Addiction Report (アディクションレポート)

マシュー・ペリーにドラッグを売ったディーラーに、より厳しい判決が出た理由

ケタミンの過剰摂取で亡くなった「フレンズ」の人気俳優マシュー・ペリーにケタミンを売ったドラッグ・ディーラー、ジャスヴィーン・サンガに懲役15年の判決が下されました。これまでで最も厳しい刑期がついたのはなぜなのでしょうか?

マシュー・ペリーにドラッグを売ったディーラーに、より厳しい判決が出た理由
懲役15年の判決が下されたジャスヴィーン・サンガ(本人のInstagramより)

公開日:2026/04/11 03:04

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2023年10月にケタミンの過剰摂取で亡くなった「フレンズ」の人気俳優マシュー・ペリーに違法でケタミンを売ったドラッグディーラー、ジャスヴィーン・サンガに、懲役15年の判決が下された。

この事件ではひと足先に、サルバドール・プラセンシアとマーク・シャーヴェスという医師に実刑判決が出ている。懲役は、プラセンシアが30ヶ月、シャーヴェスが8ヶ月(シャーヴェスの場合は刑務所ではなく自宅での監禁)。

3人とも有罪を認めて司法取引に応じたため、言い渡された懲役は、それぞれの罪に対する最長の刑期よりも短い。だとしても、サンガに与えられた刑期が、これまでで一番厳しいのは明白だ。

ペリーを死に追いやった薬の売り主がサンガ

理由のひとつは、ペリーを死に追いやったケタミンが、サンガによって提供されたことである。

ペリーが10代の頃からさまざまな依存症に悩まされてきたのは、広く知られた事実。映画の撮影中に回復施設に入所して製作が中断されたこともあるし、本人が正直に自分の問題について語ったこともある。

ケタミンの過剰摂取で亡くなったマシュー・ペリー(本人のInstagramより)

ペリーはメンタルヘルスのためにケタミン療法を受け、次第に依存するようになった。合法のクリニックから増量を断られた結果、たどりついたのがプラセンシアだ。プラセンシアは、ブツを手に入れるべく、長年の友人で過去にケタミン専門クリニックを経営していたシャーヴェスに連絡。シャーヴェスは過去の患者の名前を使った偽の処方箋でケタミンを仕入れ、プラセンシア経由でペリーに売りつけ、ふたりはボロ儲けをした。

しかし、依存が悪化していくうちにペリーは別の供給先を必要とするようになる。そこで出てきたのが、サンガである。

裏社会で「ケタミンの女王」として知られるサンガとペリーをつなげたのは、ペリーの友人エリック・フレミング。フレミングはペリーから手数料を取って、ペリーの住み込みのアシスタント、ケネス・イワマサに届けた。短期間にサンガが売りつけたのは、およそ50瓶、合計1万1000ドル。ペリーが死亡した日に摂取したケタミンも、ここに含まれていた。

事件後も見られない反省

サンガに反省が見られないのも、厳しい判決が出たもうひとつの理由だ。

サンガは、2019年にも、当時30代前半だった一般人男性にケタミンを売りつけ、過剰摂取で死亡させた。それでも気にせずに商売を続けたのだ。ペリーの件での判決が出る裁判にはその男性の遺族も出廷し、「私の家族が死んでも、あなたは(ドラッグを売るのを)やめませんでしたね。逮捕されて、やっとやめたのです」とサンガを非難している。

ペリーの死を知った後のサンガの行動も、反省とはほど遠い。彼女はすぐさまフレミングに連絡し、履歴を削除するなど、証拠の隠滅を図っているのである。

ペリーの死後、日本でのバカンスの様子をInstagramに投稿していた(サンガのInstagramより)

その前から予定していた日本へのバカンスも中止しなかったどころか、超一流ホテル、マンダリンオリエンタルで優雅に過ごす様子などを自慢げにソーシャルメディアに投稿。よくもこんなに平気で楽しめるものだと絶句させられる。警察の捜査が及んでもしばらく罪を認めず、司法取引に応じたのも、ほかの被告より後だった。逮捕された後も、この事件についての本を売り込もうと刑務所内から電話をしていたことがわかっている。

裕福な家庭に生まれ、贅沢のためにドラッグを販売

「被告は、自分のやったことの重さをまだ認識していません。それどころか、将来の収益のためにそれを利用しようとしています」という判事は、サンガの目的が派手な生活をすることにあったとも指摘。不幸な環境に生まれ、ドラッグ売買の道に入る人は少なくないが、ロンドンのファッション業界で富を築いた祖父母を持ち、母の再婚とともにロサンゼルス郊外の高級住宅街カラバサスに引っ越してきたサンガのバックグラウンドは、まるで違う。

「恵まれたバックグラウンドを良いことのために使おうとせず、欲、贅沢のためにドラッグを売ることを選んだのです」と、判事は述べる。

サンガの弁護士マーク・ゲラゴスは、「ペリー氏の行動を止められる人はいませんでした。依存とはそういうものなのです」と、サンガと知り合わなかったにしても、ペリーは誰かから求めるものを入手していたはずだと主張した。それは間違っていないかもしれないが、そういう問題ではない。サンガは、またプラセンシアとシャーヴェスも、大金持ちが依存症であることにつけこみ、その人の命を犠牲にして私服を肥やしたのだ。

ゲラゴスは、これまでにもマスコミに注目される大事件を担当してきた有名弁護士。たとえば、2002年に万引き事件を起こしたウィノナ・ライダーや、少年に性的虐待を与えた容疑をかけられたマイケル・ジャクソンなどの弁護も務めた。どう見ても非があるセレブをかばった人に弁護されるのはつまりそういうことかとも思わせるし、そのレベルの弁護士を雇うお金があるということでもある。

判決が残っているのは二人

この後判決が残っているのは、フレミングとイワマサ。判事はサンガのことを「今回関与した5人の中で最も悪質」と呼んでおり、サンガ以上に厳しい判決がこのふたりに下ることはないと思われる。しかしフレミングは、「極上の」ケタミンを持つサンガを紹介した手数料を、その都度受け取っていた。つまり、彼もまたペリーの依存症を利用して金儲けをしていたということだ。

一方でイワマサは状況がちょっと違う。

住み込みでペリーが必要とすることをなんでも承っていた彼は、ケタミンを確保しろ、注射しろと言われれば、それも任務のうちと思い、断れなかったのか。いや、正しいことをやるなら、断ることはできただろう。だが、その結果、美味しい仕事を失うことが怖かったのか。もちろん、誰だって仕事は失いたくない。裁判で、イワマサはそこをどのように説明するのだろうか。

この裁判は、依存症をめぐる奥深い問題に多少なりとも焦点を当てたのではと思われる。この悲劇を次へのステップの教訓にし、変化へとつなげられるのかどうかは、もちろん別問題である。

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