Addiction Report (アディクションレポート)

「こんなにも多くの人たちがギャンブルが理由で死んでいる」自死遺族会が発足、全国でセミナー開催

公益社団法人ギャンブル依存症問題を考える会が都内で「ギャンブル依存症自死遺族会立ち上げセミナー」を開催。ギャンブル依存症問題を考える会代表の田中紀子さんは「こんなにも多くの人たちがギャンブルが理由で死んでいるということが、社会では全く知られていない」と訴えている。

「こんなにも多くの人たちがギャンブルが理由で死んでいる」自死遺族会が発足、全国でセミナー開催
ギャンブル依存症問題を考える会代表の田中紀子さん

公開日:2024/07/21 01:27

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公益社団法人ギャンブル依存症問題を考える会は7月20日、都内で「ギャンブル依存症自死遺族会立ち上げセミナー」を開催した。

ギャンブル依存症問題を考える会代表の田中紀子さんは、「こんなにも多くの人たちがギャンブルが理由で死んでいるということが、社会では全く知られていない」と訴え、自死遺族会の重要性を強調した。

ギャンブル依存症自死遺族会は今後、全国各地でセミナーを開催するほか、サポートのための相談窓口の設置やオンラインでのミーティングの場などを設けていく。

自助グループでも居場所を失う自死遺族

会の冒頭、ギャンブル依存症問題を考える会代表の田中さんは「私がギャンブル依存症の自死という問題に直面したのは今から16年前のことでした。その衝撃は今でも忘れられません」と語った上で、ギャンブル依存症に苦しむ仲間がある日突然、自らの命を絶った際の出来事を明かした。

仲間が家族に宛てて送った最後のメールには「本当に今までごめん」「良い息子になれなくてごめん」「良い父親になれなくてごめん」といった言葉が並んでいたという。それを見た家族から、田中さんは相談を受けていた。

田中さんはそのメールが届いた翌日に家族と会う約束をした。家族と話をしている時に飛び込んできたのが警察からの電話だった。そこで田中さんは仲間が自らの命を絶ったことを知らされた。

「あの時の衝撃は今でも私の中に残っている。仲間たちは『リコさんのせいじゃない』って言ってくれたけど、私は自分のせいだと思ったし、今もそう思っているところがあります」

「お葬式に参加させていただいた時に、その仲間の息子さんが棺の前で声を出さずに泣くんです。涙だけがポロポロとこぼれて、泣くのを我慢しようとしていた。その姿を見た時に、ギャンブル依存症で親を亡くす子どもをなくしたいと思いました」

実はギャンブル依存症自死遺族の会を立ち上げることは容易ではなかったという。

ギャンブル依存症で家族や大切な人を失った人の多くは、本人が亡くなると自助グループの活動からは離れていってしまう。「どれだけ気心が知れた仲間であっても、自死遺族は居場所を失っていく」といった声も何度も耳にしたという。

また、自死遺族側にとっても自助グループの集まりへ行くことは「仲間の希望を奪ってしまうのではないか」といった思いから憚られるといった側面もある。

こうした経緯から、田中さんは今回自死遺族の会代表を務める神原充代さんと話し合い、会の発足を決めた。

田中さんは「こんなにも多くの人たちがギャンブルが理由で死んでいるということが、社会では全く知られていない。無いものにされている。そして知ったとしても、『それは自己責任でしょ』という言葉で片付けられてしまう」と述べ、改めてギャンブル依存症自死遺族会を設立する意義を強調した。

正しい知識を持てば回復できる。でも、死に至る病気

この日の会では、2人のギャンブル依存症自死遺族が実際に自らの身に起こった出来事を打ち明けた。

今回発足するギャンブル依存症自死遺族の会の代表を務める神原さんは関西在住。2022年4月に、長男をギャンブル依存症で失った。

心療内科へ通院し、友人などにも支えられながら、少しずつ立ち直った神原さんはある日、ギャンブル依存に悩む家族の集まりへ足を運んだ。

しかし、そこで湧いてきたのは「私のギャンブラーはもういない。みんなは生きていていいよね」という感情だったという。

次に足を運んだのは地元の自死遺族の会。だが、こちらで聞こえてきたのは「なぜ亡くなったのかが知りたい」という声だった。

「私は彼が亡くなった理由がギャンブル依存症であると知っています。ここは自分の居場所ではないと思って、一度行ったきり、その集まりには行かなくなりました」

その後、しばらくは仕事に打ち込むことで気を紛らわせた。少し時間がたち、再びギャンブル依存に悩む家族の集まりへと参加してみたが、やはり「自分の本心を話すことは全くできなかった」という。

そんな中、神原さんはギャンブル依存症問題を考える会の田中さんから声をかけられ、「私の悲しい経験が、誰かの役に立つのであれば」という思いから、ギャンブル依存症自死遺族の会を立ち上げることを決めた。

神原さんは最後に次のように呼びかけた。

「ギャンブル依存症は正しい知識を持てば回復できる病気です。でも、死に至る病気です。まずは当事者も家族も仲間につながってほしい。病気なので、恥ずかしいことではありません。隠さずに、助けを求めてください。仲間を信じて行動してください」


コメント

1ヶ月前
匿名

記事を読んで、立ち上げセミナーでの想いが蘇ってきて、また泣けてきます。

勇気を持って立ち上げてくださり、ありがとうございます。

2ヶ月前
匿名

自死遺族会の発足は本当に意義深い。

この会を立ち上げてくれたご家族を応援していきたい。

2ヶ月前
maruko

自死遺族が顔を出して、名前を出して、活動することは、凄く勇気がいること。

それでも実名で活動するのは、共に歩みたい、まだ繋がらぬ苦しむ残された人たちのためである。

心底、自死遺族の会を応援したいです

2ヶ月前
はな

会を発足して下さり、本当にありがとうございます。

心より感謝致します…。

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