γ-GTPの値が8884に…肝硬変になった芸人・快児が断酒に至るまで
肝硬変になったことをX上で公表したピン芸人の快児さん。約3ヶ月の断酒の結果、血液検査の数値がすべて正常になったそうです。快児さんはなぜ飲酒に走ったのか、どのような思いで断酒に取り組んだのかをインタビューしました。
公開日:2026/09/10 02:00
今から約18年前、お笑い番組『エンタの神様』の準レギュラーとして活躍したピン芸人・快児さん(48歳)。ここ数年はお笑いライブに出演しつつ、新宿のバーでも働いています。しかし、8月18日のXのポストでは長年にわたる大量の飲酒により肝硬変になってしまったことを告白。快児さんが肝硬変になるまで飲酒を続けてしまった経緯や断酒について聞きました。

泊まり込みのロケをきっかけに毎日飲酒するように
――快児さんが大量にお酒を飲むようになったきっかけを教えてください。
大学のときは飲み会や合コンで飲む程度だったので、毎日飲む習慣はありませんでした。毎日飲むようになったのは23歳のとき。
日光江戸村で1週間の泊まり込みの仕事があったんです。1日の仕事が終わるとロケ現場からバスで宿舎まで移動するのですが、途中でローソンの前に停まるんです。宿舎にお酒は売っていないので、ほかの出演者はそこでお酒やつまみなどを買って夜飲むんです。それで、いつしか僕も500mlの缶ビール3本にカルパスを3本買い、寝る前に飲むようになりました。この仕事以降、一人でも毎日お酒を飲む習慣がつきました。
仕事で嫌なことがあったら忘れるために飲むし、めでたいことがあってもお祝いのために飲む。当時は焼酎のお茶割りを1日8杯くらい飲んでいました。
テレビに出ているのにバイトをやめられないつらさ
テレビに出るようになると、仕事のプレッシャーをぬぐうために飲むようになりました。とある番組は、本番でやるネタが決まるのが遅くて覚える暇がほとんどありませんでした。うろ覚えのネタを披露しないといけないことのプレッシャーがすごくて。放送ではカットされていますが、本番で何度もトチってしまい、その番組に出られること自体はうれしいのに、どんどん番組が嫌になっていきました。
ある日、テレビ局に着いたら顔面の目から下に全部蕁麻疹が出ていたんです。メイクさんにコンシーラーで隠してもらったのですが、本番が終わって帰ろうとメイクを落とすと、綺麗に蕁麻疹が引いているんです。それほどのストレスでした。
ほかにも、視聴率のある番組に出ているのにそれだけでは食っていけなくて、TSUTAYAのバイトをずっとやめられませんでした。バイトをやめて芸人に専念したいのにそれができないのがすごくつらかったです。
アルコールにより口が回らなくなる
――依存症の定義としてはデメリットがメリットを上回ることですが、快児さんはどんなデメリットがありましたか?
営業に名古屋に行った32歳のときのことです。本番直前にネタの練習をしていたんです。桃太郎のネタがあるのですが、「桃太郎の仲間は犬、猿、キジですが……」のキジという単語がうまく言えなくなったんです。何度言おうとしても「キイ」とか「キギ」という発音になってしまい口が回らないんです。
なんだ!? と思ったら人生で始めて立ちくらみがして、『北斗の拳』のラオウのようにガクンと片膝をついてしまったんです。ヤバい! これは精神がやられていると思い心療内科に問い合わせたのですが、大きな病院だったので診察が3ヶ月後になると言われて。そんなに待っていられないので町医者の心療内科にかかることにしました。

――心療内科に通い始めた時点ではまだ飲酒について医師から何も言われなかったんですよね。
そのときは肝臓に関しては何も言われていません。ただ、お酒で薬を飲まないようにと言われていましたが、それを守らずにお酒で睡眠薬や安定剤などを飲んでいました。お酒で薬を飲むと気絶したように眠れるんです。
それで、お酒で薬を飲んだ朝、起きると発信履歴が残って女の子に電話をかけていたんです。何を話したのかまったく覚えていない。すべての記憶が飛んでいる。最悪だと思ってその子に電話をしてまず謝り、自分が何を話したのか聞きました。
そしたら「快児君、壮大な鼻歌を15分間歌っていたよ。それ、なんていうタイトル?ときいたら、『舞い落ちる粉の戦士たち』と答えたよ」とのことでした。
舞い落ちる粉の戦士たちって何やねん! 粉っていう単語もちょっとヤバいし!
バーの接客中に倒れて救急搬送、γ-GTPの値は8884
――肝硬変発覚の血液検査はどのような経緯だったのでしょうか?
11年前から新宿ゴールデン街のバーで働き始めたんです。バーテンとして入っていたのですが、接客ができなくなるくらいまで飲んでいました。21時に店に入り、朝の5時まで飲んでいましたね。泥酔して3時くらいに勝手に店を閉めてオーナーに怒られることもありました。
7年前のある日、お客さんにハイボールを渡そうとした瞬間、気絶して倒れたんです。そのまま救急車で運ばれて血液検査をされた結果、γ-GTPが8884もありました。ゾロ目ちゃうんかい! フリーザの戦闘力かよ! 「私のγ-GTPは8884です」みたいな。先生に「死にますよ」と怒られるのかと思ったら、「もう死んでますよ、よく生きていますね」と言われて。「お前はすでに死んでいる」って北斗の拳かよ!
研修医たちもわらわら僕に近づいてきて小さい声で「うわ、初めて見た」と言うんです。僕も自分よりγGTPの値が高い人を見たことがないです。
その後、断酒をしたのですが、γ-GTPの値が3桁になったところで調子に乗ってまた飲み始めてしまいました。
――いわゆるスリップですね。スリップにはきっかけがありますよね。
そのときは彼女と別れたのがきっかけで飲んでしまいました。喧嘩別れをしてムカついていたんです。その後、また飲み続けて今年の4月に受けた検査ではγ-GTPの値が6555になり、エコーを撮ったら肝臓の部分だけ黒く写っていて、肝硬変だと告げられました。医師からは「お酒は金輪際一滴たりとも飲まないように」と言われました。
――肝硬変と告げられたときはどんな気持ちでしたか?
ついにきたか、と。死を意識しました。もう飲みたいという気分ではなくなりました。肝硬変ではなく、肝脂肪と言われた程度だったら僕、断酒をしないと思うんです。でも今回はもう死ぬと思っているので、断酒を続けられています。

断酒はストイックになりすぎないことが大事
――断酒をしてから変わったことはありますか?
毎日飲んでいた頃は、朝起きると漠然と死にたいと思っていました。でも今は、そういうのがまったくなくなりました。朝起きると猛烈にやる気が出ています。朝のうちにショートコントを3本作ってそれをTikTokとYouTubeにアップする作業を必ずしますし、昼にXに投稿する大喜利のお題も朝のうちに考えます。
γ-6555を叩き出した断酒前の3ヶ月くらいは何のライブにも出ていなかったのですが、ライブの本数も増やして今は月5本以上あります。食べ物もなんでもおいしく感じるようになったし、視界もクリアになりました。
――今もバーでは働いていますよね。お酒を提供していると飲みたくなりませんか?
それが、ノンアルコールビールさえあれば、飲んでいる気分になれるんです。たまに、周りが酔っぱらいのテンションだと飲みたいなと思うこともありますが、ノンアルコールビールで乗り切れます。

――今後の目標を教えてください。
お酒をやめたらやりたいことがたくさん出てきました。今はフリーなのでそろそろ事務所に所属したい気もするし、個人事務所を起ち上げるのもいいなと思っています。僕は歌と絵も得意なので、お笑いだけでなく総合的な芸術分野を極めたい気持ちもあります。映画監督もやってみたいですね。
――今、断酒中の人に向けてメッセージをお願いします。
断酒するのであれば酒を飲まないことだけを頑張り、ほかのことは何も頑張らないでください。タバコもOK、ノンアルコールビールもOK、ジュースもOK。肝臓に果糖が悪いと言いますが、アルコールに比べたらジュースなんて全然悪くないです。本当はブラックコーヒーのほうが肝臓にはいいけど、僕はブラックコーヒーが苦手なので微糖のコーヒーを飲んでいます。
ジムにも行っていますが、飽きたらすぐ筋トレをやめています。とにかくストイックにやらずゆるくやることです。
