Addiction Report (アディクションレポート)

今度はまさかの、ライブハウスでバンドボーカルデビュー! コザック前田の青春依存狂時代(4)

路上ライブで奇跡のような幸運を呼び込み、すっかり調子づいてしまった僕。ライブハウスでの卒業イベントにバンドのボーカルとして誘われ、後には引けなくなってしまったのですが......。

今度はまさかの、ライブハウスでバンドボーカルデビュー! コザック前田の青春依存狂時代(4)
ライブハウスで歌う高校時代の僕

公開日:2025/07/01 02:01

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コザック前田の青春依存狂時代

今回が4回目になります。前回は僕の初ライブ、路上ライブでの出来事(奇跡のような)を書かせて頂いたのですが、今回はちょっと番外編です。ガガガSP とは少し離れまして、ライブハウスの初デビューを書かせて頂きます。

「ライブハウスでの卒業イベントに出ーへん?」

ルミナリエでの路上ライブでフォークダンスを約30人のおじさんおばさんに踊ってもらい、3万円の投げ銭を貰った僕達は感覚的には「もうデビューできるのではないか!?」という高揚感の中に居た。モチロンの如く友人にも言いふらし、ちょっと盛って話をしていた記憶がある。

「俺らの良さを世間が分かってくれた証拠やね!」

などと偉そうに言って、明確に言えば僕らの力ではなく泉谷しげる氏の力なのである(笑)。でもそんな泉谷氏と7年後にユニットを組むことになるなんて、1997年の前田少年は考えてもなかっただろうに。人生とは面白いものです。

しかしその出来事で僕らの根性がついたことは全くなくて、ただそれを肴に学校で自慢していただけの話です。「次の路上に出向こう!」なんて話が出ることもなく、ただ言いふらしていました。

そんな時にある友達から、

「今度ライブハウスを貸し切って卒業イベントをするんやけど、前ちゃん出ーへん?」

という話が舞い込んだ。

その友達は古いロックが好きな奴で、家にレコードやCDを部屋に置ききれないほど持っていた。でもギターを弾いてるなんていう話は聞いたことがない。聞くと、まだギターは弾けないけどせっかくの卒業だし一度バンドを組んで演奏してみたいとのこと。当然のことながら僕も楽器は一切出来ない。いわば、何にも出来ないもん2人でバンドを組んでライブハウスに出ようじゃないかと言う無謀な話だったのです。

確かに音楽をよく聞いている彼となら面白いことは出来るだろう。しかしながらズブの素人。そんなこと言ったら僕も完全に何も出来ない素人なのだが、自分達で尾ひれをつけたルミナリエの3万円事件を言いふらしているので、もう彼は僕のことをステージ根性も据わった「何でも出来る奴」みたいに思ってしまっている。僕も一度吐いた唾は飲み込めない状態に言わばなってしまっているので、何事もない顔をして、

「お〜!ほなやろうか!オモシロそうやね〜」

などとなるべく冷静を装って言った。

バンドのボーカルデビュー? 目立つことをしよう!

ライブハウスでのライブ......。

考えただけでも足がすくみそうだ......。それも素人2人で何が出来る!?もう頭の中は不安でいっぱいだった。僕は彼に、

「どういう形態でやるのかな‥?」

と聞いた。そしたら彼は

「もう他校とかからメンバーは集めてあるから、前ちゃんはバンドのボーカルでお願い出来たら!」

と言われた。

バッ!バンド!!!

考えもしない返答だった。僕がバンドのボーカル。そしてライブハウスのステージ。これはまさにメジャーデビューしてしまうのではないか!?訳の分からない妄想と不安が同時に頭をよぎった。でも、これはチャンスかもしれない。このチャンスを逃すと僕はとんでもなこと事になるのではないか!?という気持ちが強くなった。とにかく目立たなければならない!とにかく目立つ事をしよう!

訳の分からないことを考えて、僕は二つ返事で引き受けた。

そしたら彼が、

「ガガガの話はモチロン聞いてるから、今回は一回キリやし違うバンド名でしよーよ!やから前ちゃんバンド名考えといて!」

また名前か......。ちょっと思いながらオッケーを出した。

妄想でチックも激しく

僕は家に帰ってから沢山の妄想をし始めた。満員のお客さん、自分の好きなTさんも来てくれて、僕らのステージを観て告白される。そんな童貞丸出しの妄想もモチロンの如くして、そして落ち着きもなくなり、元々持っているチック症も歯止めがきかないくらい大きくなっていった。

元々ノートや紙の端辺りを指でペシペシするのをチックとして持っていたのですが、それがもう止まらずノートや紙を破ってしまうくらい酷くなって行きました。家では歌を聴いて飛び跳ねて、あまりにうるさいので近所から苦情も来たりして、それでも止まらなかった。

でもそのチックを出してる時は、頭の中は妄想でいっぱいなので幸せな時間なんですよね。いや、でもストレスと不安がそうさせてたのかなぁ?とにかく大きな変化に頭と体がバランス取れて無かったんでしょうね(笑)。

ローリングストーンズとベイシティローラーズ?!

卒業ライブという事で、6バンド出ることが決まった。楽器をやってる友達も沢山出ることが決まり、色んな所で、

「GREEN DAYやろうぜ!」

「Hi-STANDARDのNEW LIFEだな!」なんて声が聞こえてた。大概はイケてる連中だ。そこに女の子達が群がり、

「ミッシェル・ガン・エレファントも聴きたいな!」

なんて意見を出してる。

そういう奴らは学校の学園祭の有志バンドで出たりしているので、もう余裕なもんだ。こっちは泉谷しげるの春夏秋冬しか歌ったことのない凡人......。しかし彼らに勝ちたい!そのためには今流行ってる曲をやらないとモテない。僕はギターの彼のところに、僕らは何をしようかと話にいった。僕はちょっとオシャレに小沢健二とかカジヒデキなどをやれれば対抗できるのではないかと思っていた。

そしたら彼は開口一番、

「ローリングストーンズとベイシティローラーズをやろう!」

と言われた。

ロッ、ローリングストーンズ!?僕の夢は完全に打ち砕かれた。

一体その2つをやって誰が喜んでくれるのだろーか!?同級生が集まる卒業イベントにしては選曲が渋すぎる......。でも僕は何も言えなかった。

バンド名はピンクモータースに

そしたら彼が

「そー言えば前ちゃん、バンド名決まったかな?」

と聞いてきた。

今時の音楽をするつもりだったから、ちょこっと洒落た英語のバンド名とかを何個か考えて来たのに、これでは全く合わない。

僕はマゴマゴしていた。

そうすると、そのギターの彼が。

「そういえば前ちゃんの家にこないだ行った時、駄菓子屋が近くにあったよね?確か2軒なかった?」

「うん、あるよ。ピンクって駄菓子屋と山本モータースって駄菓子屋。」

彼は考え出した。ちょっと嫌な予感がする......。

「前ちゃん!ピンクモータースで良いんじゃない!?」

はぁ〜。ちょっとそれ下ネタ入ってないか!?確かに家の近くに駄菓子屋なのに「ピンク」ってつけてるネーミングは面白い。でもピンクと山本モータースくっつけて「ピンクモータース」って(笑)でもオシャレな渋谷系を同級生の前で演って、モテまくるという妄想はすでに粉砕されてる訳だし、もう僕は何でも良いという思いにも駆られてた。そこで僕も、

「うん、まー良いんでない!?」

という生返事をした。

「それじゃあ決定ね!ストーンズのサティスファクションとローラーズのサタデーナイト練習しといてね!」

全て決まって、不安でいっぱいに

全てが決まった。

卒業ライブはストーンズとベイシティローラーズ。バンド名は「ピンクモータース」。

その日から僕のチックが完全に不安のチックに変わったのは言うまでもない。

今回ちょっとライブまで行けなかったのですが、次回は卒業ライブの様子、そして打ち上げでの飲酒体験を話したいと思います。

拙い文章、ご拝読ありがとうございました!

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