Addiction Report (アディクションレポート)

「痩せる薬」として使い始めた覚醒剤。睡眠薬や向精神薬にも依存していく〜クロスアディクションを抱えた湯浅静香さん(中)

前回は性依存やギャンブル依存について触れたが、湯浅さんには薬物依存もあった。覚醒剤のほかドクターショッピングをしたこともあり、睡眠薬、向精神薬にもはまっていく。マジックマッシュルームやエクスタシーにも触れる機会があった。

「痩せる薬」として使い始めた覚醒剤。睡眠薬や向精神薬にも依存していく〜クロスアディクションを抱えた湯浅静香さん(中)
さまざまな種類の依存症になった湯浅静香さん(撮影:渋井哲也)

公開日:2024/10/14 22:00

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違法か合法かを問わず薬物との〝出会い〟があった

 湯浅静香さん(44)はギャンブル依存症だけでなく、いくつもの依存症が重なる「クロスアディクション」の経験者だ。湯浅さんが、その一つである薬物に依存するきっかけは高校1年のときにあった。繁華街でイラン人に「痩せる薬」として覚醒剤を勧められた。その後も、様々な違法薬物、向精神薬にハマっていく。

 「当時、アメ横に行くと、イラン人が偽造テレカをいっぱい売っていました。使用済みテレカ10枚で、105度数 (10,500円分)の偽造テレカと交換できました。だから、伝言ダイヤルをするお金や連絡ツールはに困らない。そんなイラン人たちの声かけの一つが『ヤセルクスリアルヨ』って。それが初めの、覚醒剤との出会いでした」

 女子高生ギャルだった湯浅さんは、援助交際のために伝言ダイヤルを主に使っていた。公衆電話から利用する。そんな日常の延長に偽造テレカがあり、さらにその先に覚醒剤があった。イラン人から『ヤセルカラ、キモチヨクナルヨ』と声をかけられ、覚醒剤が身近だった。 

高校生の頃の湯浅静香さん(提供:湯浅静香さん)

「初めは覚醒剤を舐めていたんです。単体パケに入ったものを舐めるだけ。それでも十分な効果あります。翌日、寝ないで学校へ行って、食欲もなくて…。父は、娘を信じているから、思春期のダイエットだろうと呑気な感じでしたが、さすがに母は『なんでご飯食べないの?』と心配し、変なものをやってないかと疑っていました。

キメセク(=性的快楽を得るために、違法薬物を摂取して行う性行為)をしたこともありますが、相手には私が覚醒剤を使っていることは言いませんでした。当時付き合っていたのは、違う学校の真面目なバスケットボール部員。 迷惑をかけちゃいけないという思いはありました。ラッシュ(現在、厚生労働省は危険ドラッグとして違法となっている)も流行っていました。覚醒剤と一緒に使っていたので、何の効果があるかわからなかったです」

繁華街に行けば違法薬物の話題が当たり前にあった

 この頃は、さまざまな製品が誤用での覚醒作用を楽しむ若者も多かった。覚醒剤のように利用していた。マジックマッシュルームもその一つ。観賞用として売られていたが、明らかに悪用目的に利用する若者が多かった。その後、トラブルが多発し、2002年6月、「麻薬原料植物」に指定され、栽培、輸入、譲渡、譲受、所持などが禁止された。ただ、それ以前は、繁華街なら売られていた。高校生も購入できていた。

「『東急ハンズ池袋店』(21年10月31日閉店)の前で、普通にイラン人が露天で売っていたんですよ。観賞用として売られていたため、『食べないでください』と書いてあった。ということは『食べろ』ってことじゃないですか。この頃は、マジックマッシュルームを警察は取り締まらない時代でした。私は高校を卒業して初めて食べたんですが、メチャメチャ楽しかった。私は、幻覚系のほうが好きでした。LSDとかキノコとか。

この頃、周りの友人たちの間では大麻が流行っていました。大宮の『ドンキホーテ』に水パイプが売られており、ガラスケースの前で、同世代の若者たちがいて、その人たちが『このパイプいいよ』とか、『今日ブリってるの?』など会話が普通に繰り広げられていました。その群がっているなかで、『どれこれがいいよ』『あれがいいよ』と、全然知らない人たちが勧めてきました。次第に規制が強まって手に入らなくなり、それで私は大麻をやめました」

 高校を卒業した18歳の頃。キャバクラの仕事をするが、客から覚醒剤を教わり、本格的にハマった。

「この頃は、なんでこの人が持っているのか?という人が、覚醒剤を持っていた。そこで『炙り』を教わったんです。お客さんからは『これでセックスすると気持ちいいから』って…。その次にやるのは、錠剤のエクスタシー(MDMA)ってやつでした。そこからとにかくケミカル系にいきました。エクスタシーと向精神薬を飲んで車を運転していたら、交通事故ばかり起こしていた」 

違法薬物だけでなく、睡眠薬や向精神薬も

 22歳になっても、覚醒剤をしていたため、眠れなくなっていた。そんな中、キャバクラの客から睡眠薬や向精神薬を入手し、依存するようになる。

「生活のリズムを取り戻そうと思って、睡眠薬をお客さんにもらったんです。複数の製薬会社が医者の接待で店にくるんですが、私は気に入られて、グルージングのディナーに招待されたりしました。多くの接待費が(会社から経費として)おちていた時代ですよ。『頭が痛いんだよね』と言うと、鎮痛剤10シートをくれました。『眠れない』というと、睡眠薬をくれたり…。それに病院を紹介されてドクターショッピング(=複数の医療機関を受診すること)していました。こうして、睡眠薬と向精神薬をゲットした。それで、向精神薬に依存していきました」

 薬物を摂取しながら働くものの、次第に記憶をなくすことが増えていく。

 「夜6時オープン、午前1時クローズの店で働いていましたが、系列店が朝5時まで営業していました。私は1時まで働いた後に、系列店で働きました。その間、空腹になると、向精神薬を飲みました。 同じ店の女の子と一緒にノリで。『ちょっとこれ飲んで、仕事してみる?』って。系列店にいくとき、『飲んでみよう』ってなったんです。空腹で、ちょっと酔っていたときに初めて飲みました。気がつくと、部屋の布団の中でした。どうやって帰ってきたんだろう?と思って外を見たら、車はまっすぐ駐車場に停まっている。何をしたかはまったく覚えていません」

高校生でキャバクラのビラを配っていた頃(提供:湯浅静香さん)

依存しすぎて仕事ができなくなっていく

  一緒に向精神薬を飲んだ女の子に電話したが、彼女も覚えていない。他の女の子に聞いても「楽しそうだった」と言い、売り上げも好調だったことが「成功体験」になった。向精神薬を飲むと調子が良かったのだ。

 「医者に『いつ飲んでもいいの?』と聞いたんです。『できれば寝る前に、この薬と一緒に飲みな』と言われたんです。それが複数の睡眠薬でした。そのうち、ベゲタミンはもう製造されていないですが、『一緒に飲んでね』と言われました。それを医者の言われた方法と違うように使ってうまくいっちゃった。だから、もう常に安定剤を飲んで仕事をするようになったんです」

 しかし、お酒と睡眠薬、向精神薬の飲み合わせは、当然ながらも、行動や思考の記憶を混乱させた。

「お客さんから『昨日さ、俺とセックスしようって言ったのを覚えてる?』って、電話かかってきたんです。でも覚えてない。『薬飲んでいたからちょっと覚えてない』って言いました。そんなことが増え、お客さんがだんだん離れていったんです。同僚の女の子たちも、『なんか静香、おかしいよ』って言われて、その店にもいられなくなった」

 その後、六本木、銀座の店に行く。しかし、そこでも薬にはまっていて、仕事どころではなくなる。

「この頃には、もう覚醒剤は手に入らなくなっちゃって、マジックマッシュルームも危険ドラッグも規制されていました。その代替品として、私は向精神薬にどんどん依存していったんです。オーバードーズ(過量服薬)をしていくと、稼げなくなっていきました。そのため、ノートパソコンで『吉原 求人』で検索して超高級な風俗で働くようになったんです。1人6万8千円とか7万円とかぐらいのお店でした。この時も記憶がほとんどなく、1日40とか50(万円)とか稼いでいました。裏でひく(=お店を通さずに金銭のやりとりをすること)こともしていました。そんな中で夫と知り合いました」

 (つづく)

碧の森

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湯浅静香Ch

https://www.youtube.com/@shizuka_yuasa

湯浅静香のXアカウント

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