「大阪I Rの運営企業は犯罪収益を取り込んでいる疑いがあり不適格」 ギャンブル依存症問題を考える会、国に実施協定の認定取り消しを求めて提訴
大阪IRの運営企業がオンラインカジノで得た犯罪収益を取り込んでいる疑いがあるとして、ギャンブル依存症問題を考える会と大阪市民11人は、実施協定の認定取り消しを求める訴訟を国に対して起こしました。
公開日:2024/03/19 06:44
大阪・夢洲地区のIR(※統合型リゾート)整備計画をめぐり、運営主体となる企業が犯罪収益を取り込んでいる疑いがあるとして、公益社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」とギャンブル依存症者の家族である大阪市民11人は3月19日、国を相手取り、実施協定の認定取り消しを求める訴えを東京地裁に起こした。
同会らは昨年7月、国土交通相に認定取り消しと計画の執行停止を申し立てていたが、国交省から昨年10月、「申立人はIR法の保護を受ける当事者適格がない」として却下されていた。
同会の田中紀子代表は、「まずは犯罪収益がどうなったのかを明らかにしてほしい。ギャンブル依存症の家族がこれ以上危険に晒されることのないよう、きちんと対処できる業者でなければ認可されるべきではない」と訴えている。
I R運営会社は、違法なオンラインカジノ会社を買収
同会が問題としているのは、IRの運営主体「株式会社大阪IR」の大株主(40%)である合同会社「日本MGMリゾーツ」と、その親会社の米国「MGMリゾーツ・インターナショナル(以下インターナショナル社)」。
インターナショナル社は2022年9月頃、スウェーデンを拠点とするオンラインカジノ運営会社「レオベガス社」を買収した。
そのレオベガス社は、2018年10月頃から、日本では違法とされるオンラインカジノ「ロイヤルパンダ」「レオベガス」を日本人をターゲットに運営し、3年間で約5601万ドルの営業利益を得ていた。ちなみに違法なオンラインカジノで得たこうした利益は、組織犯罪処罰法で「犯罪収益」に位置付けられている。
レオベガス社はその後、2022年8月に日本の市場から撤退し、オンラインカジノ事業を別の企業に譲渡することを表明。その直後に、インターナショナル社に買収された。
同会らは、レオベガス社が違法なオンラインカジノ運営で得た犯罪収益を、MGMリゾーツが買収によって内部に取り込んだ疑いがあり、それがさらに大阪のIR運営に使われるなら「マネーロンダリング(資金洗浄)※に相当する」と主張。
※犯罪などによって得た不正な利益を、出所をわからなくするために転々と動かし、綺麗な資金であるかのように装うこと。
これが事実なら、犯罪収益を受け取ることを禁じる組織犯罪処罰法に違反するためIR運営社としては不適格だとして、MGM社がレオベガス社の犯罪収益を内部に取り込んでいないことが確認されるまで、この実施協定の認定は取り消すべきだと訴えている。
同会は昨年7月、「日本MGMリゾーツ」と、親会社の米国「MGMリゾーツ・インターナショナル」に資金の流れを質す公開質問状を出しているが、回答は返ってきていない。
田中代表は「何か懸念があった時にきちんと情報公開しないような企業は、これだけ大きな事業に関わるべきではない。企業の姿勢としても信頼できないし、我々はそれを信頼してカジノをオープンさせることはできない」と批判した。
犯罪収益を取り込んだ企業にギャンブル依存症の防止ができるのか?
代理人の中島俊明弁護士は「違法と認識されているオンラインカジノの収益を取り込んだMGM社が、大阪IR社の主要株主に位置付けられることはまずコンプライアンス(法令遵守)の点で問題がある。大阪IR社がカジノの免許を受けることが前提となっている計画だが、主要株主として不適格ではないか」と提訴の理由を説明。
「ギャンブル依存症の防止に取り組むことが大阪IR社に義務付けられているが、カジノに伴う有害な影響を排除するための適切な措置ができるのか。そもそも違法な収益を取り込んでいるところに企業として落ち度がある。オンラインカジノはギャンブル依存症を加速させるものであり、その収益を取り込んでいる以上、説得力を持ってギャンブル依存症対策に取り組むことができない。不適格であるし、主要株主になることは問題であることから取り消されるべきだと考えている」と主張した。
ギャンブル依存症者の家族である大阪市民が訴える「当事者適格性」については、中島弁護士は「ギャンブル依存症に関していえば、生命、身体、財産権に直結する。犯罪収益を取り込んだ企業が、犯罪の防止や治安維持に配慮したものを作ることができるのか疑問がある」として、訴える資格があると説明した。
同会政策アドバイザリーの宇佐美典也氏も「運営事業者はカジノ施設の設置や運営に伴う有害な影響を排除を実現することが認可の要件になっている。周辺住民に対して有害な影響を排除できるようなコンプライアンスを守る企業でなければ、周辺住民の安全が脅かされる危険がある」と指摘した。
さらに、中島弁護士は「国はオンラインカジノの決済代行業者を逮捕するなど、オンカジに対して違法だというスタンスを打ち出しているが、大阪IRに対してはだんまりを決め込んでいる。ダブルスタンダードだ。オンラインカジノが違法なら、大阪IRにその収益を取り込むべきではない。違法と言っているならそれに対して正しいという評価を与えるようなことをしてほしくない」と語った。
最後に田中代表はこう危機感を訴えた。
「違法なオンラインカジノで得た収益を取り込んだ企業に国がお墨付きを与え、それがうやむやにされてしまえば、これから先もずっとこのマネーロンダリングはMGM社に綺麗なお金として入ってしまう。オンラインカジノの被害は甚大。私たちのもとに相談に来る人はほとんどがオンラインカジノに関してであり、このまま看過するわけにはいかない。これを許してしまったら、次々に同じビジネスモデルが日本に参入されてしまう」
観光庁参事官室の担当者は「現時点では訴状が届いていないので、コメントは差し控えさせていただきたい。届き次第、内容を確認して対処する」とコメントしている。
コメント
目先の収益ばかり見て、日本の政治家は本当に日本の未来を、今の現実を見ているのか‼️
金、金、金の政治家に嫌気がさします
公開質問状に対してなにも回答がないこと事態おかしい。
ただでさえ大阪IRは公費負担問題、賃料鑑定の度重なるミス、用地整備など、あきらかにおかしなことが多い。依存症対策に力を入れる、といいながらいろいろな会議を立ち上げ外に向けての「やってます」アピールに過ぎず、結局のところ依存症問題に奔走しているのは民間団体だ。
医療の受け入れ態勢もままならない現状で、オンラインカジノによる被害者が激増している。
違法薬物対策では、資金が反社会的組織に流れると厳罰化の要因にしているのに、IRに対してはそれを容認しているのは、ダブルスタンダードというよりトリプルスタンダードと言えるのではないか。
国の姿勢が問われたのだから、真摯にこたえてほしい。