闇カジノから足を洗ったものの、競艇や先物取引の会社に転職 わかっちゃいるのにやめられない! ギャンマネ(29)
闇カジノから足を洗い、再出発を誓った私と田中君。でもなぜか転職先は競艇や先物取引の会社で、私たちはまた泥沼にハマっていくのです......

公開日:2025/06/16 22:47
連載名
ギャンマネ闇カジノは辞めたものの、ギャンブルをやめるつもりはなし
さて、3年間の闇カジノバイトからすっぱり足を洗うことにした我々。
送別会も盛大にやってもらい、餞別に夫はディーラ長から10ポイントダイヤ入りのギラギラロレックスまでもらいました。
辞めた時点で確か借金がまだ400万円位あり、これで昼職だけの給料でやっていけるのか?と不安にもなりましたが、いくら収入があっても闇カジノで働いていたんじゃ、出ていく方が多すぎる。昼職の給料の範囲で、時々競艇を楽しむくらいにしよう。そんな風に思っていました。
この時にはギャンブル依存症なんて思ってもみないですから、ギャンブルから完璧に足を洗おうなんて考えはさらさらありませんでした。でも、毎晩のように仕事帰りに行ってしまう闇カジノからは足を洗おうと思ったんですね。
現在なら「オンラインギャンブルはやりすぎちゃうから、パチンコだけにしよう」みたいな感じですかね。
東大秘書も辞めて、先物取引の会社へ
私は楽しかった東大秘書非常勤職員の方も退職しました。東大の先生方は本当に優しかったし、遊びにもたくさん連れていってもらったし、奢ってもくれましたけど、いかんせん給料が安すぎた。8年も働いていましたし、ここらでもうそろそろお暇しようということになりました。
そしてこの後、私と田中君は職探しをします。私はともかく、田中君は早稲田大学を6年かかって卒業。その後、闇カジノのバイト歴しかなく、まともに働いたことのない27歳です。私は、デパート、東大と仕事をしてきましたが、これといった特技もスキルもありませんでした。その上、私たちにはやりたいことが何もない。博打以外に好きなことも、興味があることも何にもないんです。
まず私、若い頃はとにかく「楽、稼げる、男が多い」こんな条件で、仕事やバイトを探していましたが、すっかりギャンブル依存症に汚染されてからは、男はどうでもいいから、刺激的な仕事がいいなと思い始めます。そしてなんと「先物取引」の会社に就職してしまうのです。かつて闇カジノ時代に先物取引をやり、大損した経験がありましたが、今こそ勉強してあの損を取り戻すべきではないか、そんなことを考えてしまいました。
「田中君、これからはコンピューターの時代だよ」
そして田中君です。こちらはそもそもスポーツ新聞「デイリースポーツ」の競艇記者になりたいという夢を持っていて、大学を無事卒業できた段階で闇カジノ時代に面接にも行っていたのです。ところが、神戸本社の面談に行く前に、尼崎競艇に行ってしまい、すっからかんになり、須磨の海岸で野宿する羽目に。そこで置き引きにあいそうになり新幹線のチケットしか入っていないバッグを犯人と引っ張りあって闘う、という目にあっていました。
まぁそんなことをやっているくらいですから、当然入社試験には落ちますよね。こうして競艇記者の夢をあきらめていました。
「他のスポーツ新聞を受けたら?」と言ったのですが、なぜか当時の田中君は「デイリーがいい。デイリー以外は興味がない」とデイリースポーツにこだわっていました。おそらく蛭子能収さんの「マクリ屋よっちゃん」の大ファンだったことが大きいのではと勝手に思っています。一度、競艇場のエレベーターの中で蛭子さんと偶然一緒になったら、どっちかと言えば人見知りだった夫がいきなり「蛭子さんじゃないですかぁ。いやぁ、蛭子さんの予想は当たんないっすねぇ」と、嬉しそうに話しかけたので驚きました。蛭子さんは「すいません、本当に」と大きな体を縮こまらせていました。
こうして今回二度目の就職探しになったわけですが、この私、なんというか他人の潜在能力はよくわかるんですよ。そして「田中君、これからはコンピューターの時代だよ。パソコンの学校でも行きなよ」と言って、当時も30万くらいしたとは思いますが、PCを買い与え、パソコン学校にも通わせたのです。
若い人には信じられないでしょうが、Windows95旋風が吹き荒れた、1990年代前半のPC普及率はまだ10%前後。みんな「パソコンってもんが出てきて便利らしい」「ホームページってなんなの」、こんな感じだったんですよ。2000年代に入ってやっと普及率は半分ですからね。
当時のPC笑い話は沢山ありますが、おじさんたちが「ダブルクリックして」と言われて、ダブルクイックだと思ってマウスを2回早く動かしたとか、昔はUSBメモリーなんかないからフロッピーディスクを入れて保存したんですが、そのフロッピーディスクを入れるところをドリンクホルダーだと思って使っていたとか、そんな時代だったんですよ。
なんせ今でも覚えてますが、当時はパソコンカフェなるものが秋葉原界隈にあって、そこにはPCが1台から数台置いてあって触れるようになっていたんです。おそるおそるみんな触ってみるんですけど、ホームページなんてマジでなんもない。がらっがらのほぼがらんどうだったんです。先駆的な人が、ちょっと自己紹介のようなHPを作っていましたが面白くもなんともない。現代のインターネット・ミームになっているいわゆる「阿部寛のホームページ(※)」と言えばなんとなくイメージがつかめるでしょうか。あんな感じでさらに内容のない、いたずら書きみたいなものがいくつかあるみたいな状態だったんです。
※有名俳優の公式ウェブサイトにもかかわらず、非常にシンプルなデザインのため、素早く表示されることがインターネット・ミームとなっている。
競艇のシステム会社に就職......嫌な予感
そんな時代に私は田中君を誘って、PCカフェなるものに行ってみたんです。私には1ミリも理解できない当時のネット世界のことを、田中君は「ふ~ん、なるほど。こんな感じか」みたいに、なんとなく理解している風だったのです。
だから私は、学歴だけはあるプータローギャンブラーが、この就職氷河期にどこかに就職できるとしたら、パソコンに詳しくなるしかない!しかもなんとなく田中君ならできそうという気がしていたのです。
そしてその思惑は見事に当たり何とか就職できました。それが競艇の下請け会社で業務システムの構築他、競艇のことなら何でもやるというシステム会社だったのです。
もう嫌な予感しかしませんよね。でも当時の私たちは「好きな博打を仕事にできた!なんて幸運なんだ」と本気で思っていたのです。
まさにキッタハッタの世界の先物取引
私の仕事は、営業事務で本当に楽そのものでした。大変そうだったのは営業マン。先物取引をやってくれそうな金持ちの名簿に片っ端から電話をかけまくり、客を見つけ、そのお客に売買させるんです。
あの会社は今だったら本当に大丈夫?と思いますけど、当時は色んな名簿を名簿屋から買っていたんです。例えば「フェラーリオーナー」「ベンツオーナー」「別荘オーナー」とか各地の「高額納税者名簿」とかです。世の中こんなになんでも名簿が出回っているんだと驚きました。
そして実際に、金、銀、白金、パラジウム、原油、大豆、とうもろこし、小豆、ゴムなんて商品がこれからも高くなりそうなら「買い」、値下がりしそうなら「売り」を出すのですが、とにかくスピードが速くて、読みが外れて買ったものがどんどん値下がりしたり、売ったものがどんどん値上がりすれば、速攻で追加保証金いわゆる「追証」という追加資金を入れなくてはならないのです。
私の仕事は、営業マンが金持ちに「ゴムの前場(午前の取引)はじまりました」ってな感じで電話をするんですね。そうすると持っているお客さんは読みが当たってホクホクの場合このまま持っているのか、ここで手じまいして利益を確定するのか、逆に外れたらここで損切りするかどうか指示が出るわけです。
そして営業マンから我々に「ゴム十枚(とおまい)売り」なんて注文が来るから、それをオペレーターに流す。そして場が引けたら伝票を持っていき、今日の値動きを手入力するという、キッタハッタの世界なんですけど、女子事務員はめっちゃアナログで牧歌的な仕事をしていました。
そして少なくとも私が見ている限りでは、お客さんたちは見事なぐらい資産をすり減らしていましたね。儲かっている人なんて見たことがなかったです。でも営業マンはいかにも分かった風なことを言い客を励まし投資を続けさせる。
思うに投資にハマる人って、ちょっと賢い感じがするからじゃないかと思うんですよね。すいません。本気でトレーダーで食べている人は別でしょうが、先物の仕組みもよくわからないけど、営業マンの口車に乗って儲かりそうだからやってみた、なんて人は当たらずとも遠からずだと思うんですよね。「日銀短観が発表されたので」なんて、もっともらしい議論を電話でよくしていて、時代の最先端を駆け抜けるヤングエグゼクティブな雰囲気だけは醸し出していましたが、そんな新聞で発表された全国民が知っているようなことで予測がつくなら営業マン自身が売買して稼ぐでしょうよと思いました。
儲かるわけないとわかっているのに、魔が差す不可解
そうなんです、私はそんな人間観察が大好きで、すべて理屈は分かっているんです。こりゃ儲かる訳ないなと入社してすぐに見抜きました。
でもなぜか手を出してしまうんです。人が負けてるのをみると「バカだなぁ勝てるわけないのに」と思います。医者だ、歯医者だ、社長だ、コンサルだ、弁護士だ、税理士だと、自分よりずっと賢い、立派な資格を持った人たちがみんな資産をすり減らしている。それなのになぜ「私なら勝てるかも」と魔が差すのでしょうか。これが私の不可解なところであり、依存症の正体なのです。
ここから結局また泥沼にはまります。
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