Addiction Report (アディクションレポート)

ブレーキはどこ行った? ギャンブルが最優先になり、破綻していった日常生活 ギャンマネ(25)

ギャンブルに歯止めがかからず、優先順位が狂っていった私たち。どんどん生活は破綻し、堕ちていくことに妙な快感を覚えていました。

ブレーキはどこ行った? ギャンブルが最優先になり、破綻していった日常生活 ギャンマネ(25)
闇カジノの社員旅行で京都に来た時の記念写真

公開日:2025/04/07 06:57

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ギャンマネ

さていよいよ私たち夫婦の青春時代?(と言うには随分とうが立っていますが)

ですが、よく依存症の特徴として「優先順位が狂っていく」という項目がありますが、まさにその教科書的な依存症者が我々です。今日はそんなお話をしたいと思います。

ブレーキがきかないギャンブル依存症

まず闇カジノでバイトしていたので、ギャンブル好きが多いことも確かでしたが、

その中でも、私、後に夫となる田中君、それと同居していた韓国人のうちの一人ホン2号、この3人と、店長と部長がもう群を抜いてギャンブルにハマっていきました。

ギャンブル好きとギャンブル依存症というのは明確に違うんですよね。

ただのギャンブル好きは、どこかでブレーキが効くんです。

例えば持って行った金がなくなればそれでやめるとか、金がない時は誘われても断るとか。

ところが我々というのは、金がなくなっても、周囲から借りまくって続ける。誘われれば金がなくても借金して行くんです。

そしてそれが狂った行動だとはみじんも思っていない。むしろそれこそが「勝負師の根性だ!」とか「こっちは遊びでやってるんじゃない」みたいに、我々のほうが度胸がって、張りっぷりも見事でカッコイイ!ぐらいに思っていましたね。

そして「いつか必ずギャンブルで大勝ちして、今まで使った金を取り戻す」と燃えていました。

ルーレットとバカラにハマっていった私たち

田中君などは、確率計算が得意の理系頭なので、当たったら見返りの大きいルーレットにハマっていました。

マニアックな話なんですが、日本の闇カジノのルーレットというのは、数字が書いてある回転盤の部分がほぼ止まっているんです。そこに球をはじき入れる感じ。球が回りだしたらディーラーが「さぁどうぞ!」と掛け声をかけて、お客が張る。そしてボールが落ちそうになったら「まもなく手止まりです!」と、もうすぐ球が落ちるからそろそろ賭けるの止めてね!の合図をします。そして球が落ちる直前に「そこまで!」の声をかけ、客と共に球の行方を見守るんですね。

そして、賭けた数字にずばり当たれば36倍。隣の数字と半分ずつ賭けてれば、18倍。4つの数字に賭けていれば8倍。という具合になっています。

だからルーレットのディーラーVS客の勝負で何が決めてだと思います?実は台の水平が保たれているかどうか?なんですよ。常に台がまっすぐ水平になっていないと、どこかに寄ってしまう。この水平がきっちり取れないディーラーはポンコツで、店が始まる前は水平器を使って、丁寧にまっすぐにしているんです。

なので客の方はルーレットが一部に寄りだした瞬間に、その偏ったあたりにどっさ~と賭けるんです。どんなに水平を取っていても、客がその周辺をどすどす歩いているわけですし、周囲で地下鉄工事をやっているなんてこともありますし、微妙なそれこそ髪の毛1本の差でも、球は低い方に落ちるんです。

この微妙に偏りができる瞬間をひたすら待ってじっと辛抱しながら賭ける、みたいなことをやっていましたが、まぁなかなかそんなに美味しい時は来ないです。

対するこの私は、ディーラーとの勝負なんか全く関係のない、ただの運任せでしかないバカラにハマっていました。これは日本の「おいちょかぶ」と似ていて、出た数字の合計の末尾が9に近い方が勝ちというものです。

私なんかは田中君と違って、自分の予想が当たることに快感があるタイプではなく、ただ単に「大金をかけるスリルが味わいたい」というタイプなので、1回にどこまで賭けられるか?なんて自分の根性を試すようなことをやっていました。

足を引っ張り合うようになった「泥沼組」

さて、田中君やバイト仲間とどこかの闇カジノに行くと、必ず誰かが勝って誰かが負けるか、全員が負けて帰ることになりました。誰かが勝っていると、その「ツキゴマ回してよ」なんて言って、借りることもしばしば。そうやって我々泥沼組は足をひっぱりあうようになっていきました。

勝負に熱くなると田中君は、私がバカラテーブルで積んでいるチップを、ひょいっと持っていってしまうこともありました。こっちも熱くなって勝負している最中ですから、慌てて「ちょっと、持って行かないでよ!」「このくすぶりが!ツキが落ちるからこっちのチップ触んないでよ」なんて店内で喧嘩をしたこともあります。

一度など私が「このくすぶり!こっちに来るな」と錦糸町のカジノで怒鳴ると、田中君はぷいとどこかに行ってしまいました。私とホンちゃんは居なくなったんだかよくわからない田中君のことなど構わずゲームを続けていたのですが、閉店になってやっぱり田中君がいないことに気づきました。マンションの鍵が特殊だったので1本しかなく、普段はポストでやり取りしていたのですが、その日はみんなで一緒に帰るつもりだったので私が持っていました。

「どこ行ったんだろう?帰ったのかな」我々は???だらけでマンションに帰ったのですが、部屋にも田中君はいません。さすがに心配になり、マンションの周りを探してみると、なんとマンションの金網で囲われたごみ置き場で、ゴミが入ったゴミ袋を布団のようにかけて寝ていました。

我々が「何やってんのよ!」と声をかけると「えっ、あっ、帰ってきたの?だってくすぶりは来るなっていうから先に帰ってきた」と言うんですね。「なんでゴミに埋もれてるわけ?」と聞くと、「寒かったから」とのこと。田中君はこの後も度々ゴミに埋もれて寝ていることがありました。あの頃の田中君は平気で野宿をする人でした。

徹夜で東大へ出勤 生活がボロボロに

この私はといえば、昼間東大で秘書をやり、夕方から闇カジノで夜中の1時とか2時まで働き、そのまま博打を打っていると朝になってしまい、徹夜で出勤することになります。ボロボロのまま、毎日同じ服で出勤して、お風呂にも入っていないので、朝医局の湯沸かし器で髪をシャンプーしたりしだしました。

なんせ当時の闇カジノはタバコ臭いったらないんですよ。もちろんそんな姿を見た教授や助教授たちはびっくり仰天しますよね。「どうしたの?」「いや、ちょっと徹夜で遊んじゃって。えへへ」なんて感じで、タオルで頭を覆いながら「はい、〇〇助教授室です」なんて電話に出たりしていました。

その上とにかく眠いので、昼休みになると医局にすっ飛んでいって、ソファーにひっくり返って寝る。そこは他の秘書や留学生の先生方がお弁当を食べたりする場所なんですが、私はお構いなしに気絶したように寝てました。

一度など、モスリムの留学生の先生が、お祈りの時間だったようで、私がソファーにひっくり返って寝ている横で、床に頭をつけてお祈りされてたんです。私は途中で目が覚めましたが、あまりに恥ずかしく「神様この愚かな女に罰を与えてください」とお祈りされているんじゃないかと怯えながら、ひたすら先生が出ていくまで寝たふりをしていました。

博打の金を優先してしまって連続駐禁

しかもこの私、合羽橋に来てから駐車場を借りていなかったので、しょっちゅう駐車禁止の切符を切られていたんです。当時は、シールなんて生易しいものではなく、警察に行かなくては外れない、黄色い輪っか状のものをバックミラーにつけられたんですね。それを付けて走るのってマジでカッコ悪いんですよ。付けられたら皆速攻で警察署に行って外してもらっていました。

それなのにこの私、博打のお金を優先してしまう、すっかりお金の優先順位が狂ったギャンブル依存症者なので、なんと最高7個もこの輪っかを付けたまま走っていたことがあります。信じられます?そんな人。あり得ないじゃないですか。

もちろん警察に行ったらおまわりさんにめっちゃ怒られましたが、その時の私は「だって博打で勝てなかったんだもん」と心の中で思っていました。半年くらいして、やっと駐車場を借りましたが、東大と闇カジノで給料100万円くらい貰うようになっていたのに、駐車違反の金すら払えない、いやそういう必需品の金は逆に後回しになっていたのです。

身なりにもかまわないように

さらにとにかく洋服とかどうでもよくなるので、田中君は私のつんつるてんの洋服を平気で着ていくし、(前回の写真の赤いジャケットがまさにそうです)私は短パンにTシャツで11月まで東大に通ったりしていました。

そのうち田中君は夜中に帰るタクシー代節約のために、原付をどこかからもらってきて、それで通勤するようになったのですが、車と接触事故にあい足をざっくり切ってしまったんですね。なぜならビーサンで原付に乗っていたからなのですけれど、それが12月の真冬だった。看護婦さんに「なんで靴と靴下履いてなかったんですか!?」とこっちが怒られたのですが、とにかく博打のお金以外はすべてに対して絶対に金を使いたくない、ドケチになっていました。

そして原付の修理も、保険屋さんに「さっさと出してください」と何回も催促されましたが、治療費、修理代とかかった金は払ってくれるけど、余分な金はくれないとわかったので、その後治療にも行かず、修理にも出さないという体たらく。そう、博打以外の社会生活もどんどん面倒で、ずぼらになっていくんですよね。第一、とりあえず払っておく金もなかったんです。

堕ちていく生活に妙な快感

こうして毎晩何万円、時には何十万円も博打に賭け、消費者金融はもちろんのこと仲間同士でも借金がグルグル回わり、常に金欠状態で社会生活が送れなくなっていったのですが、なぜか私は「これは今だけで、いつかちゃんとする」と思っていました。堕ちていく心地よさというか、貧乏は嫌だし、辛いし、惨めなんだけど、とことんダメになっていく生活というのも、味わいだすとやめられなくなる妙な快感が伴うのです。

 

 

 

 

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コメント

13時間前
kazuba-ba

とことんダメになっていく生活を味わい出すとやめられない妙な快感!!

えーぇ、こんな快感ある?

なんだか、楽しそうなんですけど。

優先順位が狂っちゃうのは、私、共依存者も同じだなぁ〜

次回が楽しみです!

13時間前
匿名

優先順序が狂う…ということがこれほどまでに具体的に詳細に悲惨な状況なのだということがよ〜く分かりました。やはり経験に勝るものはありませんね。それにしても!リコさんとご主人!よくこんなとんでもないところから、全国のギャンブル依存症者とその家族を救う救世主としての使命を果たされるまでになりましたね。もうただただ尊敬です!この果てしない壮大な使命を果たせるのは、やはりリコさんとご主人しかいないのだなと改めて思いました。リコさんに会えて心から感謝しています。一体どれだけ多くの人がそう思っていることでしょう。リコさん生まれてきてくれて本当にありがとう!

13時間前
匿名

ギャンブル依存症は病気だと聞いていましたが、ここまで優先順位が狂い生活が荒んでいくのかと、読んでいて心が痛くなりました。堕ちていくことに快感を覚えるなんて悲しすぎます。

この先どうなっていくのでしょうか? 今の眩しく光り輝いているりこさんはどこからきたのでしょう?

次のギャンマネが待ち遠しいです。

13時間前
シバ

ギャンブル以外には一切お金を使わないという点で、まさにギャンブル依存症の息子と同じ感覚だと感じました。そして、ギャンブルで損をしたお金は、ギャンブルで取り返そうと考えてしまうのですね。

ギャンブル依存症が、恐ろしい病気であることを、改めて実感しました。

13時間前
めぐみ

ジェットコースター以上のハラハラ感、ひりつくどころではない賭け方にビビりっぱなしの回でした笑

でも思い返してみると、アクションゲームに一番のめり込んでいた頃の私も「勝てないなんておかしいだろ!」とキレ散らかしておきながらゲームがやめられなかったなあと。

しかも、いざ勝てるとまた同じ達成感を味わいたくなっちゃって結局終われないパターン。

度胸のレベルは全然規模が違いますが、他人事ではないなあとしみじみ感じました。

13時間前
まり

今回も名文ですね✒️✨

引き込まれるように読みました!

13時間前
匿名

毎回楽しく読ませていただいてます。今回は、ギャンブル依存症になるとほんとにギャンブルのことしか考えられなくなるんだなと、あらためて感じました。

これから、どうやって回復の道へ繋がるのか、楽しみです!

13時間前
こうじ

モスリムの留学生の先生が、お祈りの時間だったようで、私がソファーにひっくり返って寝ている横で、床に頭をつけてお祈りされてたんです。

という場面がものすごく印象に残りました。

お祈りが終わるまでの時間はとても長く感じられたのではないだろうか、とか。ソファーで女性が寝ていても、先生は黙々と祈りを捧げているのだとか。

罰を与えてくださいと、怯えながら、寝たふりをしていたということも、いろんな気持ちが交錯していたんだろうとか。そもそも誰かの側で、寝たふりを続けることは、なにが起きるのかわからないのにじっとしている怖さがあると思いました。

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