、中途半端な成績の自分にいつも自信がなくて、

自分はこれまで運とタイミングだけで良い学校、会社に所属出来てると思っていました。

その反動で、彼氏探しや、ハイキャリアな仲間が集まる社会人サークルにのめり込み、プライベートを充実させる事に一生懸命で、いつもお金や時間のやりくりに必死でした。何とか皆に着いていきたくて、沢山借金もしました。

今では、そうした過去からの自分の問題に気付く事ができ、自分の改革に取り組んでいる所です。

次回も楽しみにしています!

2ヶ月前
まり

面白いです!

国語の才能は生まれつき❓

りこさんお話も文章も

スゴく面白いです✨

2ヶ月前
ノン

面白すぎます!仕事中に読んでいて吹き出すのを堪えるのが大変でした。軽快に読める内容だけど、自分にも当てはまるギャン妻気質の特徴を的確に言語化してくれていて自分を見つめ直す事に役立っています。早く続きが読みたいです!

2ヶ月前
ラリー

いや〜面白い。ツイツイ引き込まれて読んでしまいました。自分のジョシダイセイ時代を思い出しながら、懐かしさと驚きの過去に驚愕しながら楽しめました。続きが楽しみです。

2ヶ月前
サダヲ

不適切にもほどがあるけど、引き込まれる。

続編、楽しみです!

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