Addiction Report (アディクションレポート)

「酒がやめられない」編集長と、「やめろと言えない」わたしの雑談トーク(4)ほどよく飲む、きっぱりやめる。そのはざま。

「寝るために酒を飲む」わたしたちから見えてきた「うまく寝られない」問題。そこから、それぞれの「眠るための薬とお酒の関係」が紐解かれます。

「酒がやめられない」編集長と、「やめろと言えない」わたしの雑談トーク(4)ほどよく飲む、きっぱりやめる。そのはざま。
酒をやめた今は、打ち上げもアイスとソフトドリンクで十分満足(青山)

公開日:2024/06/13 02:04

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だらだらトーク

やめたいわけではなく、できれば「適量を健康的に楽しく飲みたい」。

そんな超難問に解決策はあるのか? 

「お酒を減らしたい」Addiction Report編集長・岩永直子と、3年ほど前に「お酒をやめた」ライターの青山ゆみこ。お互いの生活や人生を振り返りながら、切実に「お酒との付きあい方」のヒントを探す雑談トーク連載4回目です。(まとめ:青山ゆみこ)

適量でやめられない、とまらない

青山 お酒を飲み始めた瞬間の、一口目のおいしさってすごく特別なものがあるじゃないですか。そのおいしさは、3杯目、4杯目とは比べものにならない気がするんです。わたしの場合は、アルコール耐性がそこまで強くないからかもしれないけど。日本酒なら一合の半分ぐらいが一番おいしいし、身体もふわっとゆるんで気持ちが良くなる。でもそこから急なピッチで量を飲むと、体がしんどくなる。ワインでもグラス3杯目あたりで、ちょっと酔ってぼわっとしたあと、わたしの場合は、なんとも言えない物足りなさみたいなものがすごく強くなって、食欲も出てなにかつまみたくなって、さらに飲みたくなる。喉や口のあたりの渇望感みたいなものを満たそうとすると、ボトル1本飲んで、アルコールで感覚を麻痺させないとごまかせないみたいになるんです。ほんとは2杯でやめたら、楽しく美味しく終われるのに。

岩永 わたしの場合は、もうちょっとアルコール耐性が強いと思うんですけど、日本酒だと2合ぐらいが一番ふわっとした感じで後にも響かなくてちょうどいいって感じ。ワインだったら、1本か1本弱ぐらいかな。

青山 いいですねえ。

岩永 だけどそれ以上飲んじゃってるわけじゃないですか。わたしの行きつけの居酒屋の日本酒の盛りこぼしって、一番小さいグラスでだいたい90ml。自分では、一日にそれを5杯までって決めてるんです。自分の適度な量より少しだけ多めなんだけど、5杯までなら気分よく楽しい会話もして、ほろ酔いぐらいで帰れて、翌日も響かないのでいい感じなんです。でも、ついはしご酒しちゃったり、調子に乗って……。抑えたいのは5杯目以降。適量を自分でわかってるくせに、それ以上に飲むっていう。あれは、なぜなんですかねえ。

岩永の行きつけ居酒屋で一人呑み。こぼしてもらって約90mlを5杯呑む。

青山 お酒でしょ、お酒のせい。岩永さんがアルコール関連の記事で書かれてきたように、自分の人格の問題じゃなくて、お酒に操られてるんだと思う。岩永さん、ほんと今までそのこと、めっちゃ書いて発信してこられてると思うんだけどなあ。

岩永 そこなんだよなあ。自分事ではなく、書いちゃってるんですよね。依存症の人のストーリーを聞いて、書きながら「これはわたしと一緒だ」って思うことよくあるんですよ。自分のなかに似た要素があるって気づいてドキッとする。なにか問題のようなものがあるとどこかでわかってるんだけど、仕事中は飲んでないとか、まだ大丈夫って無理くり自分に言い聞かせてる気がします。

眠るために飲む。不眠と酒と薬の関係

青山 岩永さんの5杯みたいに、気持ち良くふわっとしたところでやめるとか。そういう飲み方にたどり着けたら、最高だなって思いますね。わたしの場合もそれが本当に難しくて、できなかった。減らすというやり方は無理だから、完全に1回リセットするしかなかったんです。身体からも生活習慣からも、完全にお酒を抜いてみないと、わからなかった。心も身体もいったんお酒から離れてみないと、自分が果たして、どういうふうにお酒と付き合うのがいいか、分からなくなっちゃってて。

だってね、自分が人生を選択できるようになった二十歳以降、自ら選んできたものの一つがお酒だったわけです。それも強度に自分が望んで選んで飲んできた。もはやお酒がある人生がデフォルトで、わたし自身そのものなのに、それを切り離しましょうと言われたら、それはもはやわたしの人生じゃないのでは? そんな感覚があったんです。

岩永 わたしもそういうところがあるなあ。自分が人生でいろんな選択をしてきたじゃないですか。記者になることも自分が望んだ選択で、実際に記者になって、その時その時をうまく回すために、お酒が必要だったという感じ。わたしは不眠症もあって、原稿を書きっぱなしで寝ようとすると頭の中で直前まで書いていたフレーズが回って、ずっと考えちゃう。それで頭をぼかすというか、仕事から頭を離れさせるために飲んでいるところもあります。

青山 きりきり回転する思考を止めるために飲むという感じ?

岩永 頭がぼやっとするまで飲むと、もう仕事ができないし、ひとまず眠れる。でも、途中で起きちゃうんです。お酒で眠りが浅いから。私はジンが好きで寝酒として常備してるんですが、ジンってアルコール強めなのでグイッと飲むとスッと寝られる。だから、もう本当に眠れないってときはジンを飲む。でも、それでも眠れない時は、それにプラスして睡眠薬も飲んじゃってた時がありました……。

青山 そっかあ。お酒と薬なあ。同じですよ……。わたしも今の精神科に通い始めたのは、お酒と睡眠の問題からなんです。それまで行ってた心療内科で減酒の相談してもラチがわからないというのがあって、しっかりと相談できる精神科の先生を紹介していただいて。その頃は、お酒と薬のダブルじゃないと寝られなくなってて、お酒は酔い潰れて寝るために飲む。その酔い潰れる直前に、薬もすかさず飲んで。翌日は二日酔いのせいなのか、お薬のせいなのか、よくわからないようなしんどさがあると先生に言ったら、「それは当然よくない。まずどっちかにしましょう。両方飲むのはちょっと危険だよ」って。それで初めて、お酒と眠剤をどちらかに整理しないといけないと教えられて。今になると当たり前のことだけど、当時は大きな問いを突きつけられた気がしたんです。眠りたいし、お酒も飲みたいし。どちらか選ばなきゃいけないのか、まぢかー、難しいな、という感じで。

岩永 なるほど、なるほど。

青山 今の岩永さんみたいに、一つずつ順番に、なにが問題なのかをわたしも整理していったような気がしますね。でも、それって一人じゃできなくないですか? 身体の面でパーソナルトレーナーに助けてもらったように、わたしの場合は睡眠とお薬のことは、精神科の先生に飲み方も教えてもらって、薬の量も調整してもらって。今は減薬に挑戦してるところなんです。2年かけて半分に減ったところかな。

一人で抱えているわけじゃない

岩永 わたしは、不眠症だけではないですけど、神戸の緩和ケア医の新城拓也先生に遠隔でかかっていて、隔月15分ほどの診察をしてもらっているんですよ。そのときに、今の悩みとかストレスを聞いてもらって、自分なりにある程度、自分のなかにあるモヤモヤを外に出すことはしているんです。でもやっぱり精神科とはちょっと違うのかな。精神科だからいいってもんじゃない気もしますけれども。

岩永が不眠症がきっかけで個人的にかかっている新城拓也先生

青山 新城先生はわたしも個人的にお付き合いがあるんですが、普段からお話をよく聞いてくれる方だなと感じます。すごくよさそうですね。

岩永 新城先生にかかりたての頃は、本当に眠れなくて、眠りに落ちそうかなというときに、このまま死んでしまうという妄想が急に頭に浮かんできて、飛び起きるみたいな。そういう問題もあったんですよ。ただ、新城先生に相談して、いろいろ対処していったら、そういう問題は改善されてきたんです。お酒と薬の両方を飲んじゃうことも、「大丈夫ですよ、そのくらいの量だったら」と言ってくれているので、睡眠薬とも一緒に飲んじゃうこともある。

そんなふうに、その時その時の問題を整理することは、先生に話しながらできているような気がするんです。ただ、自分の人生を俯瞰してこの先を長いスパンで考えることはどうなのかなあ。できているのかなあ。カウンセリングを一度受けたほうがいいのかな。

青山 専門家じゃないから簡単なことは言えないんですけれど、岩永さんのお話を聞いてて、あくまでわたしの感覚では、緊急性みたいなものはあまり感じないんですよね。前にお伝えしたみたいに、お酒もどうしてもやめないといけないほど問題にはなってないみたいだし、そうやって、お薬のこともかかりつけの先生と相談して安全に調整されていて、他になにか深刻に困ってることがあるわけじゃなさそうっていうか。

岩永 今すぐ変えなくちゃいけないものがあるほど、困っていないというのがまた困りどころというか。変えたほうがいいよね、と思っていても、今すぐ何とかしないと、ダメになるという感じでもない。でも、これからの人生を考えると、ここらでいいきっかけとして、依存症のメディアの編集長にもなったのかもしれませんね。こういうふうに、自分のお酒のことを話すいいきっかけ、機会を与えてもらって、自分の生活を見直すのもいいような気がして。ありがとうございますという感じですよ。

(つづく)

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コメント

4ヶ月前
キャサリン

どんどん核心に迫っていく。

お酒ってほんと美味しくて、楽しくて、厄介なものだなあ。

前職をやめていなければ、子どもを産み育てると言う動かしがたい出来事がなければ、やめられなかったかもしれない。ちょうどいい塩梅の時にストップできなくて、そこから立ち去りがたくなっちゃうんだよな、なぜだか。這う這うの体で家に帰りつき、酔いがさめてきて覚醒するして眠れなくなる、その酔いと覚醒の狭間を体感する瞬間が好きだったかもしれない。

お二人のお話を横で盗み聞きしながら、うん、うんと頷きまくっている感じがする。

さて、明日はどうなる?

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