Addiction Report (アディクションレポート)

「パチンコにハマった過去を否定はしない」 青木さやかさんが語るギャンブルのこと

お笑いタレントの青木さやかさんは、ブレイクする前の20代の一時期、パチンコなどのギャンブルにハマったことがあります。そんな過去を今、どう振り返るのでしょうか?

「パチンコにハマった過去を否定はしない」 青木さやかさんが語るギャンブルのこと
パチンコにハマった過去を語る青木さやかさん(撮影・後藤勝)

公開日:2024/05/30 02:00

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お笑いタレントの青木さやかさん(51)は、26歳で上京して下積み生活を送っていた頃の4〜5年、パチンコにハマっていたことがある。

パチンコに行くために彼氏に嘘をつき、消費者金融を渡り歩いてお金を借りた。

ブレイクと同時にすっぱりやめ、今は依存症の啓発ドラマや啓発映画にも出演する。パチンコにのめり込んでいた過去を今、どう見つめるのだろう。

Addiction Reportは青木さんに取材した。

売れない下積み時代、パチンコ屋に逃げ込んだ

地元・名古屋にいる時に友人に誘われてやり始めて以来、パチンコは好きだった。

朝から晩まで一日中打つほどハマったのは、上京してからだ。

仕事はなく、バイトも続かず、パチンコ屋に行く時だけは、うまくいかない日常を忘れられた。

「パチンコは楽しくて、日常の面倒なことを忘れられました。特に興奮するのはリーチがかかった時でしょうか。当時、何でこんなにやめられないのか図書館で調べると、ずっと勝ち続けている時よりも当たるかもしれないと期待が高まった時の方が脳内麻薬が出て、興奮度合いが高いと知りました。なるほど、だからやめられないのかと納得し、そのままパチンコに向かいました」

当時住んでいたのは中野駅の近く。彼氏にはバイトだと嘘をついて、毎朝開店前にパチンコ屋の前に並んだ。

「名古屋にいる時は地元の友達もいたし、他のことにも時間を使っていました。でも、東京に出てきてから、ギャンブルをやる時間がめちゃくちゃ増えました。お金もまったくなかったし、お笑いの仕事もないし、バイトも続かないし、なんとなく同級生と会って喋る気にもなれない。海外旅行をするお金もないし、みんなの恋愛話を聞く余裕もなかったですし」

消費者金融が「わたしの銀行」

「さすがにこれはまずい」と思い始めたのは、お金がなくて、消費者金融でお金を借りるようになってからだ。

「初めて借りた時は、『これで何かを失っていくのかもしれない』と怖さやためらいがあったのですが、1回行くと慣れるものです。周りの芸人さんもお金がなくて、消費者金融でお金を借りてギャンブルする人も多かった。だらしないと言えばだらしないのですが、そういう20代を過ごしている友人も多くて、その時は楽しくもありましたね」

消費者金融を「わたしの銀行」と呼び、2社、3社と借りる先もどんどん増えていった。返済が滞ると、最初は優しいお姉さんの声で、それでも返さないとドスの効いた男性の怖い声で「どうなってますかねえ」と催促の電話がかかってきた。

「パチンコよりも、もしかしたら他のギャンブルの方が多く負けていたかもしれません。パチンコはどれだけ頑張っても、1日で20万ぐらいしか負けられませんが、他のギャンブルは頑張れば大きく負けられますからね。一瞬で」

服に染み込んだタバコの匂いなどから、とっくに彼氏にはパチンコ屋に行っていることはばれていた。それでも「疑うなんてひどい!」と時には泣きもして、嘘を突き通した。

そのうち恋人は去っていった。

金を失い、時間を失い、恋人も失った。「この生活をどうにかしなくては」と思うと、その不安から逃れるようにパチンコ屋へ向かった。

「お金がどうにもならず、名前を変えて東北に行こうかと思ったこともありましたね」

20代最後の年にブレイク 消費者金融に「感謝の別れ」

何もかも行き詰まっていた20代最後の年、「どこ見てんのよ!」というキレ芸でブレイクする。急にこれまでは考えられないほどのお金が入ってくるようになった。

「売れてお金が入って良かった。だけど、『ああ、これでギャンブルをやめられる』と思ったわけではなくて、『わ〜こんなに忙しいとギャンブルいけないな』と残念に思っていました。ギャンブルに行きたいのにずいぶんと忙しい時期が長いな、という気持ちを抱いていました。忙しくならなければ自分の意志ではギャンブルはやめられなかったように思います」

お金が入ると、「わたしの銀行」だった消費者金融にお金を返しにいった。もうここには借りない。そんな決意を込めて、返済したその場でカードにハサミを入れた。

「『ありがとうございました』と言って、ハサミを入れました。本当はまだカードを持っていたかった。寂しい思いがありました。そこまで私の生活を支えてくれたのは消費者金融でしたから、感謝はありましたよね」

パチンコにハマった過去をネガティブに受け止めない

パチンコにハマった過去の取材を受ける時、強調したいのは自分にとってそれはマイナスの過去だと思っているわけではないということだ。

「決して悲観的な過去ではなかった。『ギャンブル依存症で、パチンコをやめられなくて辛かった』というわけでもない。パチンコが好きだ、なかなか上手く付き合えなかった、今も好きだ、そして今も上手く付き合える気がしない、という感じです。パチンコがやめられなくてつらかったと言ってしまうと、パチンコ屋さんに申し訳ない気がします」

「単純に面白いものだからなかなかやめられないものは仕方ないと思っています。私がこうして過去を話すのは、啓発活動ではなくて、私は過去こうだった、確かにあのまま続けていたらまずかったかもしれないな、今も付き合い方が難しいな、でも今も好きだなあという感じです。うまく距離をとるのは難しいですね。またあっという間にハマりそうで」

ギャンブル依存症問題を考える会製作の依存症啓発のネットドラマ「ミセス・ロスト~インタベンショニスト・アヤメ」や、6月に公開する映画「アディクトを待ちながら」にも出演している。厚生労働省の依存症啓発イベントにも登壇したことがある。

「私は常々、自分の悩みや自分の過去は自分だけのものではなくて、誰かも同じ悩みを持っていると思っているので、できるだけ正直に話せることは話そうと思っているんです。それが何かの手助けになればなとは思っています」

パチンコにハマって苦しんだことは事実だ。でも「回復の先輩」のような顔をしたいわけではない。

「パチンコが好きで辞められなかったことをエッセイに書いたら、『依存症回復タレント』と取り上げていただいて(笑)。さまざまな仕事で依存症について色々勉強する中で、腑に落ちることも多いです。私の経験と見聞きした知識でどなたかのお役に立てるなら、それは嬉しいことです」

動物愛護のメンバーとの交流が「自助グループ」の役割

依存症について勉強し、回復プログラムについても納得できた。だが、依存症の回復プログラムに自身は参加したことがない。

「私は別のところでそのプログラムを実践している気がします。自分の困った『考え方の癖』に戻らないために依存症の自助グループなどがあると思いますが、私は動物愛護活動の中で自分を整え、立て直しているような気がします。人と関わることで、自分のここを直さないといけないんだなと気づくことができる」

青木さんが直したいと思っている心の癖は何なのだろうか?

「私はサボり癖があって、とにかくサボってしまう。だらしない。でもそうすると娘を育てていけなくなるし、人に迷惑をかけるので、きちんとしなければいけないなと思う。また、私にとっては怒りをコントロールすることが、すごく大きいのかもしれません」

「私には自分や自分の大切な人を傷つけられたと感じた時に、その人に怒りをぶつけてしまうことがあります。怒りの出し方によって人を傷つけたり自分を傷つけたりします。これは私にとっての課題の一つです」

「何かの心の癖から抜け出したい時、一人では無理だし、1日では無理です。少しずつですよね。一生人と関わっていかないと自分は変わらない。仲間もきっとそれぞれ問題を抱えていて、いつもそんな話をするわけではないのですが、おかげさまで一人じゃないと思えるのは私にとって大きいことです。ギャンブルにはない私の居場所の一つが動物愛護の仲間たちなのかもしれません」

「ギャンブルほど興奮することはなかなかない。だから抜け出すのは難しいと知りましたし、そのことはよく理解できます。ギャンブル以外に夢中になれるものが欲しいし、しみじみとした幸せを感じながら生活するのが楽しいと思えるようになりたい。そこを目指していきます」

コメント

2ヶ月前
匿名

ご自身の正直な気持ちが、あらわれたコメントだと思います。

過去の自分、今の自分今でもパチンコが好きと言える凄さ

自身の生き方の癖を理解して

行動されてるところが回復し続けてるところかな

2ヶ月前
みち

パチンコが好きだった、でも上手に付き合えなくてハマって苦しかった、と読んでいて、依存対象は違えど、私も同じだと改めて思います。読み終えた時に、寄り添ってもらえているような、温かい気持ちになりました。私も「しみじみとした幸せを感じながら生活するのが楽しいと思えるようになりたい」です。

2ヶ月前
匿名

青木さやかさん、

正直に語ってくださるお話が大好きです。紆余曲折の人生の中で、悪戦苦闘から抜けて、ありのまま自分らしく生きておられる姿に魅力を感じています。

発信なくしては伝わらない。

アディクションレポートの存在に感謝してこれからも応援しております。

2ヶ月前
よねっち

他者や周りを批判せず、自分を必要以上の卑下はしない。

淡々と事実と自分だけを見つめる言葉のひとつずつが品があって素敵でした。

青木さやかさんの声や話し方も心地がよくて好きです。 お笑いもお芝居も活動も全てファンです。

2ヶ月前
めぐみ

青木さやかさんは子どもの頃からテレビでいつも見ていたし、お母様との関係をオープンにした時もすごい!と思っていました。

夫がギャンブル依存症と分かってからは、青木さんがパチンコにのめり込んだ経験を公表なさった上で依存症啓発にも力を入れていると知り、ますますファンになりました。

自分の経験が誰かの役に立つと知っていること、そしてそれを喜んで引き受けられること。今の青木さやかさんが、さらりとこなしていることの大変さといったら!

依存症家族になって、無償で助けてくれる仲間と繋がり続けられて、ようやく私にも誰かのためを思って動く気持ちが芽生えました。

昔の私のままだったら「誰かの役に立ったところで私に何の利もないじゃないか!」と怒って、絶対に取り組まなかっただろうと思います。

「アディクトを待ちながら」で青木さやかさんの演技をまた拝見できるのが楽しみです。

2ヶ月前
匿名

「何かの心の癖から抜け出したい時、1人では無理だし、1日では無理、少しずつ…」青木さんのこの考え方にすごく共感しました。啓発イベントの際も、依存症を悲観せず、冗談を交えて自身の体験を話されていて楽しかったです。動物愛護やタレント活動も応援してます。

2ヶ月前
QOO

青木さやかさんの自分や自分の大切な人が傷つけられた時に、怒りをコントロールする事が難しいというのがとても共感です。私も悲しさや傷ついたりすると全て怒りとして表に出る。自分では怒りの感情しか見えず、他者に傷ついたんだねって言ってもらって初めて気付くことが多かったです。

2ヶ月前
匿名

青木さやかさんの自分の過去を正直に語られる姿勢に感銘をうけました。

青木さんが自然体で発信して下さる言葉によって、多くの人がギャンブル依存症をきちんと理解してくれる事を切に願います。

2ヶ月前
NAOSA

私も45年ほど前にギャンブル依存症(パチンコとパチスロ)になり、昨年までやめられなかった人間ですので、青木さんの話が実によく理解できます。今でも大好きだけど、なんとか回復し続けています。きちんと病気について理解して回復し続けることが大切だと感じています。

2ヶ月前
さくら

私は青木さんと年齢だけでなく、経験された肺癌という病気の症状もほとんど一緒なので、勝手ながらとても親しみを持たせていただいています。息子がギャンブル依存症ですが、息子も含め、生きがいや自分の居場所が他にもあるってとてもいいことだと思いました。自分の過去を否定しないということも大切ですね。素敵な記事で心があたたかくなりました。

2ヶ月前
tomo

とても共感しました。

私も若い頃に元夫の影響でパチンコ、パチスロ、競馬にハマりました。

妊娠してもやめられず病院に入院する前日までパチンコをやっていました。

何ともいえない興奮があり、嫌な事があるとギャンブルをしていました。

救いは借金まではしなかったことですかね。

買い物依存にもなりました。

外見を着飾ることでしか、自分を表現できなかったのだと思います。

息子がギャンブル依存症になり私のせいではと自分を何度も責めました。

青木さんの動物愛護の活動が自助グループの役割をしているというところも頷きながら読ませて頂きました。

いつでもすぐに引き戻されるのではとの恐怖感がありますが、仲間の中にいると何か温かい衣に包まれているような感覚です。

青木さんの記事を読ませて頂き、久しぶりに過去の自分を思い出し、コメントさせて頂きました。

良い記事をありがとうございます。

2ヶ月前
tomo

とても共感しました。

私も若い頃に元夫の影響でパチンコ、パチスロ、競馬にハマりました。

妊娠してもやめられず病院に入院する前日までパチンコをやっていました。

何ともいえない興奮があり、嫌な事があるとギャンブルをしていました。

救いは借金まではしなかったことですかね。

買い物依存にもなりました。

外見を着飾ることでしか、自分を表現できなかったのだと思います。

息子がギャンブル依存症になり私のせいではと自分を何度も責めました。

青木さんの動物愛護の活動が自助グループの役割をしているというところも頷きながら読ませて頂きました。

いつでもすぐに引き戻されるのではとの恐怖感がありますが、仲間の中にいると何か温かい衣に包まれているような感覚です。

青木さんの記事を読ませて頂き、久しぶりに過去の自分を思い出し、コメントさせて頂きました。

良い記事をありがとうございます。

2ヶ月前
まりえ

自助グループに通う者です。青木さんのこの記事を読んで、心の癖を直す(誠に勝手ながら)仲間のように青木さんをとても身近に感じました。

下記のようなコメントもまさに12ステップの真髄そのもの!と心が震えました。

「私は常々、自分の悩みや自分の過去は自分だけのものではなくて、誰かも同じ悩みを持っていると思っているので、できるだけ正直に話せることは話そうと思っているんです。それが何かの手助けになればなとは思っています」

また青木さんの記事を読みたいです!

2ヶ月前
はな

「どこ見てんのよ!」の青木さやかさんをテレビで拝見して楽しませて頂いていたひとりです。

めちゃくちゃ面白くて、あの頃の青木さやかさんも大好きでした!

「どこ見てんのよ!」以前にパチンコにはまっていたご経験があったとは、ギャンブル依存症の啓発的な紙面や番組を拝見するまで全く存じ上げなかったです。

青木さんご本人は啓発ではなく経験を話しているのだと仰っていましたが、どの発信でも丁寧に正直に、そして慎ましやかに語られていて、本当に素敵だなと感じています。

今の青木さやかさんも大好きだし、素晴らしいです!

応援してます!

2ヶ月前
匿名

刺激的なギャンブルから距離を取って、「しみじみとした幸せ」を感じる人生って、いいですね。

「楽しくてやめられない」って困ったものです。人によっては追い詰められてしまうんだろうし…。

地味でも、幸せを感じながら生きていこうと思いました。

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