I'm an ADDICTのモデルを体験して考えた摂食障害のこと
依存症啓発キャンペーン「I'm an ADDICT」のアパレルブランド。そのモデルを体験すると、自分のアディクション問題を改めて考えるきっかけとなった。

公開日:2025/02/14 02:00
昨年末、Hangover Plate代表の山崎瑠美さんより「新プロジェクトで依存症啓発のアパレルブランドを作るので、そのモデルをやりませんか?」とお声がけいただいた。摂食障害の過食により拒食時より18kgも太った私なんかがモデルなんて務まるのだろうかという不安を抱えつつも2つ返事で承諾した。
思えば痩せていた頃は写真を撮られるのが好きで、かけだしカメラマンさんのポートレートの練習台になったり、お出かけスポットの取材ではモデルも兼任していた。カリカリに痩せて綺麗な自分の姿を見ることで安心感を得ていた。
しかし拒食の反動により過食で太っていくにつれ、写真を撮られることやぶくぶくに肥えた自分の写真を見るのが嫌になっていき、今まで着ていたXSやSサイズの服が入らなくなったことからオシャレをすることすら億劫になっていった。
そんな心配をよそに撮影日はどんどん迫ってきて、1月初旬に撮影が行われた。冷たい冬の雨が降る中スタジオへ向かうと、AddictionReportの編集長・岩永直子さんをはじめ「I'm an ADDICT」のクリエイティブディレクターの橋島康祐さん、プロジェクトマネージャーの山崎瑠美さん、カメラマンの後藤勝さん、スタッフさんらが温かく迎えてくれた。
事前にサンプル画像は確認していたのでスポーティーなブランドなのかなと思っていたのだが、スタジオに揃えられた「I'M AN ADDICT」の丸文字のロゴが入ったTシャツやパーカー、ニット帽やハットなどはデニムに合わせてシンプルにも着られるし、最近流行りのオーバーサイズのパンツやジャージに合わせても着られる、私好みのデザインだった。
さっそく白のTシャツを着てみる。サイズは普段着ているオーバーサイズでLを選んだ。白は膨張色で太って見えるのでプライベートでは着ない。デブに写るのではないだろうかと思いながらも、眩しい照明で照らされた白バックの前に立った。
カメラマンの後藤さんは次々とシャッターを切っていく。シャッター音と共にポーズを切り替える。胸のブランドのロゴが見えるよう、できるだけ開けたポーズを取った。時折、橋島さんや岩永さんからポーズのリクエストが飛んでくるので、戸惑いながらもそのポーズをとってみる。岩永さんから「椅子を使って石原裕次郎ポーズで!」と言われた際は、石原裕次郎のポーズって何!? と訳がわからず「世代が違うよ!」と現場に楽しげな笑い声が響いた。

Tシャツの他にもハットやニット帽、パーカーの撮影も終わり、最後はインタビュー動画の撮影だった。「自然体で語ってほしい」と橋島さんに言われたのに緊張で堅苦しい口調になってしまい撮り直した。自分の中で摂食障害がどんな存在だったのかを拙い言葉でなんとか語った。
撮影を終え、I'm an ADDICTは2月2日のAdiction Report創刊1周年記念フォーラムにてお披露目された。当日、体調が万全ではなく会場に足を運べなかったものの、イベントレポート記事やアップされた動画でどんな写真・動画に仕上がったのかを確認できた。特にパーカーを着た写真は気に入ったので橋島さんや後藤さんの許可を取ってSNSのアイコン画像にも使用した。
この撮影により、私にとっての摂食障害とは何なのか、改めて考えさせられた。I'm an ADDICTのモデル写真の私は明らかに太っているが、SNSのアイコン画像にしてしまうほど気に入っている。太っている姿の自分の写真を見たくなかったはずなのに気に入っているとは矛盾しているように思える。
しかし、摂食障害は認知の歪みの問題であるため、本来は太っていないのに太っているように錯覚する病である。今の私の体重はBMIにするとやや肥満寄りの標準だ。とすると、私は小太り気味の自分の体型を受け入れ始め、回復に向かっている段階だとも考えられる。それはきっとこのブランドのデザインと後藤さんの撮影の力のおかげでもある。小太りであってもオシャレをするのをあきらめる必要はないと思い始めているのだ。

動画では中村うさぎさんや高知東生さん、田代まさしさん、コザック前田さん・真奈美さん夫妻といった著名な依存症の方の話も収められていた。依存症というと暗いイメージを持たれがちだが、モデルを務めた他の方からは前向きで明るい言葉も語られていた。
中村うさぎさんは買い物依存症・整形依存症・ホスト依存症、高知東生さんと田代まさしさんは薬物依存症、コザック前田さんはアルコール依存症と睡眠薬依存症だった。それぞれ苦しみがあり、それぞれ回復の道のりがある。
今回、I'm an ADDICTのモデルを体験したことは私にとって安心感を得ることに繋がった。拒食時代は体重計の数字と鏡に映ったガリガリのボディラインがアイデンティティーとなって安心感を得ていたが、今は今の自分の体型を受け入れた上で自分のモデル写真を眺めることができるようになった。
今後は、もっと思う存分オシャレや写真を撮られることを楽しめるようになりたい。
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コメント
私も10代後半の時摂食障害になりました。体重40キロ前半になり、それでも摂食障害をしていた。
1ヶ月ほど入院し退院。
その後は過食症になり、今の夫と出会い救われました。
でも40代後半まではカロリー計算をする生活。食べたら太る の意識がなくならなかった。
今はそれほど気にせず美味しく食べれるようになりました。
どうしてそうなったかは今も不明。
ただ何かしら,生きづらさがありそうなったのだと思う。
今は生きやすくなる様に回復の道を探索中です。