田中聖さんによるメッセージソング「Restart」制作秘話
田中聖さんは収監される前、依存症の仲間たちを励ます「Restart」というメッセージソングを録音していました。プロデューサーの田中紀子が、仲間と共に作ったPVと制作秘話をお届けします。
公開日:2024/06/24 09:00
田中聖さんが収監される前に、「ギャンブル依存症問題を考える会」は、依存症に苦しむ仲間を励ますようなメッセージソングを依頼し、録音してもらっていた。その製作秘話をここで初めて明かしたい。(プロデューサー・田中紀子)
苦しい時期に、美しいメッセージソングを制作
はじめて田中聖さんに、メッセージソングを依頼したのは、2022年の春だった。
聖さんは、同年2月に愛知県で覚醒剤の所持で逮捕され保釈になっており、この保釈期間中に薬物依存症の治療に向き合うべく、国立精神神経医療センターの松本俊彦先生の元に通っていた。その後、同年5月に高知東生さんらとやっている我々の自助グループに繋がってこられた。
そして翌6月に再び逮捕されてしまったが、この短い間に我々は自助グループ等で3度会っていた。この時期に私は「聖さん、みんなを元気づけられるようなメッセージソングをいつか作って下さいね」と依頼していた。
その後、半年以上の長い拘留期間があり、再び保釈になったのが2023年の2月で聖さんは保釈後そのまま回復施設へと入寮された。我々が連絡を取り合えたのは翌3月のことだった。
そしてやっと連絡を取り合えたと思ったら、聖さんが最初のメッセージソング「Restart」を制作してくれていたことを知った。私はもちろん嬉しさでいっぱいになった。たった一度、「いつか」を前提に話したことなのに約束を果たしてくれた律儀さにも驚いた。
その上「Restart」は、なんとも切なく美しく、そして心に響くメロディだった。
この時の聖さんは、2度目の逮捕拘留中に様々な要因が重なり、保釈もなかなか許可されず、我々もとても心配していた。我々仲間からみたら、悪意としか思えないような警察からのリークやそれに伴うマスコミ報道が続いていたこの苦しい状況で、聖さんが未来への希望を失わずにいられるのは、やはり音楽があるからなのかなと胸が締め付けられる思いだった。
あの頃、世間では色々言われていたが、聖さんは本当に執行猶予を勝ち取ろうと思っていたのか?
ハッキリと聞いたわけではないが、ご自身の気持ちよりも、ご家族や周りの人が納得するように「とことんまでやってみよう」という気持ちではなかったかと感じている。
もちろん私たちも「薬物依存症の人は刑務所に入れるより、治療の継続を優先してほしい」と願っていたし、今後のためにも闘ってほしい気持ちはあった。だが、依存症問題では、研究、公衆衛生、人権とどの分野でも先進国の中では著しく遅れをとるこの国で、司法がダブル執行猶予といった画期的な判決を出すことは非常に難しいだろうと、なかば諦めの気持ちもあった。
こうして私たちが聖さんの今後を心配し、固唾を飲んで見守っている最中にこの曲はできたのだ。
情報が漏れない環境でなんとかレコーディング
私は、聖さんがピアノ伴奏だけで歌っているデモテープを聴いた途端、心をぎゅっと掴まれ、もの悲しくも、仲間達との絆に一縷の光を見出していく優しい曲と歌詞に引き込まれた。
「これは絶対に完成させたい」そう思ったが、私は音楽プロデュースなどやったことがなく、聖さんは施設入寮中で連絡は簡単にはとれない状況だった。
そこで我々の仲間でもある杉田あきひろさんなどにアドバイスを貰うと、とにかくスタジオを抑えてレコーディングをして、そこでアレンジなどもやって貰えれば曲は完成するということがわかった。
しかも現状の聖さんを守るためにも、絶対に情報が漏れない環境であることも重要だった。その上、裁判の行方も、施設や弁護士の考えも連携がないのでよく分からない。聖さんは一体いつまた収監されてしまうのか?連絡がとれなくなってしまうのか?実際、LINEをしても時々しか返信はなく、薄氷を踏むような思いだった。
何とか秘密を守って貰える、こじんまりとしたスタジオと、プロのアレンジャーの方を見つけ、回復施設の方を説得して頂き外出許可が出て、レコーディングにこぎつけたのは2023年の5月のことだった。
仲間と共にPVも作成
レコーディングを終え、完成版ができあがってみると、その出来映えと、磨きがかかった曲の美しさに、私は更なる欲が出て、「Restart」のPVを作りたくなった。この曲で高知東生さんや橋爪遼さん、杉田あきひろさん、塚本賢一さんといった仲間達を登場させてPVを作りたい!その思いを率直に伝えると、私の呼びかけに聖さんも高知さんらも私の企画に快く応じて頂いた。
ここから再び速攻で全員のスケジュールを合わせ、スタジオを抑え、カメラマンを手配した。
どんなPVにしようか?
秘密を守るためにも、スタッフは最低限の人数に抑えたい。ゆえに派手なことはできない。聖さんが誰かに見つかれば騒ぎになる可能性もあるし、どのような誹謗中傷が寄せられるかもわからない。裁判中でもありそれだけは避けたかった。
そのためこの時は絵コンテなども作らず、とにかく仲間で集まって、そこでできることを考えよう、私以外は全員が芸能界で活躍してきた人達なのだ、きっとなんとかしてくれる、そんな気持ちでいた。
久々に、仲間達と聖さんがスタジオで再会した。
「元気だった?」「会えて嬉しい!」そんなことを言いながらHugをした。普段一回り以上年上の仲間に囲まれているからか、聖さんと1歳違いで年齢も近く、過去に共演経験もある橋爪遼さんが特に再会を喜んでいたように見えた。お二人は「初めての逮捕の同期でもある」などと冗談を言い合っていた。
私たちは、聖さんが再逮捕された際に警察署へ面会には行っていたが、保釈後にこうして隔てるもののない場で会うのは初めてである。聖さんは、「色々ご心配をおかけしました」と頭を下げられた。
高知さんなどは「もう控訴するのやめて、さっさと決着つけて、とっとと帰ってきたらどうや」などと冗談っぽく言っていたが、聖さんは「そうですね」と笑いながら、「まぁ、でも家族が......」と言っていたので、そうなんだろうなと思った。
さてPV撮影である。ああだ、こうだと仲間と話しながら、スタジオ及びスタジオ周辺でできる限りの撮影を行った。
高知さんの発案で、聖さんという歌手に対して、高知さんらが映像監督やスタッフに扮しているミニ芝居も入れてみた。意見を交わしながら、シーンを撮りだめていくのは楽しかった。皆で「いいね!かっこいい!」など自画自賛し笑い合った。
聖さんは、これからどんな判決が出るかわからない。けれども今この瞬間の仲間との時間を大切にしたい、聖さんにも、楽しんで貰いたいと思った。
実際、聖さんはかっこいい。
何よりも驚いたのは、グダグダ言ったり、あぁだこうだと言い訳をしたり、照れたりとか、そういうことが全くない人なのだ。
芸能人なんだから当たり前だろと思われるかもしれないが、そんなことはない。私の少ない経験でも、「こういうの苦手なんだよ」とか「こんな感じで大丈夫?」など、色んなことを気にされるものだ。
しかし聖さんにはそういう前置きが全くない。カメラを向ければすぐにポーズが決まるし、要望に応えてくれる。すっと、芸能人のプロの顔になるのだ。それがなんとも言えずかっこいい。13歳の時からアイドルという厳しい訓練を受けてきた人はこういう風になるのかという思いと、きっと我慢に我慢を重ねてこられたんだろうな、という生きづらさが垣間見えたような気がした。
Tattooを隠す?見せる?「ありのままの聖を」
最後の最後で、仲間と意見をたたかわせたのは、聖さんのTattooについてだった。当初、聖さんは白のジャケットを着ており、Tattooはそれほど見えなかった。私は、このまま撮影を終えるつもりだったが、ここで高知さんが異を唱えた。「ありのままの聖をみんなに知ってもらうPVなんだから、Tattooを隠すようなマネはしない方がいいんじゃないか?」と言った。
一瞬、皆が考え込んだ。私は「それはどうなんだろう?また、あぁだこうだ言われるんじゃないの?」と内心不安だった。これまで何度もマスコミが聖さんのTattooを否定的に叩く記事も目にしてきた。高知さんは、相棒として依存症啓発に取り組んできたが「なんでそういう余計な面倒なことを言い出すかなぁ」と、少々腹も立った。
他の仲間も「どっちがいいんだろう?」と、悩みつつも、「そうだね。それも一理あるかもしれない。まぁ撮ってみようか」ということで、ジャケットを脱いでタンクトップでも撮影してみた。画像をチェックすると、「あっ、やっぱこっちの方がいいね」となって、タンクトップの方を採用した。
敢えて隠していたつもりもなかったが、そうとらえられてしまうより、最初から堂々とさらけ出す、そっちの方が正直な生き方をしようと、生き方改善に取り組んでいる我々らしいかな?という気が今はしている。どちらが良かったか、どういう風に思って頂けるか、答えは聖さんのファンにゆだねたいと思う。感想をコメントして下さったらありがたい。なお、ファンの皆様からの励ましのコメントは、すべてプリントアウトして聖さんにお届けする。
ギャンブル依存症問題を考える会10周年フォーラムで初めてお披露目
「Restart」は当会の10周年記念フォーラムではじめてお披露目した。
聖さんの帰りを仲間達全員が待っていること、そして頑張っている聖さんにエールを送りたい、何とか気持ちを伝えたいと、私たちは全員でペンライトを振ることにした。
会場が1つになった幻想的な光景に、思わず涙があふれた。
残念ながら映像は送れないが、写真は聖さんにお送りしようと思っている。厳しい状況で頑張っている、聖さんを励ますことができれば幸いである。
人を叩いても、傷つけても何も変えることなどできない。叩かれた人は自暴自棄になるだけだ。私たち仲間はみな知っている。なぜ自分が変れたのかを。
人は厳しさではなく、優しさで変れるのだ。
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コメント
Love it! It is an amazing song ❤️💜
優しい歌詞とメロディに涙が出ます。
私の仲間はみんな優しいな、と周りの人々を思い出しました。
私もあの日会場でペンライトを振りました。田中聖さん、どうかまた仲間のところに帰ってきてほしい。
みんな、応援しています。
「人は厳しさではなく、優しさで変れるのだ」
10周年記念イベント会場でPVを観て、聴いて…
自分自身や家族のことを考えて、涙が止まりませんでした
今日、久しぶりに観て、聴いて…
今もなお、一人で苦しんでいる仲間たちにこの歌が届くよう、届けられるよう祈っています
田中聖さん!僕らは一人じゃない!
これからも聖さんのパフォーマンスを心待ちにしています
YouTube見ました‼️PV観て聖の可愛い笑顔‼️嬉しいと同時に涙が出ました‼️聖がしっかりとおつとめをして聖には自分を自愛して欲しい。無理せずせずに自分のペースで復活して欲しいな!と思います。誰かに頼るのは恥ずかしい事で無い!聖大好きです!ずっと応援してます!
Koki!!! This is such a beautiful song and MV!! 💛
聖くんは素敵な人です。尊敬してます!
2014に聖くんのファンになってずっと応援して、これからもずっと応援しますね。
ブラジル🇧🇷で会った日は私の宝物です。聖は優しくて、ずっと笑顔で話しました。コンサートの時にも最高でした。本当に感動しました!
頑張ってね!私たちは待ってますから!聖くんは強い。聖くんならできる。
ずっとサポートしてます。
大好きです!
💛
会場で900人が振るペンライト。
聖さんの「Restart」を聴きながら
幻想的な光景に胸がいっぱいになりました。
私も強がる術しか知らず、強がることで自分を守ってきました。
一人じゃない、仲間がいる。
聖さんの言葉に救われる人が沢山います。
これからも応援しています。
会場で初めて聴いて、仲間たちとペンライトを揺らしながら涙が自然に流れてた。
とてもとても、こころに響いた歌詞もそして優しい声も。
いつか皆んなの中で又、歌ってくれる日を待ちます。
正直こんなに素敵な曲を作れる方だとは思っていませんでした。
切なく、温かく、癒されるメロディーで…とにかく感動しました。
これからも音楽で私達を癒してください。応援しています。
会場でペンライトをふりながら涙がこぼれたのを思い出しました。
この曲が収録されるまでの秘話がわかり、またまたジンときました。
上べだけではわからない本当の気持ち、優しさ、真面目さ。
聖くんを応援しています!
KAT-TUNデビュー当時からの、ファンです。
気の利いたことは言えませんが、今心の奥底から応援しています。
心ない批判の声がうっかり届くこともあるのかもしれませんが、どうかお気になさらず。
暑いので、お身体を大事にしてくださいね。
田中聖さんのメッセージソングに会場が
一体となり、暖かさと希望に満ち溢れ、本当に感動的でした。
待っている仲間がたくさんいること、田中聖さんに届いてほしいと思います。
応援しています!
聖君、素敵な曲ありがとうございます💛
なんか… 聖君の顔でちょっと寂しさと苦しさ見えましたけど… ずっと頑張って下さい!私は聖君ずっとずっと応援しています!みんな全部弱い所があって苦しいや大変時もあって、もちろん間違っていますね。人間だからもちろん失敗しますね。 でも、いつも立ち上がって前に進みますね!聖君も!だんだんに前に進んでね❗お大事にしてね!私は2011年からイタリア🇮🇹からいつも聖君応援していますよ!もちろん、今もしています!早く、元気に戻ってね!早く、私の大好きな聖君と聖君の素敵な笑顔見て欲しい💛 改めて、素敵な曲ありがとう!聖君の優しくて綺麗な歌声聞こえて嬉しいです💛 聖君、頑張ってね!しっかりしてね!💛 大好き💛
聖くんの周りに人がいて、
聖くんが昔から変わらない笑顔で笑っていて、
涙がでました。
私は、隠したいと思う気持ちも、ありのままを見せたいと思う気持ちもどちらも正解なんじゃないかなと思います。
ちゃんと見ている人はどちらでも受け入れます。
作品を創ってくださりありがとうございます。
聖くん。
無理はして欲しくないですが、
何年かかっても良いので
必ずステージの上に戻ってきて欲しいです。聖くんに救われた人、救われる人がいます。
いつまでも待ってます。
大好きです。
聖くんの切ない歌声や歌詞に
胸が一杯になりました。
改めて歌を歌う事が彼にとっての
アイデンティティなのだと思いました。誹謗中傷で彼も家族も
ギリギリの時があったと思います。
そこで逃げずに自分の出来る全てを
かける姿に私自身、学ぶ所が多いと
気付けました。私もペンライトを
心で振りました。ありがとうございます。
優しい歌声で初めて聞いた時には涙が出ました。そして、聖さんに私のメッセージも届いたかしら?
PVに出ていた仲間とまた再会し、それを見てニヤニヤする私(笑) そんな日はきっと来る。それが待ち遠しい。
会場が田中聖さんの温かい歌声に包まれて、癒しのエネルギーがすごかったです!みんなで涙ながらにペンライトを振ってました!!
会場でペンライトを振りました。歌がうまくて素直に沁みました。MVを通して、これは真の仲間と作ったんだなとジーンとしました。回復したい人には優しい世の中になりますように。田中聖さんのRestart、応援したいです。
数ヶ月前、息子に依存症の問題がある事を知った父親です。絶望に突き落とされた気持ちから依存症という病を学び、本人の苦しみを知り、家族としての心のありかたを少しずつ変えている中、10周年記念フォーラムで聖さんの音楽を聞きました。
美しい声が胸に響きました。病に苦しみながらもこのような作品を生み出す聖さんを尊敬しました。マスコミ報道で偏見を持っていた自分を恥じました。
リスタートした聖さんのこれからの人生が、依存症の問題に関わる多くの人々、そして自分の家族の希望となる事を願っています。陰ながら応援させていただきます。
田中聖さんの歌声が、心に響き渡ります。
本当にいい歌。
こんなにも優しい歌声が、彼の人柄を表しているようです。
高知さん達と共に、リカバリーカルチャーを広めて欲しいです!
応援しています!
CD購入しました
ずっと応援してます
読みました。以下の箇所、深く頷きました。
「人を叩いても、傷つけても何も変えることなどできない。叩かれた人は自暴自棄になるだけだ。私たち仲間はみな知っている。なぜ自分が変れたのかを。
人は厳しさではなく、優しさで変れるのだ。」
あの日のことが蘇り胸が熱くなる。
“この場所から立ち上がるよ
Restart again”
900人を超える仲間たち(その場に来れなかった仲間を含めると何千人にもなる)の思いを込めたペンライトの光が田中聖さんに届きますように。
そして多くの人に田中聖さんの歌が届きますように。
すべての人に優しさが届きますように。
彼の笑顔が見れて涙が出てきました。
素晴らしい曲でした。
胸に突き刺さりました。
「人を叩いても、傷つけても何も変えることなどできない。叩かれた人は自暴自棄になるだけだ。私たち仲間はみな知っている。なぜ自分が変れたのかを。
人は厳しさではなく、優しさで変れるのだ。」
医者でもない、どの支援者でもない、何より田中紀子さんだから言える言葉。染み渡る。田中聖さんにも届くことを祈っています。
今まで知らなかった聖さんの姿が輝いて見えました。
どうか回復されてまた活躍されることを願ってます!
彼のありのままの姿を大切にしていただいてファンとしても嬉しいと感じています。
彼には好きなことを大切に、無理に頑張りすぎず、程よいペースでご病気と付き合いつつ、社会へ復帰していただきたいなと思います。
社会の厳しい言葉も多いかもしれませんが、見守り、援助する者の片隅で応援しています。
失敗してもやり直せる、バッシングではなくその人の再生を応援する、そんな世の中が来ることを願わずにはいられない。
そして素晴らしい動画をありがとうございます。
見てるだけで泣けてくる。
暖かさが溢れてる。
人は厳しさではなく、優しさで変れるのだ、という言葉にハッとした。
そう私もありたい。
会場でペンライト振りました。すーっと心に入ってくるメロディと勇気をもらえる歌詞、想いがこもった歌声と表情。そのどれもが聖さんの真心を表したようで、胸が熱くなりました。
私もリカバリーカルチャーを広めたい1人なので、どうか聖さんの仲間としてこれからも応援させてください。
たくさんの人に聖さんの歌が届きますように!