ライブ打ち上げで初の飲酒体験 酔うと自分を大きく見せたくて...... コザック前田の青春依存狂時代(6)
卒業ライブの打ち上げで、初の飲酒体験をしたコザック前田さん。酒を飲むと、自分を大きく見せたくて嘘をついてしまう自分がこの時から現れていました。

公開日:2025/09/01 02:00
今回が連載6回目になります。前回初のライブハウスでのライブがなんとか終わり、また帰って来いよ!とライブハウスの店長に言われて感動した話を書きました。今日は忘れもしないその日の打ち上げ。初の飲酒体験について書こうと思います。
「打ち上げ」って何?人生初の飲み会参加
イケてるバンドマンに「打ち上げ行こうよ!」と言われ、打ち上げってなんのことなんだろ!?飲み会という事も全く分かっておらず我らピンクモータースは参加する事になった。
テーブルと座敷がある居酒屋の2階に僕らは通された。僕の家族は親父が酒を飲む人ではあったけど、家で飲む人で、外で酒を飲んで帰って来たとか家族で居酒屋に行った事とか一度も無かったので人生初の居酒屋である。
30人くらいは来てたと思う。僕らは座敷の1番目立たないところにかたまって座り、手慣れた連中が会費を集めようとウロウロしてた。
「すんませ〜ん!会費2000円になります!」
2000円!?そして会費?なんだか分からないが18歳の僕にとってはエライ高い会費だなと思ったのを覚えている。その前に、
「一体これは何の会合やねん!?」
という疑問がずっと頭をよぎっていた。
出演した連中はまあ参加するのは分かるのだが、出演してない客として来たイケイケの男女が場を仕切っている。何が始まるか全く予測出来ないまま、僕はメンバーに聞いた。
「これ、何が始まるの?」
「前ちゃん、これは打ち上げって言う名前のコンパみたいなもんや。バンド同士の交流を深めるっていう名ばかりの会で、酒飲んで男と女が戯れる会やで!」
男女が戯れる会!!乱交パーティか!?
期待で股間が膨れ上がりそうになったが、こちとら同じテーブルにメンバーが座ってるだけで誰も他のバンドや女の子は寄ってこない‥。ただ指咥えて見てるだけの会になりそーやな。ちょっと悔しかった。
二十歳過ぎてない連中の大飲み会なんて、ここで書くことでは無いかもだけど時代がそうだったのてお許しください(笑)
見よう見まねで「ビールをピッチャーで!」
「何飲まれますか〜?」
と店員さんが僕らのテーブルに来た。
僕らのテーブルに来るまでに他のテーブルはだいたい
「ビールをピッチャーで!グラス人数分!」
と言っていた。なんか違う国の言葉を聞いてるくらい意味が分からなかった。でも他のテーブルのイケてる連中に負けるわけにはいかない!僕も思い切って
「ビールをピッチャーで!」
とお願いした。その時の「ピッチャー」の発音は野球の「ピッチャー」の発音になっていた事でしょう(そこまで覚えてないけど)。
「前ちゃん大丈夫?酒飲めるの?」
メンバーが心配して聞いて来た。
「正直飲んだことないけど、親父が毎日ビール飲んでるし、そういうの遺伝って言うやん?そやから飲める体質やと思うで!」
「まあ、ほどほどにしときな〜」
そう言う会話をしてるうちにピッチャーのビールとグラスが来た。ピッチャーのビールのデカさに驚いてしまった!
「これは何や!?」
「これをみんなでグラスに分けて行くんよ」
良かった、これを1人で飲めと言うことかと思った。
グラスにビールが注がれ、当然の如く主催のカッコいいバンドのボーカルが大声で、
「皆さん今日はお疲れ様でした〜!サイコーの1日になりました!みんな飲んで騒ぎましょう!カンパーイ!」
と言うとみんなが「カンパーイ!」と言って会が始まった。
イケてる主催者は女の子のいるテーブルを優先的に乾杯をして回っている。ちょっと僕は観察してた。L'Arc〜en〜Cielのコピーバンドをやりましたよ!と言わんばかりに少しまだ化粧を落とし切ってないその顔面には薄ら笑いさえ見えていた。
最後の最後に僕らのテーブルに来て、凄いそっけない態度で、
「お疲れ〜もっと自分ら練習した方が良いで」
と蚊が泣くくらいの声で言って5秒くらいで去っていった。
殺したい......。
その時に頭に思い浮かんだ言葉が
「イケ面殺し」
1998年の3月、この言葉が2002年にスマートの連載として使われて、そしてガガガS P史上1番売れたTシャツが「イケ面殺し」って書いたシャツになるとはまだ夢にも思ってない頃である。世の中とは本当にどうなるか分からない(笑)。
初めてのビールの味は?
初めてビールを口に運んだ。とにかく苦い!こんなもの人が飲むモノなのかと思った。
メンバーに
「みんなこんな苦いもん飲んで楽しいんかな?」
と聞いたら、
「前ちゃんの親父さんも飲んでるんやろ、辛抱して飲んでたら良い気分になってくるで!」
と言われた。
とりあえず3杯だけグラスで飲もうと決意して苦いのを辛抱して飲んだ。なんか体がフワフワしてきた。これまでに感じた事のない浮遊感。今考えたら、ライブ前の道中でみんなでラーメン食べに行って緊張して吐いてしまって、結局腹に何にも入ってない状態で飲んでいたのではないかなと思う。気分は良くなって来たが、なんかさっきのイケてる主催者になんか言っておかないと腹の収まりがつかない気持ちが大きくなって来た。
「ちょっとアイツに一言言うてくるわ!」
「前ちゃんやめとき、今アイツは女と話してる、相手にもされんで」
見たら、本当に楽しそうに女の子と話してた。人生のエエところってああいう奴が全部持って行くんやろーな....‥。そんな気分になって、苛立ちグラスにビールを注ぎ、4杯目、5杯目と飲んでる自分がいた。
酒を飲んだら嘘をつく?
そんな時、クラスの同級生の女の子が2人僕らのテーブルにやって来た。
「前ちゃん、めっちゃ面白かった!今日1番良かったよ!ちょっと話さへん?」
そう言われて涙が出そうなくらい嬉しかったのと、自分たちのテーブルに女の子が来たという奇跡とビールによって、完全に有頂天になってる自分を抑えようと必死だった。
「前ちゃん、お酒飲めるんやね」
「うん!普段から結構飲んでるねん。2人も飲む?」
酒を飲んだら嘘をつく——。そういう僕はもうこの初めての飲酒体験の時に形成されてたんだな‥....。
そこから完全に嘘をついてその2人の女の子の気を惹こうとする酒に酔った状態の「僕」が現れるのですが、ここからはまた長くなりそうなので、次回にしようと思います。
ここから女の子に嘘をつき、イケてる主催者に文句つけに行った話はお楽しみに(笑)。
今回も乱文、乱筆をご拝読くださりありがとうございました。
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