Addiction Report (アディクションレポート)

依存症経験者コリン・ファレルが最新作『端くれ賭博人のバラード』について語ること

最新作『端くれ賭博人のバラード』でギャンブルと酒に依存する男性を演じた俳優、コリン・ファレル。彼もまた、若い頃にアルコールと薬物に溺れたことがありました。そんな彼は、最新作について何を語ったのでしょうか?

依存症経験者コリン・ファレルが最新作『端くれ賭博人のバラード』について語ること
ギャンブルとアルコールに依存する主人公を演じた最新作について語るコリン・ファレル(撮影・猿渡由紀)

公開日:2025/10/29 02:01

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 20代前半で「ハリウッド注目の若手」ともてはやされたコリン・ファレルは、以後、インディーズから娯楽超大作まで数々の作品に主演し、すばらしいキャリアを築いてきた。この3年だけを見ても、映画「イニシェリン島の精霊」でオスカー主演男優部門に、配信ドラマ「THE PENGUIN-ザ・ペンギン- 」でプライムタイム・エミーの主演男優部門に候補入りするなど、業界内で実力を認められていることは確実。最近は「ビューティフル・ジャーニー」でマーゴット・ロビーと共演したばかりで、49歳の今まで仕事が途絶えたことのない、真の売れっ子だ。

 しかし、華やかな成功の裏には、暗い過去もある。違法ドラッグとアルコールの依存症と闘った時期があるのだ。自分でも「14歳で酒やドラッグを使うようになった」と告白するファレルは、2005年に回復施設に入所。それから長い間、健康な生活を送ってきたが、2018年、また危険を感じると、自ら進んで再び治療を受けた。

最新作で演じたのはギャンブルと酒に依存した男性

 そんな彼が最新主演作『端くれ賭博人のバラード』で演じるのは、ギャンブルと酒に依存した男性。

「教皇選挙」のエドワード・ベルガーが監督するこの映画で、主人公ドイル(ファレル)はマカオのカジノホテルに長期滞在し、昼夜を問わずギャンブル、高級シャンパン、美食に明け暮れている。だが、ドイルというのは偽名であり、彼の正体は借金から逃げてきた流れ者。手持ちの金も、もはやほとんど残っていない。そこへ謎の女性(ティルダ・スウィントン)が現れ、借りた金をすぐ返さなければ最悪の事態が待っていると告げられる。

Netflix『端くれ賭博人のバラード』より

 ドイルはそこから抜け出せるのか。これまでと違う生き方をすることは可能なのか。

 ロサンゼルスで行われた記者会見で、ファレルは、この映画が何を語るものなのか、自分でもはっきりわかっていないと語った。

「依存症は、もちろんテーマのひとつだと思う。でも、それだけではない。欲とか、疑問の答を間違ったところで探すとか。目に見える物質的なもので自分の価値を証明しようとすることも入るだろう。この映画は、そういったテーマを、オペラのように派手な形で問いかけてくる。それをどう解釈するかは観客次第だ。人によって受け止めるメッセージは、きっと違うはず」

常に緊張感に満ち、衝動に駆られた主人公

 ファレルが見せる逼迫した表情はさすが名優とあらためて感心させられるばかり。「僕自身の過去の問題は十分報道されてきたが、依存症のキャラクターを演じるのに、今も依存症である必要はない」という彼は、あくまで脚本をもとにドイルの感情に入っていったという。

「この映画でドイルは常に緊張感に満ち、衝動に駆られた状態にある。そんなキャラクターを演じる上では、最初から最後までマニアックなエネルギーが必要とされた。撮影が終わる頃には、これまでにないほどかなり疲れ果てていたよ。だが、僕はこの仕事が好きだし、同じゴールを持つ人々クリエイティブな努力をしていく過程は、本当に楽しかった」

ギャンブルに依存したことはないが、 理解できた共通点

 彼自身がギャンブルに依存したことはない。

「20代はじめの若い頃、ラスベガスでギャンブルをしたことはある。ブラックジャックとかね。でも、儲からなかったし、そんなに楽しいとも思わなかった。ギャンブル依存症の危険が本気で僕に迫ってきたことはない。(別の)依存症が僕の体を蝕んだことはあるが、幸いにも銀行口座は無事だった」

Netflix『端くれ賭博人のバラード』より

 しかし、なんとか金を稼がなければと必死になる気持ちは理解できる。

「僕には学歴もなく、学校を卒業せずしてそのまま仕事に入った。ブティック、レストラン、銀行、いろんなところで、いろんなアルバイトをしたよ。そうやって稼いだ金で、夜にビールを飲みに行くくらいはできたし、ドイルのような借金地獄にはまったことはない。だが、彼のような経済的プレッシャーに苦しむ人は、世の中にたくさんいると知っている。それに、そうでない人も、違う形でプレッシャーを感じているものだ。僕自身も、不安、プレッシャーにはたびたび悩まされてきた。たまたま、経済的なプレッシャーではなかったというだけ」

できるのは、その時の自分に正直であることだけ

 いろいろあった中で今のようなキャリアを築けてきたことを、「幸運だ」と受け止めている。「運というものはたしかにあると思った日もあるし、そんなものはないと思った日もある。『そこまで準備をしっかりした上で訪れたチャンスこそ運』だ」という言葉も一理あるだろう」という彼は、結局のところ、先のことなど誰にもわからないのだと考える。

「自分と家族のために一番良い決断をしようとはしているが、自分勝手に、自分の直感に従うこともある。どう決断をするのかについて、絶対的な決め手はない。自分にできるのは、その時の自分に正直であることだけだ。その時は正しいと思ったことが、後になって間違っていたとわかることもある。逆に、その時は間違っていたように見えたことが、実は正しかったということもありえる。人生とは、そんなものなんだ。このゲームをどうプレイすれば良いのかなんて、僕にはまるでわからないよ」

『端くれ賭博人のバラード』は、10月29日、Netflixにて全世界同時配信。

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