回復中だった田中聖さん 「Restart」製作インタビュー
仲間たちを励ますメッセージソング「Restart」が完成した時に、この曲への思いを田中聖さんにインタビューしました。インタビュー動画とその時の聖さんの姿をプロデューサーの田中紀子が伝えます。
公開日:2024/06/25 08:00
仲間たちを励ますメッセージソング「Restart」が完成した際に、この曲への思いを田中聖さんにインタビューさせて頂いた。
インタビュアーは同じ薬物問題で逮捕経験もあり仲間でもある、元NHKアナウンサー塚本堅一氏にお願いした。
聖さんは、「今回の曲に込めた想いを聞かせて下さい」という問いにこう答えられている。
「今までの自分って弱いところを見せるのがカッコ悪い事だと思っていたし、弱味をみせるのは弱点を見せるみたいで、ひけらかすのがすごいダサいと思っていたし、恥ずかしいと思ってたんですけど、自分の現状を考えたり、誰にどういうメッセージを送りたいかって考えた時に、自分と同じように悩んでたり苦しんでいる人って、すごくいっぱい居ると思うんで、そういう人達に届けばいいなっていうことを考えたら、カッコつけちゃいけないって一番意識して作っていましたね」
「だから作ってて、素の自分というか、たまねぎの皮をむいていて芯のところを出さないと誰にも伝わらないと思ったし、僕自身もこの曲をやらないと音楽をやっちゃいけないとすごい思ったんで、素の自分というか、弱い自分を出した曲かもしれませんね」
アイドルとして活躍し、アイドルとしての使命を果たしてこられた聖さん。カッコよさ、男らしさにあふれている。マスコミの悪意に満ちた扱いに対しても、やんちゃキャラで、どんな誹謗中傷にも中指を立て、平気な振りもされていたと思う。
でも実際の聖さんは、驚くほど礼儀正しく繊細だ。インタビューにもある通り聖さん自身が隠し続けてきた、ご自身の内面を「Restart」ではじめて表現されたのではないかと思っている。
ワイドショーなどでの悪意ある報道
私は、聖さんと年齢が20歳以上も離れており、アイドルとして活躍しておられる頃は子育ての真っ最中で、歌番組などにバンバン出演されている姿は殆ど拝見していない。むしろ同じ仲間の元NHK歌のお兄さんである杉田あきひろさんの方を子供達と見ている機会の方がずっと多かった。
だがその後の特にグループを離れて以降の田中聖さんの報道は、ワイドショーや週刊誌等で目にすることがあった。聖さんは、芸能界に疎い私から見ても、報道の仕方にかなり悪意があったと思う。ルールを守らず、他人の忠告も聞き入れない、わがまま放題の傲慢な男、こんなキャラが勝手に作り上げられていたように見受けられた。素人の私でも、「大手プロダクションを離れると、メディアは平気でスケープゴートにして叩くんだな」という気持ちになった。
と、同時に「若い頃からアイドルでチヤホヤされていると、勘違いしちゃうんだろうな」と、結局のところ、メディアが作るイメージにまんまとのせられていた。
自助グループにも参加 礼儀正しい、素直な若者
実際の聖さんとの出会いは2022年の5月だった。主治医の松本俊彦先生からのご紹介で、聖さんから直接お電話を頂いた。松本先生からも「とても礼儀正しい、気持ちの良い若者ですよ」と伺っていたが、第一印象はまさにその通りだった。
お電話で約束し、当会事務所にいらして頂いた。ニコニコと笑顔で来られ、本当に礼儀正しく、話しやすい方だった。小1時間、依存症に関する話しと、自助グループの必要性、そして社会復帰の計画などについて伺うと、すんなりと理解され「宜しかったら、高知東生さんら芸能人の方が集まっている自助グループに、聖さんも参加されませんか?」とお誘いしてみると「はい、是非」と仰有って下さった。
そして実際に5月の自助グループから参加され、「12Stepプログラムもやりませんか?(自助グループで使われている回復プログラム)」と、お誘いするとそちらも「はい、やります」とすぐにやる気になられた。
普通、自助グループや12Stepを勧めても、すんなり行動に移せる人は少ない。
一般人でもそうだが、著名人となると尚更だ。「他人の前で、誰にも話したことのない話しなどしたくない。本当に安全なのか?どこからも漏れないのか?保証はない」こう考えるものだ。ましてや私のような、一般人でどこの馬の骨ともわからない、母親に近い年の女性から勧められても、なかなか信用できるものでもないと思う。
聖さんが、すんなり受け入れられたのは、高知さん、杉田さん、塚本さん、橋爪さんといった、先に同じ道を歩いてきた著名人達が、啓発活動に力を入れて下さったことも大きいと思う。実際、聖さんは高知さんらの記事やSNSをご覧になって勉強もされていた。だとしても、あれだけの人気芸能人でありながら、これだけ他人の提案に従えるのは、そもそもの聖さんの性格がとても素直なのだと思う。
自助グループに向かう時も職質をかける警察官
自助グループとは別に12Stepに取り組むときは、聖さんのご自宅のそばの貸し会議室などを取って行った。とにかくマスコミがどこで狙っているかわからない。高知さんの時もそうだったが、マスコミは事件後からは、世間に出てくる前の回復治療に向き合っている時を狙って隠し撮りをし、治療への機会を阻害してくる。
私は、高知さんの時も聖さんの時もマスコミを警戒し、できるだけ自分の車でドアtoドアでの送り迎えを心がけていた。
一度、聖さんが私の車に乗り込んでさぁ出ようと思った時に、コンコンと窓を叩かれ職務質問をかけられたことがあった。私はめちゃくちゃ腹が立って「私、依存症支援団体の代表で、これから一緒にプログラムに取り組むところです」と、名刺を出して言ってみたが、もちろんそんなことで警察は引き下がらない。聖さんは、あっさりと職質に応じていたが、私は非常に嫌な気分になった。「聖さん、これまでも職質受けたことがあるんですか?」と聞くと「しょっちゅうですよ。外に出ると必ずというくらいですね」と苦笑されていたが、こんなことがしょっちゅう続いていたら、社会に自分の居場所感のなさは埋まらないのではないかと思った。
回復プログラムに向き合っている人が、外を歩く度に職務質問されていたら、「どうせ信じてもらえない」「こんな日々がずっと続くなら、使っても同じ」と自暴自棄になってしまうのでは?と懸念していた。
「回復」に向き合おうとしていた聖さん
結果として、聖さんはスリップ(再発)してしまったわけだが、平気な顔をして笑っていた聖さんの胸の内には、悲しみや諦めの気持ちがあったのではなかったかと推察している。
聖さんは、「回復」に向き合おうとしていたことは間違いない。普通は「もう大丈夫」「俺は依存症ではない」「もう絶対やらない」と精神論で頑張ろうとするものだし、依存症を否認するものだ。聖さんには、そういう抵抗が全くなかった。だからむしろ私は、聖さんは依存症まではいっていないのではないか?ものすごい軽症の人なのではないかと思っていた。
我々依存症界の常識としては、依存症のセミナーや番組などで「やばい、俺も依存症かも」などと言える人、素直に自分のことを認められる人は依存症ではないと言われる。
本当に依存症状態になっていて、身近な人に迷惑をかけ問題を起こしている人は、それがバレないように必死に隠し、友人知人にツッコミでも入れられようものなら「いや俺は依存症じゃないよ」と必死に抗うものだ。
これほどあっさりと依存症を受け入れ、実際にプログラムやミーティングの時間も割くというのは、依存症自体はそれほど重症じゃないけれど、何かこれまでのストレスで感じているものがあるのかな?と思っていた。
だから再犯の時にはもちろん驚きもあったが「真剣にやめたい気持ちもあった、やっぱり依存症だったんだな」と納得がいった。
聖さんは、スリップしてしまったけれど、決して甘く考えていたわけでも、自分に向き合おうとしていなかったわけでもない。そこははっきりと伝えておきたい。
パパラッチ記事のせいで幻となったダルクの参加
そしてもう一つ、いつか伝えたいと思っていたので、今回この機会に書きたいのだが、聖さんと私と、高知さんと三人で、山梨ダルクに行ってプログラムを受けようという計画があった。ところがその計画の直前に、聖さんのパパラッチ記事が出された。そのため外出することに警戒心を抱いた、聖さんやご家族のご意向で、取りやめになってしまった。
社会では薬物依存症者の再犯率の高さなどというキーワードを取り上げ、その責任が全て個人にあるかのように矮小化されがちだが、そもそも司法に薬物依存症者を治療に繋げるという再犯防止策が整っていないことに大きな問題がある。
その上、メディアは薬物依存症という病気に対し個人攻撃を続け、治療を阻害していることに無自覚である。依存症は命がかかっている病気である。面白おかしく、執拗につけまわしてよいものではない。依存症に関する正しい知識を学び、報道して頂きたい。
「自分の代わりはいくらでもいる」と自信を持てなかった素顔
私たちは、聖さんが「Restart」の次に作って下さったメッセージソング「Love Yourself Agein」を能登半島地震のチャリティソングにすることが決まった時にも、Addiction Reportで独占インタビューをさせて頂いた。
インタビューとしてはこちらの方が新しいのだが、チャリティという性質上こちらを先に公開させて頂いた。
この記事は、Addiction Reportで何度もランキングTopになっている。
インタビューの中で、聖さんが実は自信がなく、自分の代わりはいくらでもいる、役に立つ自分でなければ価値がないと思ってきたと内面を語っている。
聖さんは、決してメディアが作り出したような、そしてご自身もそれを演じてきたようなやんちゃキャラだけではない。この記事は、強がってキャラを演じて生きる、現代人の胸を打つ。まだお読みでない方は是非こちらもご一読頂きたい。
関連記事
田中聖さん関連記事
コメント
アイドル時代からバンド時代、独立してからもずっと応援してきました。
聖くんのいつも真っ直ぐな言葉、音楽、生き様に、感謝しても仕切れないくらい助けられてきました。
再逮捕後は、もうそんな聖くんには会えないのかもしれない、そう思っていました。
こちらの記事、動画を拝見し、私が大好きな変わらない真っ直ぐな聖くんの姿が伝わり、なんだかライブハウスに通っていたあの頃のわくわく感を久しぶりに感じました。
マイクを握りしめて、"僕にはこれしかないから"と言っていたこと、今でも変わっていないのだと分かり、言葉では表現仕切れないくらい嬉しくて、感極まってしまいました。
関係者の皆様、聖くんを支え、こんな素敵な発信をしてくださり、本当にありがとうございます。
聖くん!聖くんは今までも今もこれからもずっと変わらず私のスーパースターです!
ずっと聖くんの発信するものに支えられ、助けられてきたけれど、今日またあなたに助けられた気がします。
諦めないでくれてありがとう。
またいつか、聖くんの素敵な笑顔が見られる日を、会える日を楽しみにしています。
頑張りすぎないでね!
聖くん大好きだよー!!!
マスコミに作り上げられたキャラを演じている事で、ありのままの自分では認めてもらえないような生きづらさを抱えてしまう。薬物に手を出してしまった事はそれだけが理由ではないだろうが、回復
に向き合おうとしていた聖さんの足を引っ張ったのは明らかにマスコミだと思う。そんなマスコミが伝えない、真の聖さんの姿をアディクションリポートは伝えてくれる。
田中聖さんの「弱味をみせるのは弱点を見せるみたいで、ひけらかすのがすごいダサいと思っていたし、恥ずかしいと思ってた」の言葉に共感しました。私自身もまさに同じようにずっと思ってました。依存症は死につながる病気で、そこからの回復は大変だからこそ、メディアの関係者にも理解してほしい、回復しようとしている方々の応援となるような取り上げ方をしてほしいです。田中聖さんが依存症から回復される事を祈ってますし、応援しています。
内面では自分の弱さや葛藤に向き合い、「Restart」や「Love Yourself Again」というメッセージを通じて多くの人に勇気を与えようとしている姿が印象的です。特に、彼の依存症との闘いや、メディアの誤った報道に対する苦悩が伝わってきました。聖さんの真摯な姿勢と、社会に対するメッセージ性に心を打たれました。アイドルの時は、田中聖さんのことチャラい奴だと思っていましたが、この記事を読んで、すっかり彼のファンになりました。
私は自身・夫ともに依存症ですが、依存症だと気付いて認めるまでは、自分達の事は棚に上げて、薬物使用等で報道される方々へ偏見の目を向けていました。
特に芸能界の方々に対しては「自分の立場を理解していないのか?」と、真実を知りもせずに勝手な憤りを覚えていました。
しかし、実際に自分が自助グループや支援活動に取り組み始め、ギャンブルや薬物の依存症当事者と接する機会が増えると、どなたも驚くほど人柄が良く、積み上げてきた立派なキャリアもあり、「見た目だけではその人の中身は分からない」という、当たり前の事に改めて気付かされました。
みんな、表向きは立派な大人として生活しながら、水面下で自分と戦い続けてしまい、結果として依存症に陥っているのです。
今回AddictionReportが発表した田中聖さんの記事でも、
テレビやスマホの画面越しに彼を見ているだけでは知りえない、田中さんの優しい人柄や、頑張り屋で自らのルールに縛られていた内面、それでも希望を持ち回復しようと頑張っている姿が、忖度なく表されています。
記事を読みながら、また1つ本当の事にきづけたなと、とても嬉しく思いました。
マスコミってある事無い事勝手に記事してその人の人生まで壊してしまう事があると思う。聖もそんな被害者の1人です。このインタビューの記事を見て泣きそうになりました。
聖が戻って来るのを待っています。
先程コメント送信しましたが
治療すれば回復するんですは
自助グループや回復施設で
12ステッププログラムに
取り組めば回復するんですに訂正します。
田中聖さんから出た、ダサい、という言葉は、私のような一般人の感じる「ちょっと恥ずかしいなぁ」程度の感覚じゃないのかもしれない、と思いました。
ダサさが人気や売れ行きにダイレクトに影響し、自分の、ひいてはグループ全体の職業生命に関わることなら、なおのこと人前では“完全体”であろうとしただろうし、弱点を曝け出さず、苦しかったはず。
restart、何度でも、いつからでも、やり直そう、聖さんの勇気をこれからも応援させていただきます。
この記事を見る限り、聖さんの回復の邪魔をしたのはマスコミと警察なんだなーと思いました。
出所したら、今度は誰も邪魔しないで欲しい。
聖さんなら回復できる!
心の内面を正直に話された
田中聖さん、私が思っていた聖さんのイメージではなく
素直で真面目だと思いました
回復に向かおうとする聖さんを、マスコミや週刊誌が
悪意で叩いて、妨げないで下さい
治療すれば回復するんです
チャンスを奪わないで下さい
この記事でYahooニュースとかで読んでいた田中聖さんの記事と180度違った姿がみられました。
弱い自分をさらけ出すのがダサい。とか育ってきた環境で刷り込まれた歪んだ認知。それが間違っていたことに気付けて、回復に、取り組んでいた田中聖さんとても素敵です。
社会全体が回復を、応援するようになってほしい。
素直で正直な心があれば、何度でもやり直せると。
記事を拝見し、私もマスコミに踊らされていたのだなぁと感じました。
今まではマスコミの情報で有名人について知ることがほとんどてしたので、誹謗中傷されご本人は本当に辛く苦しい思いをされたのだと思います。
既に植え付けられた印象を変えていくことはそう簡単ではないと思いますが、色々な方の協力を得ながら頑張って芸能活動を続けていただけたらと思います。応援しています!
田中聖さんにこんな事があったとは知らなかったです。
私だったら心折れるなと思いました。
よく耐えていたなと胸が痛くなります。
私は、弱い自分を見せるって、弱いと思われると攻撃されると思ってしまうので、本当に怖いと感じます。
だから、すごく勇気があるなと思いました。私はアイドルとか全然興味がなく、田中聖さんのことは知りませんでしたし、依存症について全然知らなかった時は、週刊誌に記事や写真が出たらそういう人って思ってしまう。でも、田中紀子さんが書いているように真面目で純粋な人なんだろうなと、是非ご本人に会って、生で歌が聞きたいなと思います。
聖さんが回復に向かおうとされていた事がよく分かりました。
社会全体が回復をサポート出来るように願います。
田中聖さんのインタビューを見、田中紀子さんの記事を読むと、田中聖さんの回復が阻まれた悔しさが込み上げてくる。
しかしインタビューの中でおっしゃっていた、田中聖さんだからこそ、背中を押してあげられる人がたくさんいる。批判をされることも覚悟の上での発信、ほんとに尊い。多くの仲間やファンの方々が応援しているし、今回の発信を見て新たに多くの方たちが応援してくださると思う。
「とても礼儀正しい、気持ちの良い若者ですよ」
という松本先生の表現がすべてなんでしょう。
私たちはメディアに踊らされる。
大事なものを、本質を、見失う。
依存症は命がかかった病気。
私たちが理解して伝えていく必要があります。
時代劇好きな私は、必殺仕事人に出ていた聖さんが好きでした!
私も、田中代表と同じで、ヤンチャキャラとして報道されるのを信じてしまっていて、聖さんがテレビに出なくなったのが、残念でなりませんでした。
でも、本当にお辛かったんですね。よく耐えてきたと思います。
陰ながら応援しています。
田中聖さんが回復を目指す経緯が詳しく書かれていて、読んでいて本当に心を打つ。
社会はダメゼッタイ運動の真っ只中だからこそ、この記事を読んで欲しい。
とても心に響く内容です。
報道されることが真実、と思われてしまうこの世の中、どうしても「悪い人」と批判されてしまう依存症者たちを思うと悲しいです。
彼らだって必死に頑張って生き直そうとしているのに。
ギャンブル依存性という病気を正しく理解すれば、ひどい批判は減るはずなのに、理解しようともせず正論を語っているつもりの人たちにどうかまずは話を聞くことからお願いしたいと思いました。