Addiction Report (アディクションレポート)

「食べ過ぎたから食べる量を減らせばいい」と思ったが、コントロールがうまくいかない。食べる量を増やすが、増えない体重…摂食障害に悩んだナツキ(中)

摂食障害になったナツキ(仮名)。1日500キロカロリー生活でもお腹が空かなくなる。マイナス4キロを目指し、始めたダイエットだが、過度な食事制限が続き、結果、マイナス8キロになった。食べる量を増やしても、体重が増えないでいた。しかし、主治医に摂食障害のことを言えないでいた。

「食べ過ぎたから食べる量を減らせばいい」と思ったが、コントロールがうまくいかない。食べる量を増やすが、増えない体重…摂食障害に悩んだナツキ(中)
主治医に摂食障害のことをなかなか言い出せずにいたナツキ(仮名、撮影:渋井哲也、2024年9月)

公開日:2024/09/26 22:00

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 シェアハウスでの生活の中で、処方薬と市販薬とをオーバードーズして救急搬送された。同じようなことが二度繰り返された。ナツキ(仮名、23)は、埼玉県に来てから生活が乱れた。

「住んでいたシェアハウスは、茨城のところに比べると、わりとは平和でした。平和すぎました。普通の休業期間中の人もいました。ウーバーで生計を立てている人もいました。私は当初は仕事をしていなかったので、生活保護を受けていました。

ただ、眠れない。1週間、眠れないことがありました。1分も眠れない。それで発狂しかけたりしていました。ただ、生きていくためには家賃も必要だし、食費も稼がないといけない。未成年だけど、親は一銭も出してくれない。その中でどう生活していくのか。7月から精神科にも通っていたので、医療費も必要です。生活保護を申請中に、精神的な不安からオーバードーズしました」

食べ過ぎたから食事量を減らせばいいと思っていたら…

ダイエットをきっかけに摂食障害になる、という話は聞く。筆者が最初に取材した摂食障害の女性もダイエットがきっかけだった。

「当初は体重が52キロくらいあって、48キロくらいに戻したいなって思ったんですよ。そのときは無職だし、仕事に行かないで痩せるのはどうするんだろうって。単純に、食べ過ぎたから食べる量を減らせばいいのかと思ったんです。しかも短期間でダイエットを終わらせたかった。だから、500キロカロリーだけを摂るようにしたんです。

やってみたんですが、体が慣れちゃうんです。1週間とかは別に500キロカロリーくらいでもお腹が空かなくなる。耐えられる感じになって、それ以上増やさなくてもいいか、って。体重はそのまま減り続けました。食べ物に美味しさを見出してなかったです。痩せればいい。その結果、1ヶ月で8キロ痩せました」

 マイナス4キロを目指し、始めたダイエットだが、過度な食事制限が続き、結果、マイナス8キロになった。食べ物に美味しい味を求めない。短期間で減量をするのは、苦痛ではなかったようだ。むしろ、習慣化していく。そして体重が落ちすぎた。

「痩せすぎました。この500キロカロリー生活を始めて、しばらくは体重を測っていませんでした。だから、自分が何キロあるのか知らなかったんです。測ったときにはもう45キロしかなかった。『あれ?48キロの予定だったのに…』という感じでした。そこから食べる量を増やしました。でも、まったく体重が増えず、むしろ減り続けたんです。最終的には、41キロくらいまで減りました。45キロから41キロになるときには、常に焦っていました。このまま減り続けたらやばいんじゃないかって…」

 体重コントロールがうまくいかない。増やそうとして食事量を増やすのに体重が増えない。10月になると焦った。

「焦って食べるんですよ。普通の人よりはもっと食べなきゃいけない。ですが、私がその時に食べた量は、普通の人よりも少ない量なんで、体重が増えないはずです。だから減り続ける。でも、それを自分ではわからない。認知も歪んでいましたし、わからなくて。『なんでみんなとほとんど同じくらい食べているのに痩せ続けるんだろう』って感じでした。食べているのに太らないことに焦っていました」

食事量を増やすのに体重が増えなかったナツキ(仮名、撮影:渋井哲也、2024年9月)

主治医にも摂食障害のことをなかなか言えないくらい悩んだ

 この頃は、毎日、朝起きて体重を測っていたが、体重をコントロールができない状態だった。精神科には行っていたが、主治医に言ってしまうと入院になるんじゃないかと思って、症状や状態を言わないでいた。

 「ネットで調べたので、摂食障害の治療が地獄なのは知っているんで、入院は嫌でした。体重の低い人とかも無理やり点滴とかをするとか。食べるまでお盆を下げてもらえないとか。絶対嫌でした。怖くて主治医に言えなかったんです。そんなとき、住んでいるシェアハウスで、痩せている友達がいましたので相談しました。

すると、その子は主治医に言ったそうですが、『入院にはならかったから大丈夫だよ』って。それで私も主治医に話しました。私も入院にはならなかったんです。ただ、『40キロきってしまうと入院を検討しないといけない』とは言われました。『40(キロ)以上保ってくれれば入院にはならないから、毎回診察の時には体重を測らないといけないけど、頑張って保ってね』ということでした。頑張って、41キロから43キロを保ちました」

 体重を保つことができたのは、診察日前にたくさん食べるなどして、体重を作ったのだろうか。

  「作りました(笑)。前日の夜と当日の朝にたくさん食べました。当日の朝なんて、500(ミリリットル)の飲み物を買って、一気に飲みました。体重を増すために頑張っていました。洋服も重そうなものを選んでいました。そうすれば(見かけの)体重は増えた状態になります。なんとかなりました。だから、地獄のような摂食障害の治療は一回もしていません。だから、自然に治っていくものと思っていました。だから長引いたのかもしれませんが…」

『何を話すのが正解ですか?』。カウンセリングは合わない

 その後は、コロナ禍も重なり、電話でのリモート診察にもなっていた。

 「電話である程度質問されて、それに答えて。先生が処方箋を書いて…。それで薬局から郵送で薬がおくられてきました。3ヶ月くらいはその形で診察を受けていたのですが、これは意味があるのか?と思って、近くの大学病院に変えました。カウンセリングも受けました。大学病院の先生に勧められたからです」

 カウンセリングの相性や効果はどうだったのだろうか。

「(紹介されたところに)3ヶ月間は行きました。でも、(カウンセリング料が)高いじゃないですか。1ヶ月で3万円とか。親からは『効果があるかどうかわからないカウンセリングにお金を出したくない』などと言われました。かといって。自分では払えない。だからカウンセリングはやめました。頭の中で考えすぎることを一緒に整理してもらえるのは良かったんです。でも、カウンセリングに行っても、『何を話すのが正解ですか?』と聞いてしまう人は、カウンセリングは合わないかも」

(つづく)

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