闇カジノでも「姐御」としての才能爆発! ヤクザを追い返す役回りも引き受けて ギャンマネ(23)
怪しい闇カジノのシステムも徐々に理解していった私。「姐御」として頼りない店長の代わりに店を取り仕切るようになり、足を洗えなくなっていきました。

公開日:2025/03/04 08:01
さて、30歳バツイチとなった私が始めた闇カジノバイトですが、最初は「これは一体どういうところなのだろう?ヤバイところなのか?」と半信半疑でした。
オンカジ関係に手を出す若者の心理と全く同じですね。
ヤバそうだけど、あまりにオープン、しかも時給がよくて、稼げそう。
こういう時に「グレーだから引き返そう」という人と、「ヤバそうだから覗いてみたい」という好奇心旺盛なタイプで運命って大きく分かれるんだと思います。
そして引き返そうと思う人には引き返す人たちが、クビを突っ込んでみたいと思う人には、無鉄砲タイプの人が集まってしまうので、「これが当たり前」みたいな感覚に陥っていくのだと思います。
もちろん私は、危険を好む、好奇心旺盛タイプ。しかも若い頃はそれがカッコイイとすら思っていたほどでした。
だから「ダメ。ゼッタイ。」教育なんて意味ないですよね。
「ダメ。ゼッタイ。」と言われてやらないタイプはそもそも危険に近寄らない。そして世の中圧倒的にこのタイプの方が多いので、我々のような側の人間の気持ちが分からないのだと思います。
「ダメ。ゼッタイ。」と言われてもやるタイプは、そもそも自分を大事に思ってもいないし、場合によっては大事に育てられてもいない。楽に早く死ねるならそうしたいと、潜在的に思っています。そんな風に思っていたら日常生活にはストレスが多すぎて、しかもその対処法が分からないじゃないですか。
こういうタイプは強い刺激で、ごまかし続けて生き延びていくしかないんですよね。
私も「真面目ないい子ちゃん」なんて心底馬鹿にしてましたが、本当はそういう生き方をどうやったらできるのか、わからなかったからですね。多動が若い頃はもっと激しかったという問題もありました。
自分にできないことをやっている人たちのことは、妬みから馬鹿にするしかない、そんなわかりやすいヤンキーなまま大人になっていました。
徐々に理解していった店のシステム
バイトを始めたころは、店のシステムもよくわかりませんでした。
私はフロントなので、お金を渡されたらその分のチップを渡す。
大体、少ない人で5万円。30万円くらいの人が多くて、100万円買う人がいれば、「太い客」と思うくらいの店レベルでした。
やっているのは、レートの高い大バカラ、安いレートのミニバカラ、ブラックジャック、ルーレットの4種類。
たいていのお客さんは、好みが決まっていて、ブラックジャックをやる人はそればかりをやります。
そして予定金額を使い終わったり、大勝ちして「今日はもうこれで止めよう」となると、お客さんは帰るわけですが、その時に勝った人は、チップの枚数分だけ、ドル紙幣の玩具みたいなへんてこりんな引換券と交換するんですね。
私が最初謎だったのは、あれだけ金を使っているのに、みんな玩具のお金を持って帰らされて何も言わないのはなんでだ?ということでした。
しばらくして分かったのは、あれはパチンコの三店方式と同じで、景品となる券を換金所に持っていって換金していたんですね。
今になって思うと、ヤバい商売ってスタッフも疑心暗鬼で、入ったばっかりの人に色んなことを説明したりしないんですよね。店も私が入店した数か月前にオープンしたばかりでしたので、当時はまだ人間関係もギスギスしていました。
そしてなぜかあの店は、博打場なのに最初店側が負けてばかりいて、それもピリピリする要因でした。
そのうち、常連客の素性もなんとなくわかってきて、店も勝てるようになり、スタッフも気心知れてきて仲良くなっていきました。
そしてスタッフ同士親しくなってくると、換金の仕組みを教えてくれて、店の近所のどこの雑居ビルに換金所があって、そこにいる人は星野さんという人で、(多分、偽名)なんてことが徐々にわかってきて、「あぁ、ここってやっぱりヤバいところなのね」と、はっきりしましたが、その時にはすでにこの世界が面白すぎるのと、酒も飲まず、接待もしないでいい時給2000円貰える夜職という特殊条件が貴重すぎて辞められなくなっていました。
すぐにマネージャーに昇進 「姐御」として店を仕切るように
パンチパーマやリーゼントで、ダブルの紫のスーツと見るからにザ・ヤクザといった感じの店長と部長も最初は威張っていて、店の空気をピリつかせていましたが、あまりの仕事のできなさに、すぐに従業員達から舐められるようになりました。
なんせ店長も部長もぐうたらで「営業行ってくる」と言って、韓国のママ連中のお店に飲みに行ってしまうのです。時には営業どころか他店の闇カジノで博打を打っていることさえあります。店に全然居ないから、何かがあっても全く頼りになりません。
そして代わりにもちろんどんどんとしっかりしてくる私。すぐに私はマネージャーという役職になり、バイト仲間からは「姐御」と呼ばれるようになりました。
そして逆に店長と部長をガンガン仕切るようになったのは言うまでもありません。
なんせですね、バイトの子が急に休んだりとか、どう見ても「ありゃあヤクザだよね」みたいな人が来てしまった時に、水際でストップしなきゃならないなんて時にですよ、私しか居ないなんてことが度々起こるようになったんです。
でも、前号でも書いたように、ヤクザは色々はぐらかして、すすすっと店に入ってきちゃう。それでも静かに遊んでくれればいいのですが、中には負けが込んで難癖付けてくるのもいる。そうなった時に、そういう客をなだめて帰したりと、そんなリスキーなことを私がやるようになったんです。
不思議なんですけど、日経新聞に掲載されるような立派な社長連中も、ヤクザが騒ぐようなところ普通嫌じゃないですか。今なら絶対にコンプライアンスで大変なことになります。一緒にいただけで大問題ですよね。
それなのに何故か来る。しかもそういう騒動を面白がっているとしか思えない素振りすらあったんです。
ヤクザの客を追い返す役回りも
「なんだぁ、この店。全然勝てねえじゃないか」声を荒らげだすヤクザ。
やばいなぁと思ったら、ゲームの区切りがついて次のカードをディーラーがシャッフルしている間に「社長、(うちの店では男性客は全員社長、女性客は全員ママと呼んでいました)熱いですねぇ」なんて和ませるような言葉をかける。そして「ツイてない日ありますよね」なんて言いながら「今日は帰りましょうか」まで持っていく。
ヤクザは言葉尻をとらえて、こっちのせいにして瞬間湯沸かし器のように爆発しますからね、言葉は穏やかでも緊張します。
この辺の駆け引きが、今のギャンブル依存症者への介入とそっくりだなと思うことがあります。思えばあの頃から鍛えられていたんですね。
もうこんなのバイトの仕事じゃないだろ!という領域でしたが、「私が店を守らなくっちゃ」なんて共依存魂を発揮して頑張ってしまっていました。
そして騒動が収まったころにノコノコ店長や部長が赤い顔して帰ってくる。私が烈火のごとく「何やってたんですか!」と怒る。こんなことが頻繁になっていきました。
「ケツモチ」に解決を依頼 年末には”ごあいさつ”
一度、私では収まらなくて店長、部長も捕まらず、社長に電話をしたことがありました。すると「ケツモチにかけろ」と言われたんです。当時の私は「ケツモチ」の意味も分かりませんでしたが、ディーラー長が「フロントに若頭って書いてある電話番号があるからそこにかけて」と、教えてくれたので、そこにかけると「おう」とだけ返ってきました。ものすごい低い声で迫力満点ですが、こんな失礼な電話に対応したことがありません。「今、組の方が店で怒鳴っているんですけど」と恐る恐る言ってみると「わかった」ガチャン。おいおい二言だけかよ、なんじゃこれ?と思っていると、わずか10分くらいで、やせたおじさんがやってきました。
パンチでもリーゼントでもなく普通の、どちらかというとみすぼらしい、色黒で頭の薄くなったおじさん。だけど目つきだけはとてつもなく鋭くて、私を一瞥すると、怒鳴っているヤクザの肩に手をかけ、「ちょっとこちらへ」なんて言って外に出しちゃう。そしてどうなったかわからないですけど、店に平穏が戻ってくるんです。
この「ケツモチ」の「若頭」と呼ばれる人も、のちに地元のヤクザなんだとわかりましたが、私たちが会話を交わすことは殆どありませんでした。
ただ年末になった時に、でっかい鏡餅とか昆布とか門松なんかを店に飾り付けに来てくれたんですね。
例によって無言で店に来たかと思うと、フロントの前に次々飾りだしました。何が始まったのか?と思いましたが、とても手慣れていて、しかも豪華な飾り付けだったので、「わぁ、カシラ有難うございます!」と喜んでニコニコ挨拶をしたら、フンという感じで睨まれました。「全く愛想のないおっさんだぜ」と心の中で思っていましたが、怖いのでもちろん口には出せません。
この時も例によって例のごとく店長も部長もどこかに遊びに行っていたので、こっそり私が携帯に電話をして「今、若頭がでかい鏡餅持ってきましたよ」と伝えたら、部長が慌てて戻ってきて、ぶっとい封筒を渡していました。あれが多分、世に聞く「みかじめ料」だったんでしょうね。ヤクザって案外季節行事が好きなんだなと初めて知りました。
刺激的な毎日から足を洗えないように
入って3か月ぐらいで闇カジノは、やっぱ完全にヤバイところだと気づきましたが、毎日が映画の世界のようで、刺激的で面白くて仕方がありませんでした。危険と隣り合わせというのは依存性があるのだと今振り返って思います。
そして、この頃になってやっと「闇カジノは公序良俗に反する」と誰かが言い出したらしく「アルバイトニュース」や「FromA」と言った、当時のバイト雑誌に一切求人が掲載できなくなったんです。この辺りも、今の「オンカジCM流してたよね問題」とそっくりの経過ですね。そこから闇カジノの従業員経験者は貴重な存在となっていって、時給がバンっ!と上がったのです。こうしてますます足が洗えなくなりました。
関連記事
連載「ギャン妻が教える お金の心配をしないですむ方法」
- ギャン妻が教える お金の心配をしないですむ方法(1)
- 「ジョシダイセイ」ブランドで目指すは下剋上! ギャンマネ(2)
- タクシー争奪戦、DCブランド買い漁り...「金持ち池」と「貧乏池」のどっちに落ちる? ギャンマネ(3)
- 「コミュニケーションお化け」の才能が開花! バブルの競争社会で学んだ「仲間づくり」 ギャンマネ(4)
- 「前例がない」なんて知ったこっちゃない! 上司と直談判して本社異動 ギャンマネ(5)
- 優秀で地味な同僚が揃う本社で寿退社を目指せ! ついに出会った最初の結婚相手 ギャンマネ(6)
- 小金持ちの実家付きエリート先輩社員とついに結婚! 帝国ホテルの結婚式で浮かんだ嫌な予感 ギャンマネ(7)
- 23区内のマイホームにマイカー、夢の新婚生活!のはずだったのに...ギャンマネ(8)
- 新婚早々、まさかのセックスレス? ギャンマネ(9)
- 東大医学部の秘書に転身! 本物の「セレブ」と出会い広がる視野 ギャンマネ(10)
- 東大奢られ時代に突入! 格差を痛感し、実入りのいいアルバイトで運命の出会い? ギャンマネ(11)
- 場外馬券売り場のアイドルに? ギャンブラーのおじさんとなぜか生まれた心の交流 ギャンマネ(12)
- バリ旅行で貢ぎ魂がスイッチオン! 「リゾ・ラバ」の島の魅力にハマって ギャンマネ(13)
- だまし合い、助け合いをもう一度! ハマったバリを再訪し、珍道中の始まり始まり ギャンマネ(14)
- 「弱けりゃ助け合って生き延びる!」 私がバリの人間関係に強烈に惹かれた理由 ギャンマネ(15)
- 貧富の差の陰でクスリも蔓延していたバリ 「帰りたくないけど、帰らなきゃ......」ギャンマネ(16)
- 金魚鉢の中の人生は嫌! 「先の見える不安」に襲われてついに家出を決行! ギャンマネ(17)
- 昔も今も「負けの連続」だけど...... 幸せかどうかを決めるのは何? ギャンマネ(18)
- ギャンマネ第2章スタート!離婚成立で自由になった私が次に目指したのは? ギャンマネ(19)
- 地獄の門を元気よくくぐる! 離婚で貧乏になった私が次に向かった先は? ギャンマネ(20)
- バイト仲間は今で言うトー横キッズ? 今の夫とも出会った闇カジノの人間模様 ギャンマネ(21)
- だまして、だまされて、逮捕された人も 闇カジノで出会った怪しげな常連客たち ギャンマネ(22)
コメント
いや〰︎痛快な映画を見ているようで、ワクワクしますね。面白くなって来たぞ〰︎ってか、毎回ワクワクしてるけど。👍
能力の高さが災いするということが
あるのですね。やっぱり仲村トオルさんに
出演していただきドラマ化しましょう!
危険な方に行ってしまう心理が良く分かりました。
私は危険を避ける無難な人生だったので、なるほど!となりました。
姐御と呼ばれるリコさんは、どこでもリーダーシップを発揮して、仕切れる凄い人なんだと改めて思います。
続きが楽しみです😊
こんな世界があるなんて初めて知りました。ニュースで聞いていても、実際の詳しいことまではわからないので勉強になりました。
危険だとわかっていてもやめられない、それがとても怖いことだと思います。闇カジノに手を出さないためには、もっとギャンブル依存症の啓発が大事だと感じました。
これでもか!とまたまたとんでもない所に導かれ、とんでもない人たちと出会い、持ち前の能力(?)で切り抜けていく、まさに姉御。
ジェットコースターのようなりこさんの人生にはもう驚きませんが、様々な経験全てに意味があるのだと今のご活躍を見ていて思います。
毎回思いますが次回が楽しみです😊
どんな状況でもいつの間にかリーダー的存在になってしまうりこさん。
りこさんがよく、「自分の生かしどころを見つけろ」と仰っていますが、持っている能力をどのベクトルに向けるのかでこんなにも人生は変わるんだということを体現して見せていただいてます。
このまま突き進んで、今頃闇カジノの大ボスになっていたかもしれないりこさんが、今は依存症で苦しんでいる人を助けることに奔走している…。
この事実に込み上げるものがありました。
リコさんの人生って、半端ないですね。好奇心旺盛なタイプと引き返そうと思う人がいるというのは確かに。私はチョコッと好奇心満たして危ないところは近づかないタイプ。だからいつもリコさんから追体験させてもらってる。ズルイヤツの私だけど、そういうリコさんに憧れるし感服のみ。
現在時代、父親がその筋の方で見るからに強面という転入生を担任したことがあります。まだ未熟の私に直立不動で「娘を宜しくお願いします」と挨拶され非常にびっくりした思い出があります。
りこさんの危険と隣り合わせの体験とは違いますが、子どもへの愛情をあのお父さんからは感じました。
それにしても、誰にでも真似できるわけではないりこさんの人生、益々この先の話が楽しみになって来ました。
私は超真面目人間なので、カジノと聞いただけで危険と感じます。なので、まったく知らない世界をこのギャンマネで楽しく読ませてもらってます!
私ももっと色んなことを経験しとけばよかったなぁ😊
まるで漫画みたいですごくわかりやすい!
こんな風に闇バイトにハマっていき、抜けられなくなるのだと。
しかし田中さん、ヤクザの対応もしていた とはすごいです
30歳バツイチ闇カジノバイト!リコさん!なんてすごい世界で生きて来たのでしょう。なんだかすべての点と点がだんだんと線になって来ました。こんな経験もあんな経験もすべてが今のリコさんに繋がっています。そしてまさにリコさんにしか出来ない使命を感じます。どんな状況も恐れず果敢に取り組んでいく今のリコさんを彷彿とさせます。続きがますます楽しみで楽しみで待ちきれません!あ〜!100人いれば100通りのアドバイスが出来る今のリコさんを作ったのは、こんな経験があるからこそなんですね。なんでも経験してみることって本当に大事なんですね〜。私もリコさんを見習ってどんなことにも果敢に取り組んでいきます!勇気をありがとうございます!!
過去にこのような怖い方の相手をされたご経験がりこさんが当事者への介入に役立っているとのことで、まさにりこさん誕生秘話ですね。
怖いもの知らずだったのでしょうかね。すごい体験ですね。時給には見合ってる?!交渉術の勉強もできるいいバイトでしたね。
そもそも自分を大事に思ってもいないし、場合によっては大事に育てられてもいない。楽に早く死ねるならそうしたいと潜在的に思っていますという言葉もすごいけれども、毎日が映画の世界のようで、刺激的で面白くて仕方がありませんでした。危険と隣り合わせというのは依存性があるのだと今振り返って思いますというのもすごい。こうしてますます足が洗えなくなりました、という結語もすごいです。そこから引いてくださいと何回も思いながら読みました。