「犯罪に巻き込まれ、自死する若者も」 違法なオンラインカジノの規制、国会議員に訴える
違法なのに事実上、野放し状態になっている「オンラインカジノ」について、「ギャンブル依存症問題を考える会」の田中紀子代表が公明党の内閣部会で早急な対策を訴えました。
公開日:2024/02/15 02:02
日本では違法ながら、野放し状態になっているオンラインカジノについて、公益社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」の田中紀子代表が2月9日、公明党の内閣部会で早急な規制を要望した。
オンラインカジノをめぐっては、コロナ禍で利用者が急増。特に若者の中での広がりが目立ち、闇金業者に追い込まれて将来を棒にふる例が後を絶たない。
田中代表は「この問題で毎年数件の自死報告があるのですが、今年は既に6件の報告があり、しかも若い人ばかり。先日は23歳の大学生が亡くなった報告が上がってきており、この問題に早急に取り組まないと日本の若者たちの未来が潰れていく」と危機感を訴えた。
またオンラインカジノが違法であることさえわかっていない若者が多いことが大学の調査で明らかになっていることを挙げ、こうした課題についての政治の協力を呼びかけた。(編集長・岩永直子)
規制が甘い日本 莫大な報酬に対し、わずかな罰金
田中代表はまず、コロナ禍で日本からのオンラインカジノへのアクセスが100倍になったという新聞報道があり、依存症になっている人が急増していると紹介。
海外では近年、オンラインカジノの取り締まりが厳しくなっており、中には日本人が海外にサーバーを置いて経営しているものや日本人の客がメインであるカジノもあることがわかっている。
一方、日本でも千葉県警が2023年9月に、自身のYouTube番組でオンラインカジノを紹介していたYouTuberを常習賭博の疑いで逮捕した事件があった。しかし、広く宣伝したことについては取り締まれず、罰金50万円で終わっていたことを明らかにした。
「このYouTuberがカジノからもらっていた報酬は3000万円で、罰金50万円となってもたいしたことがない。逮捕された後、オンラインカジノの広告をやっているYouTuberやアフィリエーターの動きがいったん静かになったが、罰金50万円の判決が出た後、またCM合戦が台頭してきた。つまり(日本の規制が)大したことがないことがわかったからです」
その上で、違法なオンラインカジノが別会社で作っている同じ名前の無料版カジノを隠れ蓑に広告を流している問題、海外にサーバーを置いているだけで実質日本人が経営している疑い、進化するオンラインでの犯罪に刑法などが追いついていない問題を挙げた。
取り締まるためにどんな法律が必要?
田中代表は、立法府としての国会への要望として、「海外のサイトでも日本人向けの日本語版サイトを取り締まれるようにすること」「違法オンラインカジノの広告を禁止すること」「違法オンラインカジノは無料版であっても広告を禁止すること」を求めた。
インターネットが普及していなかった時代の刑法の取り締まり規定は限られており、時代に即していないと指摘した。
有名サッカー選手、Jリーグが広告塔に
また、田中代表は、オンラインカジノの広告に現在、有名サッカー選手が登場しており、若者のオンラインカジノへのハードルを下げてしまっている問題も説明した。
「有名選手が無料版のオンラインカジノのアンバサダー(宣伝大使)となっている。まともな芸能事務所なら、オンラインカジノのアンバサダーになるのはリスキーなので控えるのですが、今でもサッカー選手はなっている」
「私たちの団体にも好きな選手が宣伝していたので興味を持ってハマってしまったという声が届いています。また『有名選手が宣伝しているから違法だとは思わなかった』という意見が多い」
選手たちは無料版の広告に出演しているので問題ないと考えているのではないかと推測されるが、宣伝しているオンラインカジノの名前で検索すると、トップ画面に出てくる多くは有料版の違法オンラインカジノだ。
さらに、無料のオンラインカジノを経営しながら実質的には違法なオンラインカジノに誘導している企業を公式スポンサーにするJリーグも出てきている現状を明らかにした。
選手のユニフォームにもどうしたオンラインカジノ企業のロゴがプリントされ、休憩時間にはオンラインカジノのデジタル広告がサッカー場に流れる。この企業が、試合に親子の招待までしている。
オンラインカジノの相談急増
こうした宣伝の強まりを受け、ギャンブル依存症問題を考える会にも、オンラインカジノの相談が急増している。
対面での相談だけでも、全相談件数の13.1%になっており、田中代表は「今年度は2割を超えると思う」と報告。
「オンラインカジノはコロナ以降に急増し、借金額も大きい。オンラインカジノを含まないで、借金額は平均約750万円ですが、オンラインカジノを含めるとこれが880万円に上がってしまう」と、借金額の多さでも抜きん出ていることを伝えた。
犯罪に巻き込まれた相談が増加
さらに問題なのは、オンラインカジノで短期間に莫大な額の借金を抱えた人は、犯罪に巻き込まれるケースが後を絶たないことだ。同会の相談会でも17.7%は犯罪絡みの相談になっている。
「中野の強盗致傷事件や狛江の強盗致傷事件でも、実行犯のうちの2人はギャンブルで借金を抱え、うち一人は大学生でした。若者たちは稼いでいるお金が少ないので消費者金融で借りられる額が少なく、犯罪に結びついたり、闇金で借りてしまったりする」
最近、増えているのは「オレオレ詐欺の手先をしてしまった」という相談や、「闇金で借りた」という相談だ。
今はX(旧Twitter)を通して闇金から借りることが多く、そこからオレオレ詐欺などの闇バイトに誘導されることも増えている。
「闇金で借りて、返済ができなくなって追い込まれ、闇バイトをするしかなくなる状況です。『受け子(オレオレ詐欺でお金を受け取る役)』や『出し子(オレオレ詐欺でお金を引き出す役)』に誘われたり、銀行口座や携帯電話を売り飛ばしてしまったりする」
「それをやると、銀行口座が凍結され、将来、まともなところで働けなくなるのです。その人たちはその後、銀行口座を開設できなくなるので、手渡しで給料をもらうしかなくなります。でも切羽詰まった若者はそれをやってしまうのです」
闇金の追い込みでは自宅に押しかけて暴力を振るったり、家族の職場の近くに押しかけてきたりする凶悪化が進んでいるが、警察に相談しても「民事不介入」でまともに相手にされないことも多いという。
進む若年化
同会への相談は4割が20代と、若年化が進んでいる。
「大学生でギャンブル依存症になると、中退するのが3割。そこから派遣社員や非正規雇用まっしぐらです。社会的経験を積まないまま依存症になるので、スキルもないし、賃金も低い仕事にしかつけず、再起が難しい。犯罪や自殺にも繋がりやすく、何千万という額を横領することもあって、会社や家族にも迷惑をかける。スマホ一台でギャンブルができるため、切り離しにくい問題があります」
相談に来た人の中では1日で7000万円を使った事例もあった。
田中代表は、「若者の未来を守るためにも、早急に対策が必要です」と訴えた。
国会議員ら「早く対応しないと」「継続的に取り組む」
出席した議員からは無料版を隠れ蓑にした違法な有料オンラインカジノの実態や、カジノを合法としている国にサーバーを置いて日本の取り締まりを逃れている実態について、細かい質問が投げかけられた。
中学教師の経験もある山崎正恭・衆院議員は「オンラインカジノが恐ろしいのは、一気に借金が増えて、一気に通帳などが取られて、普通の子供達が一気に再起不能になる。早く対応しないと、若者たちが巻き込まれていく」と危機感を露わにした。
またこの勉強会を企画した依存症問題に関心が高い庄子賢一・衆院議員は、「オンラインカジノの現状は非常に問題があると受け止めている。この問題には継続的に取り組んで、必要な法規制も検討していきたい」と話していた。
コメント
「早く対応しないと」「継続的に取り組む」
日本は早急に対策をしなければ、大変なことになってしまいます。
対策をしているフリでその場を繕っていては、若者の未来も日本の未来もありません。
多くの人にこの危機が伝わりますように…
ギャンブル依存症で苦しんだり自死している事例があるのに、どうしてオンラインカジノの規制や、依存症にならないための啓発、依存症になってしまった人への回復の援助に力を入れてくれないのか。日本はどうなってしまうのか。
私たちの訴えに耳を傾けて欲しい
わたしの息子も、大学生の時にオンラインカジノにハマり、多額の借金。何度も犯罪を犯し、結局大学は中退。息子の人生は狂ってしまいました。
野放し状態のオンラインカジノの取り締まり、規制を早急に。
田中紀子氏による勉強会を開催された国会議員の先生方のお力で、法律改正をお願いします。
うちも息子がギャンブル依存症でオンラインカジノにはまりかなりの借金を闇金から借りて大変な思いをしました
取り締まりを強化してほしい
田中代表のこのような訴えを真摯に受け止めて検討してほしいです