男性と大喧嘩して別れたことで、「抱きしめてもらえないまま人生終わるかも」と、孤独感が増す。その結果、ハプニングバーを知り、ハマる 〜セックス依存症のまゆみ(上)
コロナ禍と失恋が重なり、新宿のハブニングバーへ通うようになった、まゆみ(仮名、29)。失恋相手は10代後半からグルーミングされ、ずっと依存してきた。演技性パーソナリティ障害の診断を受けていたためもあってか、ハプニングバーの世界にすっかりハマっていく。「誰かに抱きしめられたい」。そんな感情が向かう先とは…。
公開日:2024/08/17 11:00
18歳の時にグルーミングされた男性に依存する
まゆみ(仮名、29)は、新型コロナウィルスが流行していた2020年ごろ、複数の男性と性的な関係を結ぶハプニングバーに通っていた。それまでは性的な意味でも厳格に育てられていた。
「それまではむしろ、(性的な行為は)いけないことだと思っていました。親の教育方針だと思います」
ハプニングバーというのは、男女が利用料を支払うが、単独女性の場合、利用料が無料というところが多い。飲食店(バー)の体裁をとっているが、客同士の間で、性的な「ハプニングが起きること」を前提としている。お店によって内部の構造も違うが、オープンスペースや個室がある。また、お店によってルールも違っている。ただし、公然とわいせつ行為をした場合は、客側が「公然わいせつ罪」が成立する場合もある。
なぜ、コロナ禍とセックスが結びついたのだろうか。実は、20代前半から26歳ぐらいまで、一人の男性に依存していた。出会いのきかっけはSNSだった。
「大学1年、つまり18歳のときにTwitter(現在のX)をはじめたんです。それまでインターネットに免疫がなかったんですが、18歳ほど年上の、その男性が近寄ってきました。今で言えば、グルーミングだと思います。当時はそんな言葉は知りませんでした。その男性は『よく頑張っていると思う』など、ひたすら承認してくれるんです」
グルーミングというのは、もともと「(動物の)毛づくろい」という意味だが、性犯罪の文脈で、子どもへの性加害を行おうとする者が、被害者となりうる人物に近づき、親しくなって信頼を得る行為をさす。23年7月の刑法改正では、16歳未満の者に対しての行為を「面会要求罪(=性的グルーミング罪)」として、新設された。
「その男性は気がついたらそばにいましたし、初体験の相手でした。全部、その男性のものになっていました。つまり、お金を貸しましたし、セックスもしました。予定を合わせるために転職もしました。ただ、6年間ずっと一緒にいたわけじゃないです。23歳から25歳までは空白期間がありますが、再会すると、また性的な関係になりました。
性行為をする日は、性行為しかない。ラブホテルのフリータイムを利用しましたが、いろんな境目が曖昧になっていました。寝ているか、性行為をしているか。(男女の付き合いは)もともとそういうものだと思っていました。しんどいことから離れて過ごす。その手段が性行為だと思っていました」
別れたくないと思いつつ、「避妊できないカス」と大喧嘩
性的な関係が続いていたが、なぜ、その男性に振られたのだろうか
「男性が避妊をしなかったんですよ。あるとき、避妊もできないカスと思ったんです。『ちゃんと学校へ行ってなかったの?』などと考え、『教育の敗北だ』とも思いました。さすがに私が恐怖心を覚えて、大喧嘩したんです。
子どもができるのは怖い。それでも、いつもは喧嘩しても、毎回私が折れていたんです。依存性パーソナリティ障害の診断を受けていましたので、精神科の処方薬も飲んでいました。そんな状況で出産や育児は避けたい。譲れませんでした。その結果、男性が根を上げた感じです。
今は嫌いになっていますが、当時は別れたくはなかったです。その人に捨てられたらどうしていいかわからなくなってしまって。一気に何もないと思っちゃったんですよ。その頃ぐらいから、『自分は、このままだと一生誰にも抱きしめてもらえないまま人生終わるかもしれない』。そんな強迫観念がありました」
SNSのやりとりでハプニングバーを知り、やめられなくなる
20年10月頃から、新宿のハプニングバーに通うようになった。
「ハプバーの店内では、女性がカーストが上です。客としては男性が多く、女性が少ない。そのため、チヤホヤされます。そのため、居心地が良いんです。それまでは、ハプニングバーのような店があるって知らなかったんです。このまま、枯れていくのは嫌だな、と思っていたので、どハマりました。居場所があると感じました」
そうしたお店通いが続き、やめられなくなった。では、なぜ、ハプニングバーの存在を知ったのか。
「SNSの裏垢で、〝寂しい〟みたいことを言っていたんです。すると、全然知らない人から、〝ハプニングバーがありますよ。どうですか?〟というレスポンスがありました。〝一緒に行きませんか?〟という連絡もありました。その誘いは無視していたんです。
けど、お店自体が気になってしまって。教えてくれた人はどんな人かは知らないし、その人に抱きしめられたいわけじゃない。だから、1人で行きました。もうとにかく孤独だったんです。それに、何か依存していないとダメなんです。依存対象が人でもいいんですけど、依存していないとすごく不安で…」
振られた男性に似ていた人物に会うために通い詰める
ハプバーにハマった理由はもう一つある。それは、まゆみを振った男性に顔と体験が似ている男性がいたことだ。店内での連絡先交換は禁止のため、プライベートでは会えない。お店に行っても必ずいるとも限らない。いるかどうかはわからないために、とにかく通い詰めた。
「その人は帰る場所はないようなタイプで、いつも店に行っていました。それが嬉しかったんです。加えて、その男性は店を回すタイプの客だったんです。その男性自身、あまりセックスをするようなタイプではなかったんです。誰も相手がいなかったらすっと喋っていました。
最初は、すごくもてなしてくれました。でも、私の来店目的がわかっているんだろうなと思いました。『こいつ、セックス目的で来てないな』というのをわかったんだと思います。ただ、普通に会話はしてくれましたし、ハグはしてくれました。
そのうち、私が慣れてきたときに、その男性は『ほか、あそこに客がいるから行ってこいよ』と言われるわけです。暇そうにしている客がいたら、そこにあてがって、その男性自身は別の女の子をもてなしていました。やや不満でしたが、揉められたらするしかなくて…。いいんですが、一人で来ていた客に、その男性は『どうだった?』と感想を聞いていました」
そのうち、まゆみは、客の相手をするのを断る方法がわからずにいた。
「週2、3日通っていました。一回行くと、最低でも3人は相手していました。そこはマニアックな店でしたので、一回に一人を相手するというのはあまりなくて、複数人とプレイすることが多かったので、全員で何人を相手にしたのかは正確にはわからないです。別にセックスがしたいわけじゃないんですが、しんどいことを忘れるのに、最適のツールです。終電が近づくと、みんな帰りはじめますが、あまり記憶がないですね。終電がなくなると、お店に泊まっていました」
(続く)