Addiction Report (アディクションレポート)

「既存の集まりだと自分のことを語りにくい」。LGBTQ+限定の、依存症の自助グループを開催。運営は試行錯誤。パートナーの自助グループも立ち上げ

LGBTQ+の依存症を持つ人のための自助グループが開催されている。運営は試行錯誤を繰り返している。また、最近では、当事者のパートナーのグループの必要性が高まった。

「既存の集まりだと自分のことを語りにくい」。LGBTQ+限定の、依存症の自助グループを開催。運営は試行錯誤。パートナーの自助グループも立ち上げ
「アディクション・ぽーと」について話をする「ぷれいす東京」代表の生島さん(右)とプロジェクト・リーダーの福正さん

公開日:2025/02/24 22:30

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 HIVやエイズ、性感染症、セクシャルヘルスの問題に取り組むNPO法人「ぷれいす東京」(生島嗣代表)が、LGBTQ+(セクシュアル・マイノリティ)を対象にした依存症の自助グループ「アディクション・ぽーと」を開催している。2月からは、当事者のパートナーの自助グループも開催予定だ。また、3年目を目前に、3月16日には依存症について学ぶ「アディクション・スタディ3」を開催する。

 きっかけはコロナ禍。逮捕者が多かった

 「アディクション・ぽーと」は毎月1回、最終の日曜日にオンライン(ZOOM)で開催している。LGBTQ+の依存症の当事者を対象にした自助グループだ。何がきっかけで開催するようになったのか。

「コロナ禍のとき、『ぷれいす東京』の周囲の人たちや私の周りの仲間が、特に薬物の問題で次々に逮捕されることがありました。このままだと、(精神的にも)危ないよねという話になりました」(プロジェクトリーダー、福正大輔さん)

 2020年ごろから、薬物(覚醒剤)の問題で逮捕される人が多いと福正さんは感じていた。もちろん、「ぷれいす東京」という団体としてはずっと以前から増えたと捉えていた。ラッシュの使用も所持も05年4月から違法になり、16年から輸入も禁止になった。

「こうした国の規制が、ゲイ男性たちをよりハードなドラッグに追い込んだ」(生島代表)

LGBTQ+だからか、多様な人が集まってくる。依存の対象もさまざま

 別の理由もある。セクシュアリティに関連した話がなかなかできないということがあった。

 「そもそも既存の自助グループや集まりだと、セクシュアルマイノリティの人たちが、なかなか自分のことが語りにくいという、アディクションの課題がある人たちの声を聞いていました。なければ、作ろうということで、オンラインの居場所づくりをしようと思ったんです」(前出の福正さん)

 22年5月17日、『アディクション・ぽーと』のキックオフイベントを開催し、同29日、第一回目を開催した。このときは、スタッフ側が4人、参加者が7人でスタートした。

「最初は薬物のアディクションを意識していましたが、ギャンブル依存、恋愛依存、セックス依存、ゲーム依存、ネット依存、アルコール依存、クレプトマニア、ガス依存…さまざまなカテゴリーの人が集まってきました。ギャンブル依存症の人はパチンコやスロットが多いですね。アルコール依存症の人も多いですが、クレプトマニアやガス依存の人は少なめです。LGBTQ+だからか、多様な人が集まってきます。依存の対象もさまざまです」(同)

プロジェクトリーダーの福正さん(撮影:渋井哲也)

 オンラインで開催するということもあり、運営は試行錯誤だった。

 「(『ぷれいす東京』の取り組みでもある)性感染症やHIVを持っていなくても、LGBTQ+であれば参加できるようにしています。最初は、スタッフを『コンシェルジュ』って呼んで、ゆるゆるとやっていました。枠組みはしっかりしていなくて。そして、(少人数に分かれるZOOMの機能である)ブレイクアウトルームに分かれて、話をしていました。

でも、なかなかうまくいかない。スタッフばかりが喋っていることに気づいて、『ぷれいす東京』内でもいろいろ相談をしていました。そこで、うまくいっているプログラムを参考にしたんです」(同)

「アディクション・ぽーと」の説明をする福正さん(左)と生島代表(撮影:渋井哲也)

  参加する層も幅広い。

  「これまで参加した人は20代から50代がメインです。ゲイの人も多いけど、女性性の人も多くいます。レズビアンとかXジェンダーの人とか、自分は恋愛対象を特に決めていないという人もいます。本当に多様です。住まいもバラバラです。関東圏の人が多いで数が、名古屋、大阪、長野、新潟、熊本、鹿児島など、日本各地から参加してくれています。それに入院先からのアクセスもあります」(生島代表)

 「相手の話を否定しないが、ディスカッションになったりします」

 運営はどうしているのか。

「当事者ではないけれど、アディクションを肯定的に捉えているボランティアのスタッフファシリ(スタッフのファシリテーター)が進行をしてくれています。毎回3〜4人が参加してくれています。そのほか、私も含めて、依存行動やアディクトとして自覚がある人がピア・ファシリ(ピアのファシリテーター)という名前で当事者に近い形で参加しています。

当初は、ピアだけでやろうと思ったんですが、ピアだけで話をすると、話が長くなっていました。それに、気持ちがわかる分、同じ依存の人の話は聞くけど、別の依存の人のときには短くなって…。濃淡が出てしまったんです。

 もちろん、ピアファシリは、自分の体験を積極的に語ったり、『自分から先に脱ぐ』というんですが、オープンにして語ったりする場になります。ピアファシリが(生き方の)モデルになるような関わり方をする。そんな役割分担をしています。

他の自助グループの逆を意識もしました。アノニマスなグループは“言いっぱなし、聞きっぱなし”が基本だったりしますが、僕、それが苦手なんです。そのため、相手の話を否定しないというグラウンドルールは同じですが、ディスカッションになったりもします。お互いに質問し合ったりしているんです」(前出の福正さん)

恋愛や性事情をどこまで言っていか、内面的な規制をしなくていい

「LGBTQ+ならでは」のやりとりもあるという。

「恋愛の切実な悩みの話をしたりしています。恋愛の話を自由にできる自助グループってなかなかないんです。覚醒剤をセックスのときに使うという話も出てきますが、そこを一緒に語れることは重要なんだと思います。一般の自助グループだと語りにくいそうです。

やっぱり、(依存との関係で)自分の恋愛や性事情を赤裸々に語ることはできない。セクシャリティをオープンにできても、その先の、セックスの時にどんな薬の使い方をしたか、までは踏み込めない。異性愛の人に話をしても、乗り切れなかったりします。どこまで言っていいか、ここでは内面的な規制をしなくていい」(生島代表)

「ぷれいす東京」の生島代表(撮影:渋井哲也)

 LGBTQ+に限定することで、何が変わるのだろうか。

 「同じ境遇というか、セクシュアルマイノリティでアディクションという、その緩い属性のつながりなんですけど、そこからある種のモデルを見つけたり、こんな風に工夫してる人がいるんだとか、自分とは違う依存の形だけど、工夫しているポイントが一緒だなとか、お互いにエンパワーメントされていく。元気をもらうというのが一番反響としては多いです。他のグループとは雰囲気が違う。参加した方ががよく言うのは、『自助グループで笑っていいんですね』ってことなんですよ」(前出の福正さん)

 2月からは、当事者のパートナーが集まる機会も提供する。

「パートナーの語るところがないとの声を聞きました。『当事者はいいよね、そうやって自助グループいっぱいあって』みたいな話でした。一般の人たちだと家族会がありますよね。『家族』というと、親、子ども、その先どこまでとするのか。そのため、パートナー、特定のお付き合いをしている人、過去にお付き合いをしてて実はモヤモヤしてたなどの経験がある人が語れる場にしようと思いました。家族会には、ゲイのカップルのパートナーは参加しづらく、リクエストがあったので始めることになりました」


【アディクション・ぽーと】

詳細・申込先 https://stayhealthy.tokyo/topics/aciction-port_monthly

【アディクション・ぽーと・パートナーズ】

 2025年2月28日(金)19:00~21:00

 詳細・申込先:https://forms.gle/64EtSNpBFvYz4Jb48

 

【アディクション・スタディ3】

 2025年3月16日(日)13:30〜16:30

 対象者:HIV治療に関わる医療関係、福祉関係やNGOの支援者、ピア・スタッフ

 詳細・申込先:https://forms.gle/U8bWXKbBvTomrJmG8

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