Addiction Report (アディクションレポート)

いじめによるトラウマを抱えて 男子高校生はなぜ市販薬のオーバードーズを繰り返すようになったのか?(前編)

通信制高校に通っている北関東に住む男子高校生、Aさん(18)は市販薬のオーバードーズで一時、意識不明に陥りました。背景には、前に通っていた学校でのいじめによるトラウマがありました。

いじめによるトラウマを抱えて 男子高校生はなぜ市販薬のオーバードーズを繰り返すようになったのか?(前編)
市販薬のODで救急搬送されたAさん(右)と母親

公開日:2025/11/29 05:00

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北関東に住む男子高校生Aさん(18は自殺未遂やオーバードーズ(OD、過量服薬)を繰り返している。

最近も市販薬のODで救急搬送され、人工呼吸器をつけなければならない危険な状況にまで陥った。

背景にあるのは、以前通っていた公立高校(全日制)で、同級生から性的被害を含むいじめに遭ったこと。学校対応の問題もあってトラウマが残り、その影響が今も続く。

 鎮痛剤をオーバードーズで救急搬送。一命を取り留める

Aさんは2025年11月7日夜、自宅で市販の鎮痛剤を252錠一気に飲んだ。吐き気が止まらず、病院に救急搬送。一時は意識不明だったが、一命をとりとめた。

 

「飲んだところまでは記憶に残っているが、病院での生活はどんなものだったのかはほとんど覚えていない。一部覚えているのは、縛られていたようで寝返りができなかったこと。それで看護師さんに怒っていたようだ。今、生きてて嬉しいという気持ちはない」

 

鎮痛剤は前日までに複数のドラッグストアで購入した。登録販売者の説明は一軒目の薬局ではあったが、2軒目の薬局ではなかった。

Aさんが購入した「第2類医薬品」は薬剤師による情報提供は努力義務で、必ずしも薬剤師の関わりを必要としない。

 

「一軒目の薬局は一箱だけ買い、登録販売者による説明がありました。二軒目は試しに二箱買おうと思いました。理由を聞かれるんじゃないかと思いましたが、レジスタッフは何も言いませんでした」

 

遺書に込めた思い「人の人生を変えるとどうなるか自覚して」

Aさんは、「死ぬ気で飲んだ」と話す。つまり自殺しようとした。飲む前後に遺書も書いていた。

 

〈(加害者5人の名前)ちゃんと認めてよ。けいさつもたいほして。R5−6(年)度の私に関わった教員たち全員やめて下さい。私からの最後のお願いです。これを読まれているころは私は死んでいるでしょう。人の人生を変えるとどうなるか自覚して。

 (中略)

もう眠くなってきましたね。My lifeはもうそろそろ終了ですね。悔しいですね。でも、生きている方がもっと悔しいです。私の人生を返せよ。夢を返せよ。今まで関わってくれた方たちありがとう》

 Aさんは転学前の高校でいじめを受けていた。そのときの悔しさがODに駆り立てた。 

遺書の文字が涙でにじんでいる(提供:Aさん)

「市販薬のほかに睡眠薬も飲んだので、眠くなりました。遺書は赤い水性ペンでA5コピー用紙に記しました。悔しい気持ちと血のイメージで書いたんです。泣きがならだったので、涙で濡れて、文字がにじみました」

 

母親はこの日、午後6時ごろに帰宅した。Aさんの部屋をのぞくと布団で寝ていていたが声をかけた。そこでオーバードーズしたという話を聞き、すぐに救急相談センター(#7119)に電話した。すると、「受け応えができている」として、近くの病院を受診するように案内された。しかし、対応できる先生がいないことを理由に、その病院では診察を断られた。

そして、Aさんが、「アイスとコーラを買ってきてほしいと」言うので、買い物に出かけた。その後、急に吐き出したためため、母親が119番に電話し、緊急搬送された。

 

 「10月にもODをしていたので、すぐに病院が決まりました。その時と同じ病院に運ばれたのです」(母親)

後遺症で筋肉が破壊。一時歩行困難

搬送先の医師からは「命に関わる可能性がある」と告げられた。母親は「頭が真っ白になりました。死んじゃうんじゃないかと思いました」と振り返る。

一時は人工呼吸器を装着しなければならないほどだった。翌日には外すことができたが、筋肉が破壊され、一時は歩くこともできなかった。しばらくは、車椅子生活だった。今は血液検査の数値も正常に戻ったが、左足のぎこちなさは残る。

 

「家でもフラフラしている状態で、あちこちぶつかってしまう感じでした。あとで保健所に聞くと、ODした市販薬は薬剤師や登録販売者の説明なしで買えるし、個数制限もありません。でも、一箱に84錠入っている薬を二箱買っている時点で、おかしいと思わないのですかね…...」

そう母親は悔しがる。

 

AさんはこれまでもODを30〜50回ほど繰り返してきた。

同級生から性的被害を含むいじめを受けたことが、その行動の背景にある。このときの遺書には詳細は書かれていないが、加害者の名前が書かれていた。

そして、この時期にODをしたことにも理由があった。

 

 「前の高校から転学した時期でした。そして、文化祭が開かれる時期でもあります。『文化祭、好きだったので、いいな。いじめ加害者たちは参加できていいな』と考えていたら、どんどん辛くなってきて、フラッシュバックもありました。『どうしてこうなった?』と自分を責めたり、『自分が悪いんじゃないか』とも考えたりしました。そういう考えが渦巻いて、ODをしてしまったんです。自己否定の気持ちでした。これで『死ねるだろう』と思いました」

(続く)

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