ハワイで式を挙げるはずが......なんでいつもこ〜なるの?! 前途多難な結婚生活スタート! ギャンマネ(30)
先物取引であっという間に大金を溶かし、せっかく就職した会社も退職。ついに田中君と結婚しますが、ハワイで結婚式のはずが???

公開日:2025/07/02 09:49
商品先物取引の会社に就職した私。当時はまだネット口座なんてものも普及していない上に、特にあの会社はアナログでしたので、相場はオフコン(事務処理用の小型コンピューター)と手作業で管理しているような状態でした。
毎日毎日、オフコンに表示される相場を手作業でスプレッドシートに記入し、それを営業さんが回覧しチェックする。
今考えても、あんな暢気な仕事で正社員になれて給料をくれたんですから、良い時代ですよね。今の人はマルチタスクで色んなことを忙しくやらされるでしょうから、PC革命ってのは人類にとって本当に便利さをもたらしたのか?って思いますね。
余計なことしなけりゃ、不便だけど楽に働ける職場はもっと多かった気がします。
「私にも勝てるチャンスはある!」ってなぜ思った?
さてこの私、今でこそ仕事人間ですが、サラリーマン時代はいかに少ない仕事量で、良い給料を貰うかというかということに命をかけていました。いかにも仕事をしているようなふりをしながら、実際には相場の研究をしていたんですが、毎日毎日スプレッドシートを記入し、さらに各営業担当者の成績及び、各営業担当者のお客様の預かり金の増減をチェックしていると、はっきりと「誰にも相場なんかわかりゃしない」という結論に達しました。まさに「これは博打なんだ!」と思ったんですね。だって前回も書きましたが、資産を増やしているお客さんなんて見事なぐらい誰一人としていなかったんです。本当に一人もですよ。驚きますよね。
そこで私はこう考えました。
「だったら私にも勝てるチャンスはあるんじゃないの?」
本当に病気です私。
経済的な知識があって、MBAを取っているような人が相場は勝つ!っていうなら私はさっさと諦めますよ。
でも何故か私は自分のことを「勘が良くて、運も強い!」と思っていたんです。この辺が依存症者の「二つに引き裂かれている自分」ゆえんだと思います。自信がなくて、他人にどう思われているかビクビクして、なんとか勝ち組に見られなくちゃと怯えている自分もいながら、「私は、その辺の雑魚とは違う」「自分は何か特別な才能がある」と病んだプライドを持っていたんですよね。
これって本当に面白くって、「こんなやつらと一緒にするな」と自助グループに繋がってきた時には誰しもが思い、こんなやつらと思われた仲間たちも、かつては「こんなやつらと一緒にするな」と思っていたんですよね。
だから私はなぜか「勉強ができるような頭でっかちな奴らには持っていない何かを自分は持っている」という信念があったんですよね。多分勉強ができないコンプレックスから、そう思うしかなかったんでしょうね。間違ったプライドだけで、虚勢を張って生きていた。だって当時なんか自尊心も自己肯定感も爆下がりしていて、自分自身を誇りに思えるものが何もなかったですからね。せめて運と勘だけは持っていると信じたいじゃないですか。
あっという間にとうもろこしで200万円を溶かす
そして挑むわけです、先物取引に。
で、あっという間にとうもろこしで200万円を溶かしました。しかもですね、競艇やバカラに比べてたいして面白くもないんですよ。勘で上げ下げに張ってるんですけど、結果が出るまで多少の時間がある。いや先物は現物で株を買うような投資に比べたら、めっちゃくちゃ早いですよ。1週間であっという間にスカンピンになり、「追証」という追加資金を要求されます。あれは絶対に素人が手を出すものじゃありません。
でも競艇やバカラなんか、結果まで数秒じゃないですか。博打をやらない方はご存じないかもしれませんが、公営競技で一番スピードが速いのが競艇です。1マークと呼ばれる最初のカーブをいかに曲がるかで大体結果が出ます。
その頃は、今ほど自分のタイプを分析できていませんでしたが、私はとにかくスピードの速い、結果がすぐ出るものにバンバン賭けたい。いかに自分が高額勝負できるかで自分の心を鍛えていきたい。こんな風に考えていたんです。
だから1万円ずつ長時間やるパチンコなんて、もう全く好きじゃないです。ほとんどやったことがないので、ルールもよくわからないです。一般の人はギャンブラーを全部一緒に考えますが、実はいくつかのタイプがあるんですよね。そんな違いどうでもいいでしょうけど。
こうしてせっかく就いた昼職の会社にあっという間にうんざりしました。仕事は単調だし、この会社でこれ以上学ぶことも刺激もない。こうなったら見切るのは早く、私はわずか1年で退職しました。
和裁にどハマりして、なぜか田中君と結婚!
でも、この会社で唯一私の運命を大きく変えた出会いがあったんです。私と同じ課にいた、内藤さんという女性がすごく優しくて、穏やかで、大好きだったんですが、この人が着付けを習っていたんですね。で、話を聞いているうちに私も何の気なしに着付けを習うことにしたんです。そしてドはまりします。
どうしてこう依存気質なのでしょうか。着物の世界にすっかり魅了され、着付けで師範の免状までサクッと取ったあとは「半襟を自分で付け替えられるようになりたい」と思い、和裁を習いだすんです。そしてこの和裁にまたドはまりするんですよ。
チクチクチクチクとまっすぐ縫う和裁。現在編み物が大ブームになっていて、老若男女問わずハマっているそうですが「頭が空っぽになる」「何も考えないで打ち込める」というのがその理由とのこと。わかります!ストレス解消になるんですよね。さらにだんだん上手になって作品も残る。
私も、和裁が趣味程度に抑えられていたなら、もうギャンブルにハマることもなかったかと思いますね。でも私は、やるとなったらとことんやる。会社を退職して、東京都の職業訓練校の和裁科に入りみっちり習おうと決意します。
そして私は田中君にこんなことをお願いしました。
「職業訓練校に行くんで、扶養に入りたいから結婚してくれない?」
田中君はあっさりと「いいよ」と返事をしてくれ、私は訓練校入学直前の1998年3月14日に入籍したのです。
親族を連れてハワイで結婚式!のはずが......
3月14日のホワイトデーにしたのは大した意味もありませんが、忘れないからいいかなというのと、ギャンブラーらしく大安だったので土曜日でしたがその日にしました。どしゃぶりの雨の日だったのですが、中野区役所の通用口から婚姻届けを出しておしまい。結婚なんて本当にあっけないものですよね。
一応、田中君は初婚なので結婚式をするか?という話になったのですが、1度目の結婚の時に、帝国ホテルで1000万円以上の結婚式を派手にやって離婚した私は、この時「結婚式の皿の数と、のちの幸せは比例しない」という教訓を得ました。
そして金もないし、うちの親は仕事で忙しいし、田中君の親族を呼んでハワイで結婚式だけでもする?と地味婚を選択しました。
さて、結婚式の当日です。闇カジノ時代にとったパスポートをひっぱりだし、成田へ行きましょうかねとスーツケースを持った瞬間、田中君は「ねぇ、MARCHって何月?」と怯えたように言い出します。はっ?英語は田中君の方がずっとできるでしょうよと内心思いながら、「MARCHは3月だよ」と答えると、「パスポート切れてる......」と、小さな声で呟きました。
はああああああああ?なんだそりゃ。そこから我々は大慌てです。こんな時、一体どうしたらいいの誰が助けてくれるの?無知で若かった我々は、パスポートセンターから、外務省まで連絡しました。でも全員が「どうにもなりません」と同じことを言います。
私は、外務省の電話に出てくれた係官にすがりつきます。「私たちの結婚式なんです。私たちが行かなかったら、親族はどうすればいいのでしょうか?何しに行くのでしょうか」係官の冷静沈着な声が返ってきます。「お気持ちはお察しします。でもどうにもなりません」私たちは憔悴して電話を切ります。
そして恐る恐る田中君の実家に電話を入れたところ、怒られたのなんのって。特に初めての結婚式を楽しみにしてくれていた姪っ子ちゃんに、すっかり恨まれてしまったのにはガックリきました。
せめてものお詫びにと成田に行ったのですが、姪っ子ちゃんは口も聞いてくれませんでした。こうして親族はハワイへと謎の旅行へと出発し、主役である新郎新婦は空港で見送りをしたのです。
旅行代理店も倒産!前途多難な結婚生活のスタート!
しかもこの旅行、個人でとったのではなくツアーで申し込んだんですよ。あまりのことに怒り狂った私が電話をすると、さすがに旅行代理店もミスを認め、私と田中君の分を週明けに返金すると詫びを入れてくれたんです。やれやれ金が戻ってきたら、二人でハワイに行くかと考えていました。
がっ!しかしなんとこの旅行代理店、週明けに倒産し夜逃げ。月曜日の朝それを我々はテレビニュースで知り愕然とするのです。
こうして私と田中君の前途多難な結婚生活が始まったのです。
関連記事
連載「ギャン妻が教える お金の心配をしないですむ方法」
- ギャン妻が教える お金の心配をしないですむ方法(1)
- 「ジョシダイセイ」ブランドで目指すは下剋上! ギャンマネ(2)
- タクシー争奪戦、DCブランド買い漁り...「金持ち池」と「貧乏池」のどっちに落ちる? ギャンマネ(3)
- 「コミュニケーションお化け」の才能が開花! バブルの競争社会で学んだ「仲間づくり」 ギャンマネ(4)
- 「前例がない」なんて知ったこっちゃない! 上司と直談判して本社異動 ギャンマネ(5)
- 優秀で地味な同僚が揃う本社で寿退社を目指せ! ついに出会った最初の結婚相手 ギャンマネ(6)
- 小金持ちの実家付きエリート先輩社員とついに結婚! 帝国ホテルの結婚式で浮かんだ嫌な予感 ギャンマネ(7)
- 23区内のマイホームにマイカー、夢の新婚生活!のはずだったのに...ギャンマネ(8)
- 23区内のマイホームにマイカー、夢の新婚生活!のはずだったのに...ギャンマネ(8)
- 新婚早々、まさかのセックスレス? ギャンマネ(9)
- 東大医学部の秘書に転身! 本物の「セレブ」と出会い広がる視野 ギャンマネ(10)
- 東大奢られ時代に突入! 格差を痛感し、実入りのいいアルバイトで運命の出会い? ギャンマネ(11)
- 場外馬券売り場のアイドルに? ギャンブラーのおじさんとなぜか生まれた心の交流 ギャンマネ(12)
- バリ旅行で貢ぎ魂がスイッチオン! 「リゾ・ラバ」の島の魅力にハマって ギャンマネ(13)
- だまし合い、助け合いをもう一度! ハマったバリを再訪し、珍道中の始まり始まり ギャンマネ(14)
- 「弱けりゃ助け合って生き延びる!」 私がバリの人間関係に強烈に惹かれた理由 ギャンマネ(15)
- 貧富の差の陰でクスリも蔓延していたバリ 「帰りたくないけど、帰らなきゃ......」ギャンマネ(16)
- 金魚鉢の中の人生は嫌! 「先の見える不安」に襲われてついに家出を決行! ギャンマネ(17)
- 昔も今も「負けの連続」だけど...... 幸せかどうかを決めるのは何? ギャンマネ(18)
- ギャンマネ第2章スタート!離婚成立で自由になった私が次に目指したのは? ギャンマネ(19)
- 地獄の門を元気よくくぐる! 離婚で貧乏になった私が次に向かった先は? ギャンマネ(20)
- バイト仲間は今で言うトー横キッズ? 今の夫とも出会った闇カジノの人間模様 ギャンマネ(21)
- だまして、だまされて、逮捕された人も 闇カジノで出会った怪しげな常連客たち ギャンマネ(22)
- 闇カジノでも「姐御」としての才能爆発! ヤクザを追い返す役回りも引き受けて ギャンマネ(23)
- ギャンブルにどハマりし、貯金はすっからかん! ゆっくりゆっくり堕ちていった刺激的な日々 ギャンマネ(24)
- ブレーキはどこ行った? ギャンブルが最優先になり、破綻していった日常生活 ギャンマネ(25)
- 「いつかちゃんとする」「いつでも抜け出せる」 私たちがギャンブル依存から目を背けられていた理由 ギャンマネ(26)
- 他に趣味を持てば、ギャンブルを忘れられる? ギャンブラーカップルが試みた虚しい抵抗の巻 ギャンマネ(27)
- 仲間に裏切られ、ヤクザに監禁され、ついに闇カジノから撤退! これで博打から手を引ける? ギャンマネ(28)
- 闇カジノから足を洗ったものの、競艇や先物取引の会社に転職 わかっちゃいるのにやめられない! ギャンマネ(29)
コメント
とんでもない展開で脳が追いつきません笑
こんなドラマがあったら何度も拝見すると思いました。
次回も楽しみにしております!
いつもこんなに刺激的な人生ってあるんだなとびっくりです。
早くドラマ化しないかなと思うんですが、全部入れると長くなるし、でも削るところはないなぁと私妄想してます。
ご主人が小さな声で…ってところが
かわいいなと思いましたが、家族はたまったもんじゃないですよね。
きっとこの先も色々起こるんですよね。楽しみにしてます。
今までのギャンマネの中でダントツ。こんなに、波瀾万丈な結婚聞いた事ないですね。親族の謎の旅を想像して、吹き出してしまいました。
田中さんの過去にこんな出来事があったんですね。とても親近感が湧きました。
ご自身の依存症の経験をこんなに面白おかしく書き、暗い依存症のイメージを払拭してくれていて、毎回読むのがとても楽しみです。
面白がってはいけないのでしょうが、この結婚報告のハガキ、面白過ぎます。倒産前にお金が戻ってきて良かった〜、と身内のようにホッとした私がいました。