仲間に裏切られ、ヤクザに監禁され、ついに闇カジノから撤退! これで博打から手を引ける? ギャンマネ(28)
仲間の裏切りや、ヤクザにさらわれる危険な目にも遭い、うんざりするようになった私。ついに闇カジノから撤退する決意をしますが......

公開日:2025/06/04 07:59
連載名
ギャンマネ東大病院で秘書の仕事をしながら、闇カジノでバイトをはじめ3年も経つと、ギャンブル依存症を発症し借金生活が加速していったのに加え、人間不信になるようなトラブルが頻発するので毎日の生活にうんざりするようになりました。「何やってんだ私」みたいな感じですね。
一番大きな出来事は、従業員の中の裏切りを知ったことです。そもそも私というのは、今でもそうですがチームプレイが好きなタイプ。自分一人が良い思いや美味しい思いをするより、自分たちの仲間と一緒に何かを成し遂げたいと思っています。そしてうまくいってない人を引っ張り上げたい。これはハマる人にはいいですが、基本的にはお節介だし、まぁ暑苦しいですよね。
東大の先生に「りこって38度線に行って『あんたたち仲良くしなさい』って説教とかしそうなタイプだよね」と言われたことがありますが、今になって言いえて妙だなと思います。そしてその思考をよりによって闇カジノにも求めていました。
勝ち過ぎる外国人のお客さんに疑問
始まりは、いつも「この人たち勝っていくな」という疑問からでした。そもそも当時の闇カジノ界隈ではアジア系外国人を嫌う傾向にありました。上野には韓国の人がたくさんいて、顔見知りになりお金も使ってくれることから、知り合いの韓国のお店のママやマスターはOKでしたが、その他のアジア人はサービス狙いでろくにお金を使わず、店でタバコを貰い飲み食いしていったりするので、基本的には出禁でした。
ところがある日、副ディーラー長に「姐御、この人たちインドネシア人の華僑なんだけど、前の店でさ太い張りする客だったのよ。特別に入れてあげて」と言われました。副ディーラー長に言われたら、まぁこちらに断る理由はありません。もちろんOKすると、そこからしょっちゅう2~3人で来るようになりました。
騒ぐこともなく、行儀よく遊んでいくので最初は特に問題になりませんでしたが、そのうちその人たちが毎回大勝ちしていくようになったのです。博打で、しかも偶然の産物でしかないバカラで毎回勝つなんてことは絶対にあり得ないことです。もちろんあの頃の私はそんな最強伝説夢物語を目指していましたが、実際には殆ど負けてごくたまに勝つというのが現実です。
ディーラーたちも最初は「強いなぁ」という感じだったのですが、あまりに続くうちに田中君が「あの人たち、プレイヤーの最初のカードが8か9の強いカードの時だけ大きく賭けてる。カードが見えてるとしか思えない」と言い出したのです。
カードはシューターと呼ばれる、透明のプラスチックのケースに入っていて、そこから1枚ずつディーラーが抜き出します。皆さんも映画などでご覧になったことがおありではないでしょうか。そしてバカラは西洋オイチョカブなので、9に近い数が勝ちます。トランプというのはご存じの通り、10以上の枚数が多いのですが10~13の絵札は全部0としてカウントされます。だから最初に引き出すプレイヤーの1枚目が8とか9なら、あとは絵札が出る確率が高いので、プレイヤーが勝つ可能性が圧倒的に高くなります。
でも、みなさんトランプを裏から見て、中の数字が透けて見えるなんてあり得ます。絵空事だと思いますよね。ところが田中君がそう言いだしてからは、何人かのディーラーが同じことを言い出したんです。
私は、ばかばかしいと思いながら、東大で医者にも聞いてみました。「目薬をさして普段は見えないもの、例えばトランプの数字が裏から透けて見えるなんてものが開発されたりしてますか?」
もちろん「はぁ?頭大丈夫か。そんなもんある訳ないだろ。SF小説じゃないんだから」と一笑に付されました。でしょうね。私ももちろんそう思ってますよ。
でも、ディーラーたちは絶対に見えていると譲りません。そこで私は田中君のサブにつき、横に座ってゲームを観察してみることにしました。すると間違いなく「見えている!」としか思えない行為をしていたのです。プレイヤーに良いカードが来た時だけ大張りしてる!
カードに引っ掻き傷の細工 内部に裏切り者?
確信した後、私はすぐに裏に引っ込み、仲の良いディーラーや大学生ディーラーに「NEWカードをこそっといくつか持ってきて」と頼みました。ディーラーは次の担当者のふりをして、カラーボックスに積んであったカードをいくつか持ってきました。「このカードに絶対に仕掛けがある。徹底的に調べて」と言って、皆でカードをばらし、たがめすかし、ひっくり返し色々調べました。最初は全然わかりません。
でも、1時間以上経過したときに一人のディーラーが「わかった!」と叫んだのです。カードにほんの2~3ミリですが、数字が分かるようにひっかき傷がついていたのです。
「これ見えるってすごくない?」普通なら絶対に見えないくらいの小さな傷です。私は確かにクタビーチで、はるかかなた先にいる友人を見分けるインドネシア人を何人も見てきました。むしろ眼鏡をかけている人など、当時は見たことがなかったと言っても過言ではありません。「確かにインドネシア人は目がいいのかも」と思い当たりましたが、今はそんなことを感心している場合ではありません。
店内に置いてあるNEWカードに細工がされてる?一体どうやって。こうなると誰がやったのか。店の中にあのインドネシア人と通じている奴らがいるということです。店は裏切り者がいるということで大騒ぎになりました。こういうことになると一番カッカと怒りが湧いてくるのがこの私です。「仲間を裏切るなんて誰だ!」怒髪天をつきました。
NGの外国人を招き入れた副ディーラー長を詰める
まず一番怪しいのは副ディーラー長ですよね。そもそも本当はNGだった外国人を入店させろと言ってきた。こんな時、店長も部長も腰が引けています。波風たつのが嫌なんでしょうね。もしくはグルだったのかもしれませんが。だから私がすかさず副ディーラー長をとっつかまえて言いました。
「あの人たち、結城さん(仮名)のお客さんですよね。誰かがいかさまを組んでやってる。この店の人間が手引きしない限りはあり得ないことです。私は結城さんだと思ってます。」
駆け引きも何もなく単刀直入に切り込んでしまうのが私なんですよね。もちろん副ディーラー長は「おっ俺じゃないよ。疑うのもわかるけど」とまあ、もちろん水掛け論になるわけです。ここでもう店は分裂ですよね。誰もが疑心暗鬼になります。そして結局副ディーラー長は辞めていきました。でも、驚いたことにその時に、ごそっと結城さんにくっついてディーラーが辞めたんですよね。4~5人はいたと思います。
本当のところは結局わからずじまいです。でもインドネシア人を出禁にして、その関係者とみられる人間に辞めてもらった。この一緒に働く仲間にまさか裏切られるという経験が私に大きな喪失感を与えました。
ヤクザに監禁される事態にも
その他には、全くディーラーたちは関わっていなかったと思いますが(多分)、やっぱりめちゃくちゃ勝っていく客が現れたんです。それもバカラで。その人達「しぼり」と呼ばれる、カードをめくる行為が長いんですよね。しかもドローと呼ばれる、プレイヤー側、バンカー側どっちにも被害はなく、店側だけが8倍付になって大負けするという勝負で大勝ちしていく。だから常連客も「社長はドロー引き当てるからな」なんて喜んでいるんですよ。
この人たちが来ると、ドローが連発するのでおかしいと思い始めました。すると案の定、実はスーツの袖にカードを隠していて、すり替えていることがわかったんです。もちろん店側はその後、きっちり落とし前を付けたようです。
その他にも、負けが込んだヤクザのお客に我々がさらわれるなんてこともありました。我々がイカサマをやっているとイチャモンをつけて、「イカサマを認めろ」と監禁して詰められたんです。この時は、結局何時間か閉じ込められた後、ケツ持ちのヤクザが助けにきてくれました。
もうこのままでは命が危ないというところまで来ていました。刺激的だけど、何が起こっても警察も呼んでもらえないと思うと「何やってんだ私」という気持ちになりました。
身の危険を呈して店を守ってどうすんだ、簡単に裏切られるんだぞ。しかも金は一銭も残らないどころか借金だらけの3年間。ここにいたら人間不信に苦しみ続け、未来への展望もない。
ということで、1998年に私と田中君は相談して、昼職に就職してカタギになることを決めました。
これでやっと博打も止められる。本気で我々はそう思っていました。
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コメント
なんだか、どんどん壮絶な展開になってきますね。
今回は笑える要素はまったくなく、ただただ恐ろしい世界を想像してしまいました。
私の記憶違いでなければ、
数年前の新大阪の相談会のフェローで
ヤクザさんが助けに来てくれた話をして下さったような…
りこさんがしてくれたリアル話は
更にもっともっとこわ〜いと感じた記憶があります。
だから「もう2人でこの闇カジノの世界はやめようって決めた」と話しておられましたね。
その強い決心がつくほどに怖かったという事でした。
今日も りこさんはすごいです…
待ってました、、、!
タイトルにあった「ヤクザに監禁され、、、」の箇所はサラッと描かれているけど、とてつもなく怖すぎる。。。
環境をガラッと変えてみたらどうにかなるのでは!とそこに賭ける依存症者の思考、分かるなぁと思って読んでました。私も色々変えたなぁ〜。現状をコツコツ変える忍耐力がなかったから、ガラッと変えて心機一転したくなるんだよなぁ〜。。。
スリリング過ぎてドキドキします。
全てが凄すぎてびっくりです。
ヤクザに監禁とか、映画やドラマでしか見たことない世界でヽ( ̄д ̄;)
それでも大丈夫なりこさんは、やっぱり選ばれし者………☆
続きが早く見たいです!
自分がおかしいと思う事に、真っ直ぐ向き合い、徹底して調べたり意見を伝えるという田中さんの信念と正義感が昔から変わらないところなのだなと改めて読んで思いました。仲間想いの優しさや、どんな人にも怯まない強さ。本当に素敵だと思います。
何でもやっぱり経験って大事なんだな。それに場数を踏むということ。見えてくるものがある。リコさんのこのギリギリの経験、もうこの生き方では生きていけないっていう限界…にも関わらず…それでもギャンブルは止まらない…ギャンブル依存症がそんなに簡単に治るものではない…ということがわかる。リコさんの経験したことって、そんじょそこらの人じゃ経験出来ないことばかり。もっともっと発信してほしい。もっともっと聞きたい。そんな風に感じました。やっぱり書籍化ドラマ化映画化するしかない!楽しみにしています!
なんだか映画の世界のような話しに、でもドキドキしながら読みました。現実の賭け事の世界を知ってるからこそ今のりこさんがいるんだなぁーと納得しました。そうじゃなければこんなに度胸の座った女性はそうはいないと思います。
頼もしい!!