Addiction Report (アディクションレポート)

読者さんのお悩み相談・第2弾。 息子さんが焼身自殺を図ったFさんの話です。「失われた私」を探して(47)

今回の「『失われた私』を探して」は、読者の相談に答える回です。不登校の息子が焼身自殺を図ったシングルマザー。なんとか命は取り留めましたが、「私はどうすれば良かったのか」という問いに、うさぎさんはどんな言葉を返すのでしょうか?

読者さんのお悩み相談・第2弾。  息子さんが焼身自殺を図ったFさんの話です。「失われた私」を探して(47)
撮影・黒羽政士

公開日:2026/04/05 01:00

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「失われた私」を探して

息子さんの気持ちがわからなくて苦しいよね。

でも、わからなくて当然なんです。

さて、今回も、お悩み相談です。

お悩みは、いただいた順に取り上げていきます。

選り好みはしません。

なので、どうお答えしたらいいのかわからない、とても重い内容のご相談もあります。

私ごときがこの方の苦しみにどんな言葉を言えるのだろうか、と、心を掻き乱されます。

自分の無力さが、とても歯がゆい。

でも、そんな重いご相談にも対応しなくてはなりませんよね。

それがお悩みを募集した私の責任です。

というわけで、Fさんからのお悩みをご紹介します。

若かりし頃、中村うさぎさんの本を面白くて読んでました。

私、昨年11月に息子に焼身自殺され、

その子は中学時代不登校でした。

この子を強い子に育てなければ、と思い

育ててきたつもりでしたが......

今彼は火傷の皮膚移植後精神鑑定のため

入院中です。

私はどうすれば良かったのかと

悩んでいる途中です。

シングルマザーのため、働き続ける必要もあり、泣いて明け暮れています。

まず、Fさん、私の著書を読んでくださってありがとうございます。

そして、あなたの今の苦しみを想像するとたまらなくなって、もうどうしていいのかわからないんですが、とにかくあなたに会って抱き締めたくなりました。

抱き締める以外に、何もできないんですけどね。

ただ、これだけは言わせてください。

あなたは、悪くない。

息子さんの自殺未遂の理由はわかりませんが、あなたはきっと自分を責めているんでしょう。

どうして気づいてあげられなかったのか。

何か自分にできることはなかったのか。

もしかして自分がこの子を追い詰めてしまったのか。

こんな自分は母親失格ではないのか。

でも、当たり前のことを言わせていただきますが、母親は万能ではありません。

親子といえども、心も身体も別々の他者なんですから、子供の心の中で何が起きてるかなんて、わからなくて当然です。

子供のことをすべてわかってる母親など、この世に存在しませんよ。

むしろ、わかってるつもりの母親の方が危ないくらいです。

これは親子に限りません。

夫婦だって、兄弟だって、大親友だって、互いに「わかってるつもり」になることが一番危険。

何故なら、人は「わかったつもり」になってる時ほど、相手に対して侵略的になるからです。

「あなたのこと、全部わかってるよ」というのは、とても優しく頼もしい言葉ではありますが、そんなことを軽々しく言える人は概して傲慢なモラハラ人間です。

自分の物差しがどれだけ不正確でちっぽけであるかも知らないまま、その物差しで勝手に他者を測り、そのうえ自分の物差しを相手に押しつけようとする。

相手が自分とは違う物差しで生きていることなど思いも寄らず、また、違う物差しを持っている人間を批判したり攻撃したりする始末です。

たとえ親子でも、子供が思春期まで成長したら、相手にも独自の物差しがあることを受け容れなければなりません。

子供は、あなたに見えない世界を生きている。

だから、あなたが彼を理解できなくても当然だし、そのことで自分を責める必要はないのです。

ただ、理解したいと思う気持ちは大切なので、これからあなたは息子さんとたくさん対話を重ねなくてはなりません。

理解できなくても腹を立てたり悲しんだりせず、少しでも理解しようと寄り添う心……それが「愛」というものなのではないか、と、私は考えます。

無理に強くなる必要なんかないんだよ。

むしろ、「弱さ」を愛してあげて。

人間は、寂しい生き物です。

互いに理解を求め、共感し合ってひとつに溶け合いたいのに、絶対的な距離がある。

その距離は、永遠に埋まりません。

たとえ親子でも、愛し合った恋人同士でも。

ね、ほんとに寂しいよ。

でも、その距離を尊重するのも「愛」だと思うんです。

とはいえ、私はうまく人を愛せない人間なので、その距離を上手に取れず、ついつい踏み込み過ぎたり、逆に遠ざけてしまったりするんですけどね。

でも、諦めません。

いつかちゃんと他者を愛せる人間になれるよう、死ぬまで試行錯誤を繰り返します。

私はね、愛する人に、こう言える人間になりたいんだ。

あなたのことはわからないけど、それでも手を伸ばしてくれれば、その手を握り返せる距離にはいるからね、と。

あなたは思うままに自由に生きていいけど、もし絶望しそうになったら、私にその手を伸ばしてね、と。

あなたが手を伸ばせば、きっときっと、握り返すから。

だから安心して、自分の道を進んでください、と。

そんな愛し方のできる人間に、私はなりたい。

人の親になったって、私たちはまだまだ未熟です。

愛し方を練習しなくちゃいけないんです。

失敗することだってあるでしょう。

当たり前です。

でも、その失敗から学んで、だんだんうまく愛せるようになればいい。

今回の件も、「ああ、どうしよう。失敗した」とクヨクヨするだけじゃなくて(クヨクヨする気持ちはわかりますけどね)、これからどう向き合っていくか、どんなふうに愛を伝え、どんな愛し方をしていけばいいのか、できれば息子さんと2人で真剣に考えていくきっかけになればいいなと思います。

ああ、今回も、まったく役に立たない回答でごめんなさい。

あなたの痛みや苦しみに対して、何の薬にもならない言葉ですよね。

だけど、「育て方を間違えた」とか「愛し方を間違えた」とか、思って欲しくないのよ。

一生懸命、育てて来たんでしょ?

それでいいのよ、ひとまずは。

間違えてたのかもしれないけど、間違えても仕方ないのよ。

息子さんは、まだ生きてる。

それって、これからやり直せるってことじゃない?

強い子に育てたいと思ったことが、もしかしたらアダになったのかもしれない。

それなら、息子さんの「弱さ」を愛してあげてよ。

相手の長所を愛することなら、誰にでもできる。

むしろ、あなたの目に短所と映る部分こそ愛してあげて。

そして、あなた自身の「弱さ」も、息子さんの前で吐露すればいい。

人間は誰でも弱いんだよ、弱くていいんだよ、と、教えてあげて。

お母さんも弱いから、支え合って生きていこうね、と、言ってあげて。

手を伸ばせば、そこに、手を握ってくれる人がいる……人間はね、それだけで救われるんだ。

本当に、ちゃんと救われるんだよ。

Fさんと息子さんが、これから「愛すること」「愛されること」を、一緒に練習し合える関係になりますように。

心から、願っています。

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