Addiction Report (アディクションレポート)

ハリウッドセレブが悩まされてきた摂食障害 見た目や体型をからかう声にさらされて

ハリウッド・セレブたちを悩ませ続けている「痩せ続けていなければならない」というプレッシャー。周囲の心ない目線や言葉が、そのままで美しい女性たちの心を追い詰めています。

ハリウッドセレブが悩まされてきた摂食障害 見た目や体型をからかう声にさらされて
ずっと「痩せ続けていなければ」という強迫観念と闘い続けてきたデミ・ムーア。最新出演作『サブスタンス』は、まさにそんなプレッシャーがテーマだった。(筆者撮影)

公開日:2025/09/01 21:34

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話題となったアリアナ・グランデの体型

 「ウィキッド ふたりの魔女」(2024)が全世界で爆発的にヒットした昨年末から今年はじめにかけて、アリアナ・グランデの体型がちらほらと話題になった。昔に比べて明らかに細くなったことから、摂食障害を抱えているのではないかというのだ。たしかに、過去の写真を横に並べると、違いは明白だ。

 だが、本人は否定。グランデによれば、痩せたのはあくまで、不健康な習慣をやめ、正しい食生活とライフスタイルを実行し始めたおかげとのこと。グランデはまた、他人の体型についてとやかく言うべきではないとも述べている。

 そのコメントについては、専門家も強く同意するところだ。セレブリティは、少しでも太るとすぐ指摘され、“ボディ・シェイミング(※1)”にさらされる。それは悪意がなくても起きる。グランデのファンもおそらく痩せた彼女を本気で心配してあげたのだろうが、意図せずしてそこに加担してしまうこともあるのだ。一般人でも、女性、とりわけ若い女性は、ルックスについてセルフコンシャス(※2)になりがち。仕事を取れるかどうかに見た目も大きくかかわってくる女優やモデルとなれば、なおさらである。

※1.他人の体型や見た目についてからかったり、馬鹿にしたりする行為

※2.人目を気にすること

「痩せていなければ」というプレッシャーに苦しんできたデミ・ムーア

 痩せていなければいけないというプレッシャーは、昔からずっと女性セレブを苦しめてきた。今年のアカデミー賞に複数部門で候補入りした「サブスタンス」(2024)は、まさにそこを鋭く突くもので、脚本を書き下ろしたコラリー・ファルジャ監督は、どんなに美しい女性も自分の欠点に悩み、ひとつを治したとしてもまた次が現れて永遠に終わることがないのだと、筆者とのインタビューで語っている。事実、主人公エリザベスは、死んでやっとそこから解放されるのである。そこに共感する人が多かったからこそ、この映画は成功したのだ。

「サブスタンス」のコラリー・ファルジャ監督とデミ・ムーア(筆者撮影)

 エリザベスを演じたデミ・ムーアも、かつて自らの体型をコントロールすることに執着し、苦しんできた。そのことについては、回顧録「Inside Out」で赤裸々に語っている。

 セックスシーンが多く、体を露出する「きのうの夜は…」(1986)に主演するにあたっては、エドワード・ズウィック監督から「痩せるように」と言われた。第二子妊娠中には、出産直後に撮影開始予定の「ア・フュー・グッドメン」(1992)に出演契約をし、妊娠中も激しいワークアウトをしたせいで母乳に影響が出て、赤ちゃんの生育に不安が出た。それでもダイエットと運動をやめられなかった。「幸福の条件」(1993)で、女性にやわらかい曲線を求めるエイドリアン・ライン監督に「少なくとも5キロは太って」と言われると、「それではとても肌をさらせない」と強く主張し、痩せたままで撮影に挑む。

 ストリッパーを演じる「素顔のままで」(1996)の撮影中の食事は、朝食にオートミール半カップ、昼と夜はタンパク質に少々の野菜のみ。ワークアウトは週6回。「体型にここまで執着するのは狂っていると思うかもしれません。実際、あなたは間違っていません。摂食障害は狂っています。病気です。この病気にかかり、とても惨めな状態になっても、じゃあやめようとはならないのです」と、ムーアは回顧録に書いている。彼女がそこから抜け出せたのは、「素顔のままで」の後、戦士を演じるために男性のような肉体になった「G.I.ジェーン」(1997)の後。普通ならばまた痩せるためにダイエットをするところが、「もうこんなのは嫌だ。普通になりたい」と思ったのだという。

「妊娠しているみたい」の声がきっかけで摂食障害

 婚約発表で大注目を集めているスーパースター、テイラー・スウィフトも、ティーンの頃、摂食障害に悩まされた。2020年のドキュメンタリー映画「ミス・アメリカーナ」の中で、彼女は、パパラッチに撮影された自分の写真を見た誰かが『妊娠しているみたい』とお腹が出ていることを指摘したことがきっかけだったと告白。まさに“ボディ・シェイミング”である。今、彼女は、「私の服は(普通サイズの)6号。(極端に痩せた人用の)00号ではない。でも、00号だった時、それが(痩せすぎで)悪いとは思わなかった。誰かに何かを言われたら、『もちろん食べているし、たくさん運動をしているわ』と言い訳をしていた。運動はしていたけれど、食べてはいなかったというのが本当のところだったのだけれど」と語る。

身近な人の言葉がきっかけになることも

 他人の無責任な発言ではなく、身近な人の何気ない言葉が引き金になることもある。

リンジー・ローハンが出演した『シャッフル・フライデー』の一場面(今月公開) (© 2025 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.)

 人気の絶頂期にあった18歳のある時期、リンジー・ローハンは激痩せし、摂食障害を疑われた。本人ははっきり語っていないものの、きっかけは、エージェントかマネージャーのひとことだったようだ。売れっ子の彼女が過労で短期間入院し、お見舞いに来てくれたところ、ちょっと痩せた彼女を見てそのほうが良いというようなことを言ったらしいのである。体調を崩したから体重が少し減ったのに、回復してからもそのままを保てと間接的に言われたなら、これまでのように普通の食事をすることはできなくなっても無理はない。

 ローハンと同じ頃には、メアリー=ケイト・オルセンの急激な体型の変化も注目された。双子のアシュレイ・オルセンと「見分けがつかない」そっくり姉妹と言われてきたのだが、メアリー=ケイトだけがみるみる痩せ、別人になっていったのだ。きっかけは不明ながら、幸いにも、家族が彼女を救ってくれた。18歳の誕生日の1週間後、彼女は、摂食障害の治療のため、ユタ州にある滞在型のクリニックに入所6週間をそこで過ごし、その後、プライベートの治療を続けたとされる。彼女はそのことについて語りたがらないものの、数年後のインタビューで、「何かがおかしいと思ったら、話すことが大事。私はそれを若い頃に学んだ」と述べている。

外見について心ない言葉を投げつけるのはやめよう

 公に認めている、いないにかかわらず、摂食障害の経験があるセレブはほかにも多数いる。ひと昔前と違い、ファッションショーで痩せすぎているモデルを使わないなど、業界が多少意識をするようになったとはいえ、社会のルッキズムは今もある。「そんなの気にしないわ」と言えるほど若い女性たちは強くない。それが現実だ。

 それは、かつて同じようなプレッシャー、劣等感、焦りを感じたことが一度でもある人ならば、きっとわかるはず。だから、身近な人たちに対してはもちろんのこと、直接聞こえることのない遠い世界に住む有名人たちに対しても、外見について心ない言葉を投げつけるのは、やめようではないか。小さなところから世の中が優しくなれば、少しでもみんな生きやすくなるのではないかと思う。

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コメント

3時間前
まり

良い記事をありがとうございます!

人の外見についてとやかく言う事こそ

「ダメ!ゼッタイ」だと思います。

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