Addiction Report (アディクションレポート)

「酒がやめられない」編集長と、「やめろと言えない」わたしの雑談トーク(5)なぜ、わたしたちは、こうして「ダラダラ話す」のか。

お酒が与えてくれる楽しさは、他のものでは代替できないのでしょうか。「やめてみた」青山が、「飲まなくてもいける」と感じて継続していることがありました。

「酒がやめられない」編集長と、「やめろと言えない」わたしの雑談トーク(5)なぜ、わたしたちは、こうして「ダラダラ話す」のか。
友達(校正者の牟田都子さん)ともお茶飲みながら、深い話で気づけば3時間とか(青山)

公開日:2024/06/14 02:00

やめたいわけではなく、できれば「適量を健康的に楽しく飲みたい」。

そんな超難問に解決策はあるのか? 

「お酒を減らしたい」Addiction Report編集長・岩永直子と、3年ほど前に「お酒をやめた」ライターの青山ゆみこ。お互いの生活や人生を振り返りながら、切実に「お酒との付きあい方」のヒントを探す雑談トーク連載5回目です。(まとめ:青山ゆみこ)

小さな傷つきに、一人では気づけない

青山 不調になってから3年ほど、友人たちと定期的に継続して話すようになって、初めてわかった一つが、「人は自分が困っていることに、案外気づいていない」ってことだったんです。わかりやすく認識できる問題もあるけれど、そんな問題ごとの前段階の、もっと小さく日常でモヤついてるようなことって、普段はあえて言語化しないから、案外自分では気づけないんだなと。ただ、そのモヤモヤで、自分の心のどこかが傷ついていたりするですよね。

岩永 ほお。

青山 例えば、仕事でなぜか用事をちょこちょこ回されやすいけど、断れなくて反応しちゃうとか。なんとかできるから困りごとではないけれど、積もり積もると結構なストレスになるでしょう。断るって難しいじゃないですか。ひどい人だと思われるんじゃないか、レスポンスが悪くて使えない人間と思われるんじゃないかと、気になっちゃう。そういう、自分で小さくモヤついていることを困りごとだなんて思いもしなかったけど、誰か他の人の言葉から「ああ、自分はやっぱり傷ついてたんだ」と認識できる。そんな機会が多かったんです。たあいもない話を聞いたり、自分も話したりするなかで。

岩永 そういうの、ありますよね。

青山 わたしは過去、飲むと初めてどうでもいいようなことも話せる気がしてて。でも、今はシラフで話ができて、自分のなかに小さな傷つきをため込まずにすむようになったんですよね。

岩永 わたしの場合、仕事に関しては、「我慢することをしない」ってある時から決めて、言いたいことを言うようにしちゃってる。嫌がられるかもしれないけれど、自分の心の中に溜めておくほうが嫌だから、関係性を長続きさせるためにも、我慢しないでペシッて言ってしまう。

青山 岩永さんとやり取りするようになって、さっぱりしてるなって思います。話も早いし。

岩永 単純な人間なんで、胸にイチモツある人とあんまり一緒にやっていきたくないんですね。無神経にズバズバ言うっていうのとはまた違うと思いたいのですが、でも率直に自分の考えを伝えるほうが、信頼関係が高まるだろうって思ってるんです。そういう意味では、今の仕事環境は、組織からも解放されて縛られてる感はないので、ストレスがほんとに少なくなりましたね。わたし、ちょっとADHD的な傾向があるので、フリーランスになってから、マルチタスクの大変さはあるけど。

青山 そうなんですね。環境が変わるって大きいですよね。

岩永 お話聞いてたら思ったんですけど、わたしにも気づいてない、そういう小さななにかがまだあるのかもしれないですね。少し前まで母ががん治療を受けていて、その結果にひやひやしてたんですけど、うまくいったので、家族はみんな健康でほっとしています。ただ、私生活は今激震の時なので、自分としてはそれはどうなのかな。それも話してみないとわからないのかもしれないですね。

受け止めて、返してくれる人と話す

青山 かかりつけ医の新城拓也先生のように、岩永さんにとって信頼できる人と定期的に話をされているし、わたしも岩永さんと話していて、めちゃくちゃ大きく困ってるって印象はあんまりないですね。

岩永 そういう話せる相手がいるって、いいことなんでしょうね。

青山 最近、自分の本の読書会みたいなことをやっていて、本の内容というより、今日岩永さんとわたしがしゃべってるようなことを、延々とみんなで話すっていうだけの場なんです。結論もなくて。こうしてとりとめなく話し続ける、そういう場が必要とされていることを実感してます。ケアまでいかないけど、セラピーみたいな感覚。

岩永 確かに自分でも気づいていない、傷とか痛みとか、困りごとに気づくのは、他者がいないとできない。壁打ちみたいにパッて返ってくるわけじゃなくて、きちんと受け止めて返してくれる人と話す。それをやった方がいいのかなって、今思いました。青山さんとの、この対談というか雑談みたいなものも、そのうちの一つなんだと思う。あんまりそういう場所がないと思うんですよね。でも、このとりとめないやり取りを書いて、みんなに読まれるのかな(笑)。

青山 あはは。確かに。おしゃべり会みたいなゆるい雑談の場で、わたしがいいなと感じているのは、明確にメッセージがないところなんです。今日のこの時間ではっきりとアドバイスを受けたとか、悩んでいたことに結論が出たとか、全くそんなことはない。よくからないけど、人っていろいろあるんだなって思うだけでね。居酒屋で隣の人が取り留めなく話をするのをぼんやり聞いてて、へええ、でもそういえばわたしも似たようなことあるよね、みたいに。居酒屋に行くとき、そこで人の話を聞いて、明日からの人生に生かそう!とかって思わないじゃないですか。結果として、小耳に挟んだやり取りが、なぜか自分にとって悪くはなかったな。そんな感触が自分の中に溜まっていくと、なんだろう、悪くはないという感じなんですね。

岩永 なるほどね。

誰かの声がアディクションのストッパーになるかも

青山 最近ね、ギャンブルとか薬物の依存症の問題を抱える家族の会に参加して感じたんですが、問題解決するアプローチ的なやり取りと、そうではない雑談みたいな時間の両方がありますよね。切実に問題解決の方法を知りたくて来られている人もいて、わりとスパッと答えてくれる人もいる。同時に、雑談みたいな時間もあって。その両方が同じぐらいすごく重要なんだなって肌で感じます。求めてる答えだけを見聞きするわけじゃないし、悲しいと嬉しいとか、感情が大きく揺さぶられるわけでもないけど、いろんな声が感触として自分の中に残る。そういうものって、悪くない方に自分がストッパーをかけてくれるような、気づいてないけどそういうこともあるんじゃないかなって思ってて。岩永さんとのこのおしゃべりも、まあ雑談なんですけど、無駄ではない。こういう時間を切り捨てて、重要と思いこんでることだけやろうとしたら、なんだかしんどくなっちゃって、時になにか強いものに依存せざるを得なくなるんじゃないかと。

岩永 そうですね。わたしは今も目的を持って自分のことをしゃべってもいますけど。でもどこか学生時代のような、本当にダラダラとただおしゃべりをするみたいな時間はほんと減ったと思います。仕事に追われていて、人とゆっくり、何か無目的に喋る時間って、酒の席だけになっちゃってる。だから酒の場を失うのは怖いと思ってたけど、こんなふうに、シラフの場でできるといいなって思いますね。

無駄なようで無駄じゃない時間

岩永 わたしも孤立しやすい環境にいると思いますね。コロナ禍になって、リモートワークができるようになったら、仕事でもなんとなく雑談する時間がなくなってしまった。結構あの時間って大事だったよねってみんな言ってることなんです。わたしの場合、フリーランスになったから、上司や同僚と話すこともほとんどなくなりました。なんとなく話をしたりする中で、お互いを知ったり、さらには自分を知ったりしてたのかもしれない。一人だと、自分の中でぐるぐる回ってるだけで、誰かに話して受け止めてもらえないと、自分の中からスッと抜けていけないですよね。

青山 ポッドキャスト型のラジオが、すごく流行ってるじゃないですか。誰かと雑談したくて、でも電話するのってなんかためらわれるって時に、ラジオを聞くのも雑談まで行く手前の段階の時間なんじゃないかな。居酒屋のカウンターの隣の人たちの席の話を聞いてるみたいな。むしろ、どうでもいい話を聞きたいっていう。

岩永 無駄なようで無駄じゃないような時間っていうのを、効率的に回そうと思って切り捨てちゃってたところがあるかもしれないですね。

青山 そうですね。

岩永 メンタルに、もしかしたら負荷をかけてるのかもしれないって、うっすらと気づき始めてる感じです。青山さんとの会話でもうっすら、なんとなく自分の問題が見えてきてるような気がする。

青山 わたし、3年半ほど前に、軽い躁状態になったことがあったんです。その直前のふた月ほどは、夫が入院して完全に一人の生活になってたんですね。お酒もやめて脳がすっきりしていたところだったので、脳みそを隅々まで使えるような状態で朝から晩までめちゃくちゃ仕事をして、それまではいわばノイズだと思ってた夫の存在もない。お酒でぼんやりもしない。あれでダメになりましたね。脳がもう休めなくなったんじゃないかな。

岩永 無駄な時間って必要なんですね。

手っ取り早さを手放すだらだらトーク

青山 お酒があるなしにかかわらず、人が集まる場所に行ったり、シェフとおしゃべりしたりとか。たまにシェフと喧嘩をしながら猫がじゃれ合って、猫パンチしあったりとか。

バイト終わりに一杯やりながら、シェフやバイト仲間の克馬くんとおしゃべりする時間も楽しい(岩永)

岩永 ひどいんです、あれは本当にね(笑)。

青山 でもそれも結果として、岩永さんの心身の健康に、悪くないように思うんです。だから、「お酒を完全にやめなきゃいけない」とは思えないんですよね。

岩永 自分が思っているよりも量を超えない、過度な飲酒をしなければ、あとはとくに問題ないような気もする。バイト先のレストランという居場所ができたこと。今ならワインスクールももう一つの居場所。そんな場所ができたことは、わたしにとってすごくありがたい。本業の仕事だけだったら、わたしはもっといき詰まっていたような気がする。今、ワインスクールの仲間ともLINEのチャットグループを作っておしゃべりしているんですけど、そうか、そういうのは大事なんだな、ということを改めて気づかされた気がします。酒場以外でも関係性がつくれる可能性を教えてもらったから、それはやってみたいですね。

青山 お酒をやめましょうとは言えないけど、お酒を抜いても人はこんなに楽しいというのは、自信を持って言える気がします。今もそうです。岩永さんとお酒なくてもこうやってしゃべれて、楽しいよねみたいな。

岩永 Addiction Reportのメンバーでも、オンラインの連絡ツールである「Slack」で「雑談」の部屋とかつくったりしてるのも、絶対にそういうのが大事だなと思ったからなんです。

青山 いいですよね。仕事には関係なく、利害関係がなくて、責任感をひと欠片も必要とされていない存在でいられる場での雑談というのは、またさらに楽さが上がるみたいな気もします。

岩永 それ欲しいですね。課題だなあ、それね。

青山 課題までいかないけど、あるといいねって感じかなあ。

岩永 わたしたちのこの雑談も、どうでもいい話も入ってるからいいのかな。

青山 アディクションに走る人って、わたしもそうだけど、息抜きをするのに極端に頼りがちじゃないですか。困ってることも、すぐに解決しようとしてしまう。いや、ほんとだったら解決しなきゃいけないんだけど、あえて解決しない二人のトークを見てもらおうくらいの感じでどうでしょうか。

岩永 手っ取り早さを手放す。すぐ解決しようとしないって感じですよね。読者の皆さんにも、わたしたちのように気を抜いてもらいますかね。初回の5回連続のだらだらしたトークの理由はそれなんですよっていうのが、わかってもらえたらいいなあ。

青山 こういうやり取りも、岩永さんにとって役に立つ時間だし、私にとっても役に立つ時間。じゃあ、読む人にとっても役に立つものになるような気がする。うわ、なんか今わたし、すっごいテキパキまとめちゃった。

岩永 だらだらしてたような気するんだけど、わたしとしては。

青山 いやいや岩永さんは、いつだってテキパキしてますよー。

岩永 青山さん、人間観察甘いんじゃない?(笑)。

(終わり)

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コメント

1ヶ月前
はな

5回連続の意味が分かりました。

私は、岩永さんと青山さんのこの雑談と表現されるお話の中でたくさんの事を感じました。

こんな風に雑談出来る場所と相手と、時間も大切にしたいなぁ。

1ヶ月前
キャサリン

あ~、もう終わっちゃうんだ。

さびしいなあ。

永遠に聴いていたい(読んでいたいか)だらだらトーク。

青山さんがおっしゃる「お酒を抜いても人はこんなに楽しい」

お酒を飲まなくなっての一番の気づきでした。

飲まなくなって振り返ると、そう面白くもない、なんなら実はあんまりおつきあいしたくなかった人との関わりですら、手放すのが寂しかったなあ。

最終回は、今の自分が大切にしていることを、改めてやっぱ大切にしていこうと思える回でした。

楽しかったなあ。

岩永さんの締めの言葉、さすが岩永さん、と笑っちゃいました。

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