繰り返し受けた性的被害 男子高校生はなぜ市販薬のオーバードーズを繰り返すようになったのか?(後編)
過去のいじめによるトラウマを引き金に、市販薬のオーバードーズを繰り返す男子高校生のAさん(18)。性被害も含むいじめとはどのようなものだったのでしょうか?

公開日:2025/11/30 05:00
自殺未遂やオーバードーズ(OD、過量服薬)を繰り返すAさん(18)。
以前通っていた公立高校で、同級生から性的被害を含むいじめを受けたことで、心的外傷後ストレス障害(PTSD)を抱えるようになった。
いじめによるトラウマとODはどのように関係しているのだろうか?
最初のOD「逃げるためもあったかも」
高校1年生の1月から2年生の5月下旬までの間、Aさんは複数の同級生からいじめを受けた。被害の場所はさまざまで、更衣室(約二畳のスペース)や体育館、トイレだ。それをきっかけに処方薬のオーバードーズをするようになった。
「最初のODは、高校2年の1学期でした。内科で処方される胃薬や解熱剤を飲んだのです。クラスマッチがあったのですが、加害者たちが楽しんでいたから、『壊したい』と思いました。『こっちはこんなに苦しいのに…。もし自分が倒れたら中止になるんじゃないか』と思ったのです。鎮痛剤を20錠くらい飲みました。ただ、それだけ飲んでもなんの症状も出ませんでした」
しかし、Aさんは、その後もODを繰り返した。
「性暴力被害の進行形のときに、ODを繰り返しました。誰にも相談できず、性暴力はエスカレートしていきました。辛かったのですが、ODをすると、辛さは軽減しました。と同時に、飲んだらどうなってしまうのか不安もありました。癖になったというか、逃げるためでもあったのかもしれません」
中指を立てて「死ね」と言われたり、女子生徒からもいじめられたり
どんないじめ被害を受けたのだろうか?
「加害者の3人と授業中に目があうだけで中指を立てられて、『死ね』と言われたり、休み時間に突然、『死ね』と言われたりしました。高校2年の4月には、後輩から食べ物を渡され、食べた後に『それ落ちたやつですよ』と言われたり、同級生から『死ね』、『カエルを焼き殺すぞ』などと書かれたインスタのDMが送られたりしました。カエルは僕が飼っているペットです。カエルのことを話したら、突然DMが送られてきた。嫌がらせです」
女子生徒からもいじめを受けた。
「殴られたり、パンチされたりしてきました。もともとは2、3ヶ月に一度程度でしたが、2年生の10月になった途端、毎週のようにされるようになりました。その女子は『ツッコミをいれただけだ』と言っていました」
わいせつ行為などの性的ないじめも
性的ないじめも受けた。
「『下半身を擦り付ける行為』がありました。後ろ向きにさせられ、下半身を擦り付けられました。また、腰を振りながら、加害者は『気持ちいい』『あっ、あぁ〜ん』『イっちゃう』『あ、ああ、でちゃう』などのわいせつな言葉を発していました。下半身を擦り付けた加害者は勃起し、下着も汚れていたのです」
性的ないじめは週に2、3回あり、体育の授業中や、更衣室やトイレでもされた。
「陰茎を握られ、手を上下に動かしながら、『立派だ』、『大きい』などの言葉をかけられました。手をつかまれ、無理やり陰茎を触らされることもありました。また、突然、電気を消して、『しゃぶれよ』と言いながら、陰茎を顔に押し付けられたこともあります。さらに、『おしりや胸を触る行為』もありました。突然、おしりを鷲掴みされ、胸を揉まれました。他にも、トイレの中を覗き見されて、『立派だね』と言われたこともあります。陰茎を見せられたり、マスク越しにキスを強要され、猥褻な動画を無理やり見せられました」
文部科学省の「児童生徒の問題行動・不登校等生と指導上の諸課題に関する調査」によると、いじめの認知件数は増加傾向だが、いじめの態様については「性的ないじめ」の項目はない。ただ、警察庁の「少年非行及び子供の性被害の状況」によると、昨年の「いじめによる事件の罪種別検挙・補導人員」で「不同意性交等」は2件、 4人(うち女子は0人)、「不同意わいせつ」は12件、23人(うち女子は2人)だ。いじめの手法として性的被害を受けるのは、女子よりも男子が多いのだ。
PTSDと診断された後に自殺未遂「私はもう生きることができない」
7月には医療機関から「学校で他生徒による悪質ないじめがトラウマとなって、ストレス障害を呈しており、治療が必要」として、PTSDと診断された。その1ヶ月後の8月にも自殺未遂をした。このときも遺書が残っている。
<お世話になりました。たくさんのありがとうの気持ちを伝えたいと思います。ありがとう。最後に、私がなぜ自殺したかというきちんとした証拠になるように、ここでしっかりと明言しておきます。
同級生3人からのいじめ。いじめを告白した後の先輩、学校の先生、県教育委員会の(担当者)さんからの2次被害のようなものを受け、心身のショックを受けた。
私は、同級生3人、先輩、学校の教職員、県教育委員会の方々を許すことは、命を懸けてできません。残された方々には、たくさんの迷惑をかけてしまい、ごめんなさい。私はもう生きることができないので、その代わりに、頑張って戦って欲しい。よろしくお願いします>

ODによって思い出した性的被害も
25年11月のODの後、Aさんはいじめのことを思い出した。
「忘れていた性被害のことも思い出しました。退院して少し落ち着いたときに、ふと思い出したのです。スマートウォッチやスマートフォンで、性的いじめ中の音声を録音されていました。体育の後の更衣室で着替えている時の出来事でした。嫌な記憶だったので、思い出さないようにしていたのかもしれません。ずっと脳が緊張していた状態だったのですが、久しぶりにちゃんと休めて、それで思い出したのかもしれません。正直、辛いです」
思い出したことを警察に相談した。
「強制的には捜査はできないということで、今回は、記録に留めたくらいでした」(母親)
今後の治療ではオープンダイアローグも
Aさんは、今後、性被害を含めたいじめに対するPTSDの治療をする予定だ。
「(医師だけではなく、看護師などの専門家や家族が対話しながら進める)『オープンダイアローグ』をする医療機関に通うことになります。そこで通常の診療もしてもらい、それとは別にカウンセリングも受け続けるつもりです」
Aさんにとって当初、処方薬や市販薬のODは、過去のいじめの辛さを軽減させるための手段だった。転学してからは、死のうとする行為に変化しつつある。
「転学後は本格的に死ぬための準備を始めていました。しかし、今は薬を飲むのが怖いので、市販薬は買わないようにしている」とAさん。
治療によってそんな自分を消したい状況から抜け出そうともがいている最中だ。
(終わり)
関連記事
コメント
どうか生きて生き抜いて下さい。
この男子高校生が受けたいじめはれっきとした犯罪です。
警察が動いて事件として取り上げて下さい。彼が命をかけて話してくれたことをどうか無駄にしないで下さい。
日本はいじめを犯罪としてきちんと対処して下さい。そうじゃないと、このような被害者が後を経ちません。
彼が生きて彼を心から愛してくれる人に出会えるように祈っています。
こんなにも過酷で苦しい思いを長い間してきて、薬にしか助けを求められなかった、学校の体勢、それを管轄する国に憤りを感じます。このような被害者が出なくなることを望みます。そのために私ができることを考えていきたいと思いました。また、被害を受けたAさんが少しでも生きやすく回復されますようにと願います。
ほんとうは友人と楽しく過ごすはずだった高校生活で毎日恐怖に襲われるなんて、どれ程辛かっただろうかと胸が苦しくなりました。
市販薬が次第に生きるために必要になっていった事が伝わってきました。加害者がきちんと責任を取るとともに、苦しむ彼の胸の内が少しでもかるくなってほしいと願います。
男子の性被害が多いのに驚きました。学校が辛い場所であることは本当に考えなければいけないことです。相談できる場所が必要です。
