ついに路上で演奏デビュー!のはずだったのに? 奇跡が起きたルミナリエの夜 コザック前田の青春依存狂時代(3)
ユニット名も決めて、ついにルミナリエの路上でデビュー!のはずだったのに......。2時間歌えずにいたら、奇跡が起こりました!

公開日:2025/06/02 02:04
今回は3回目になります。前回僕が現在やっている「ガガガSP 」というバンドの結成前夜の話まで書きました(そちらも是非一読下さいませ)。今回は結成してからの初めての動きを書かせてもらいます。よろしくお願い致します。
ユニット名、どうする?
何の音楽経験も持たない僕に、友達が「前ちゃんいつも変なことばっかりしてるから歌えるやろ?」と言われたのが1997年の冬。そしてユニット名を考えておいてくれと友達に言われて、僕が考えることになりました。
「どうか一度だけの事だから、軽く考えても良いだろう」と心の中ではタカを括っていたのですが、もし、もしもよ!それがキッカケでメジャーデビューなんて決まったら!?なんて思春期特有の誇大妄想にまで広がってしまい、なかなか時間が経っていくばかりでユニット名を決められずにいました。
その当時、僕たちの間では、というがちょっと音楽が好きな同世代の方なら分かると思うのですが「メロコア」というジャンルの音楽が大流行していました。メロコア→メロディックハードコアの略で、英語の歌詞でメロディが良い歌を早いテンポで歌う。そういう音楽をしている同級生や友達が沢山いた時代でした。
当然英語の歌詞を歌うので、バンド名も英語のバンド名をつけるグループがほとんどで、日本語で音楽をやるのがちょっと恥ずかしい、イナタイ(田舎くさい)印象がある時代でした。
僕が元々音楽を目指してたら当然英語のグループ名を付けて、上を目指してやってやろう!となっていたと思うのですが、何せこっちはズブの素人。ロクロクカラオケにも行ったことのない人間が、突然ルミナリエの路上で歌を歌うという言えば悲惨な行動に出るのですから、ちょっと情けないユニット名の方が良いな。時代に逆行してる方がカッコ良いのではないかと頭を巡らせました。
東京ガガガからもらって「ガガガ」に
その時、たまたま僕がどこかで貰ってきたフリーペーパーに、「昔の派手な集団」みたいなのを紹介する記事があって、そこに「東京ガガガ」という渋谷のスクランブル交差点を全裸で走り抜けたりする集団があったという記事をたまたま見たんです。(後々その集団を作ったのが園子温さんだと知りました)
これは面白い!とにかく音楽をやるというより目立ちたいという欲望だけだった当時の僕はとてつもなくその記事に興味を持ちまして、ライブ当日の朝友達に、
「ユニット名決めてきたよ!ガガガでやろう!」
と言ったのです。友達の目はテンでしたが、
「まあ、前ちゃんがそれで良いんやったらエエわ!それで行こう!」
と言ってもらい。見事に「ガガガ」(当時はまだSPは付いていない)が結成されたのが1997年の12月8日。奇しくもこれが今まで続いているガガガSP のスタートの日。結成日になったわけです。世の中何が起こるか分かりませんね(笑)
ビビって2時間歌えず
そしてその日の夕方にギターを持って、神戸のルミナリエの会場に向かいました。
当時は今ほどの人はいないにしてもたくさんの人通りで、「本当にここで歌うのか!?」と僕と友達は完全にビビってしまいました。
ギターケースからギターを出すことも出来ず、1時間くらいかけてやっとこさギターを出したかと思えば人と目が合うとサッと無意識にギターを隠してしまう始末。僕はそこに立っているだけで何の歌も歌えず、ただ立っている兄ちゃんでした。18時から場所を取って、結局一曲も歌えずに2時間の時が過ぎて行きました。
「ちょっと気が大きくなりすぎ取ったな、今日は帰ろうか?」
「また今度の機会にもっと根性つけてやり直そう」
なんて言い訳を散々並べて、帰ろうかという空気になっていた時に、奇跡が起こりました。
「にいちゃん、泉谷しげる弾けんかいな?」
酔っ払ってルミナリエを歩いていたオッチャン、オバチャン集団に声を掛けられたのです。
「兄ちゃんらどーいう歌歌えるんや!?聞かせろや!」
こう言われて僕らはオドオドしました。なんせ持ち曲は5曲くらいしかない‥。たいして弾けるわけでもないギターと歌ったことのないボーカル。何も言えずにオドオドするしかないですよね(笑)。しかし、そのオッチャンが言った言葉が奇跡でした。
「わし、泉谷しげるとか好きやねんけど弾けんかいな?」
何と僕らの極端に少ない持ち曲の中に、泉谷しげるの「春夏秋冬」が入っていたのです!
「ちょっ、ちょっと待ってください......春夏秋冬なら弾けます」
蚊の鳴くような声でオッチャンに言いました。
そしたら
「おー!それは良いやん!ほな歌ってくれや!ワシら踊るで!」
30人が泉谷しげるでフォークダンス?!
そう言われてついに腹を決めました。ガガガsp の音楽人生が始まった瞬間です。人生初の曲は「春夏秋冬」僕もここしかないと思い、おもっくそ声を張り上げて歌いました。そうすると僕らの演奏に合わせて30人くらいの集団がフォークダンスみたいな踊りを踊り始めたのです!
なぜ泉谷しげるの曲でフォークダンス!?合ってるのは「フォーク」って部分だけで全く意味違うやろ!?とか思う余裕など勿論なく、とにかく無我夢中で「春夏秋冬」を歌い切りました。
僕の喉は完全にこの一曲で声が枯れてしまいました。
ガガガの存続を決めた成功体験
そして程なくして、酔っ払ったオッチャンが、
「良かったで〜!楽しかったわ!これ取っとき!」
と僕らのギターケースに3万円をおもむろに入れて帰ったのです。
僕らは顔を見合わせました。
こんな事があるんだな‥。そして遂に僕らは演奏して歌を歌った。初めての歌で3万円という高額を貰ってしまった。
もう頭の中はぐちゃぐちゃになっていたのですが、強烈に僕の頭に「成功体験」が残ったのです。
そしてそれと同時に酔っ払いの気前の良さ、そしておおらかさに凄く魅力を感じてしまい、僕もいつかああいうオッチャンになりたいとも思いました。
兎にも角にも、この成功体験によって、僕たちは「ガガガ」の存続を決定してしまうのです。
次回は高校3年生の卒業ライブ、そして初めての飲酒体験を書きたいと思います。
ご拝読ありがとうございます。
コメント
ガガガSPカバーした春夏秋冬聞きたいです!
ギャンブル依存症のきっかけは、競馬やパチンコとかビギナーズラックで大金が手に入る成功体験というのは聞いた事がありますが、音楽での前田さんの成功体験ここから繋がっていくんですね🙂
泉谷さんも原点から大きく関わってて、ご縁の不思議さも興味深いです🌈オッチャンがいなかったらガガガ誕生してなかった⁉️と想うとオッチャンにありがとう😭✨️って伝えたいです
早く次回が読みたい!!!
フォークダンス…‼︎ 30人くらいの大人が踊る姿は見たことない光景ですね(笑)けど、神戸のオッチャン・オバチャンならあり得ない話じゃないと思いました。エアジャム世代の高校生があの時代の空気感のなか泉谷しげるの春夏秋冬歌ってたら、そらオッチャン達も嬉しくなりますね!次回が楽しみです!
おもろい!
やっぱ最初はビビってたんですね。なんか想像すると可愛いw
初の春夏秋冬聴きたかったなー。
凄い経験。続きも楽しみです☺️
第3回読みました。こんなエピソードがあったんですね。メロコアめっちゃ聴いてました。メロコア世代です!酔っぱらいのおっちゃんに時代を感じますね。このときの声を枯らして歌ったのが原点なんですね。良い思い出(*^^*)
初めての路上での音楽活動の話が聞けて嬉しいです。
ガガガの由来も知らなかったので、教えていただきありがとうございます。
次回も青春時代のお話楽しみにしてます。
「おー!それは良いやん!ほな歌ってくれや!ワシら踊るで!」のとこで、会社やのに涙腺崩壊。フォークダンスで泣き笑い。緊張してたのに頑張って精一杯やった2人にまた涙。
人と人とのコミュニケーションは面倒なこともあるけど、こういう温かいのがちょいちょいあるからやめられないなあと思いながら読みました。
文章もするするするって読める書き方ですごいなあ。