「とにかく早め助けを求めて」もっと依存症を考えよう!をテーマに〜こわれ者の祭典[東京公演]
月乃光司さんが代表を務めるイベント・パフォーマンス集団「こわれ者の祭典」がトークイベント。自作の曲を歌ったり、詩の朗読もあった。また、随筆家、風間暁さんは「社会が壊れている。その中で生き延びるために薬物を使うのは至極真っ当」と話した。クレプトマニア(窃盗症)の当事者、高橋悠さんは「万引きのルーティーンから抜けられなかった」と述べた。
公開日:2026/10/14 02:30
アルコール依存症や摂食障害、薬物依存、クレプトマニア(窃盗症)などの当事者が体験を語り、自己表現を通じて過去の経験を笑いに変えるイベント「こわれ者の祭典[東京公演]」が10月11日、東京都新宿区のトークライブハウス「新宿ロフトプラスワン」で開かれた。今回のテーマは「もっと依存症を考えよう!」。全国から当事者や医療・福祉関係者ら約80人が会場を訪れ、同時に配信もされた(アーカイブ配信は10月25日まで)。
「こわれ者の祭典」は、代表の月乃光司さんが2002年に地元・新潟で始めたイベント・パフォーマンス集団。さまざまな病気や障害、生きづらさを抱える人たちが、自らの経験や思いを歌にしたり、詩を朗読したりして表現してきた。2004年からは東京でも公演を開催している。メンバーによるパフォーマンスだけでなく、当事者や専門家をゲストに招いたトークイベントも行っている。
醜形恐怖と問題飲酒、自殺企図。自助グループへ 月乃さん
月乃さんは高校時代に、「唇が厚くて変だ」と思い、いつも手で唇を隠す醜形恐怖症だった。25歳の時には問題飲酒で、自殺を図る。そのため病院に入院した。
「酒を飲むとわけのわからないおかしなことを怒鳴るように独り言を言ったり、興奮して壁を蹴ったりしていました。そして、大量に薬を飲み、もうろうとしていたため入院となりました」
その後、ボーダーライン・パーソナリティ障害(境界性人格障害)という診断を受けた。パチンコ店で働くようになったが、そのうちうつ病にもなった。車を運転中、ガードレールにぶつけたこともあった。その後、自助グループに繋がったという。
そんな月乃さんも61歳になった。
「長い、長い思春期でした。これからは“還暦青春期”です。 私は今、“還暦発情期”を迎えたんです。女子プロレスラーがすごい好きで、プロレスラーと会うたびにすごいドーパミンが出ます。女子プロレスラーにサインしてもらうっていうのが私の生き甲斐です。サインしてもらうと脳内麻薬がドバドバと音を立てて出て、酒とか薬は要りません」
「過食嘔吐し、疲れ切って、意識が遠のく…」kaccoさん
Kaccoさんは摂食障害の経験を話した。
「摂食障害は食べ物依存ですね。嘔吐もあったんです。いっぱい食べて吐いて…...。一連の行動の中で、“今日をやり切った”みたいな満足感や達成感がありました。それをしない日は落ち着かず、寝られませんでした。過食嘔吐し、疲れ切って、意識が遠のいてきて眠りに落ちる。そんな日々を送っていました。 食べ物依存と過食嘔吐、そこまでがセットになっていました」
四六時中、食べ物のことばかり考えていたというが、そうした理由には何があったのか。
「多分自分の中にあるいろんなモヤモヤとか不安な気持ちやどうしても回避したい問題に、蓋をするために取っていた行動が過食だったのかなと思います。でも、そうしていくとだんだんやっぱり太ってきました。最高で体重が88キロありましたが、拒食症のときは49キロくらいまで落としました。私はこの方法でダイエットしました」
ゆみさん「楽にするため、お酒を飲んだり、過食嘔吐をした」
摂食障害やアルコール依存症を経験したゆみさんは、小中学生時代、優等生キャラだった一方で、隠れて逸脱行為をするようになる。
「モヤモヤを少し楽にするため、隠れてタバコを吸ったり、お酒を飲んだり、過食嘔吐をしたりするようになりました。高校時代は100点が取れないことをきっかけに不登校になり、過食嘔吐と飲酒はどんどんエスカレートしていきました。そして、食費と酒代を稼ぐために飲食店でアルバイトを始めました。お客さんが飲み残した酒は、飲み切ってから吐き戻しました。食べ残されたものも食べ、その後に吐いていました」
24歳の頃、精神科に強制入院となった。
「一番壊れていた時には、過食がなくても吐いてしまい、内科に検査入院した時に食べても吐いちゃうならと病院食を止められ、点滴で栄養だけ取っていました。入院時の食事の匂いがしてくると過食嘔吐スイッチが入る。他の患者さんの食べ残したものを手づかみで食べて吐いていました。足りなかったら病院の売店で万引きをして食べて吐いていました。さすがに内科を追い出されて、鍵のかかる精神科に移りました」
退院後、大学に進学。心理学を学んだ。自分自身と向き合うことで、「このまま生きていこう」と思えるようになった。
「社会が壊れているから、生き延びるために薬物を」風間さん
この日のゲストで、随筆家の風間暁さんは薬物依存症と診断されたことがあるが、「私は壊れたことはない」と話した。
「(依存するのは)社会が壊れているから。その中で生き延びるために薬物を使うのは、私としては至極真っ当。正常な反応だと思っている。私はシラフジャンキーだって言われています。飲んでいないのに、“飲んでる?”って言われます」
高橋さん「入院したらメリットがある。早く助けを求めて」
もう一人のゲスト、摂食障害やクレプトマニア(窃盗症)の当事者、高橋悠さんは「一番壊れきっていたのはやっぱり万引きのルーティーンから抜けられなかった時」と述べた。
あるとき、クレプトマニアという病気について本を読んで知り、自分から入院した。
「自分から入院したのはメリットがあります。裁判を抱えずに入院するから、治療に集中できます。結構みんな裁判というタイミングで入院してくるので、裁判が気になって、治療効果がガクって落ちる。だから、とにかく早めに助けを求めましょう。そういうことを知ってほしくて、予防パンフレットを作りました」
「一時的に生きづらさが軽くなるから依存症に」松本 さん
精神科医の松本俊彦さんもゲストで登壇した。主催者が用意した質問に答える形式で、「なぜ人は依存症になるのですか?」という質問にこう答えた。
「めくるめく快感ではなくて、むしろ前からずっと溜まっていた痛みとか苦しみが一時的に軽くなったり、一時的に消えたりするから、やめられなくなっちゃうんじゃないかと私は考えています。一番の理由は、やっぱり一時的に生きづらさが軽くなるからだというふうに僕は思っています」
植民地ネズミ(檻の中のネズミ)と楽園ネズミ(自由なネズミ)の実験についての質問が出された。これは「ラットパーク実験」と呼ばれるもので、1970年代後半に行われた。檻の中に閉じ込めた場合と自由な環境にいる場合、どちらのネズミがモルヒネ入りの水を多く飲むかという実験だ。檻の中のネズミのほうが多く水を飲んだという結果が報告されている。
「もしかすると仲間とのつながりから断たれていて、一人ぼっちで、自分の裁量の利かない息苦しい環境とか状況にいるネズミの方が、危険な薬物にはまってしまいやすいのではないか。つまり依存症の原因は自分の体の中にあるのではなく、我々が住んでいる社会とか、取り巻く人間関係が問題なんじゃないか、そういう問題提起を、この実験は我々に教えてくれるのかな」
松本さんは「昔に比べると依存症の治療は多様化」とも
その後、登壇者からの質問に答えた。ゆみさんは「アルコール依存症の治療として完全断酒がいいのでしょうか?」と
「基本的に“アルコール依存症の治療のゴールとして最も理想的で、患者さん自身にとってもメリットがあるゴールは断酒だ”と、“アルコールは世界の最古最悪の薬物だ”と思います。だけど、『断酒』と言われちゃうと治療から離れちゃう人がいる。
依存症がなくても酒をやめるのが一番いいに決まっている。だけど、依存症って言われちゃうと断酒しかない。かつての断酒一辺倒の中で、治療から漏れてしまった、もう普通にやめちゃった方たちが、予後が悪いことが分かっています。
一方で、『また飲んじゃいました』と言っている人の方が長生きしているというデータが上がっています。その方たちを救い上げるためには、もう一つの選択肢も用意しておくことは大事かなと思い、節酒のようなやり方でやっています。昔に比べると依存症の治療は随分多様化されてきて、ケースバイケースで治療の目標を変えるようになっている気はします」
居場所を求めて、“右翼療法”をしていた雨宮さん
「こわれ者の祭典」の名誉会長で、作家の雨宮処凛さんはフリートークで、家出の経験のほか、バンギャや右翼団体に居場所を求めた話をした。ロックバンドのボーカル時代にはミニスカ右翼やゴスロリ右翼とも呼ばれた。新右翼活動家でもあった作家の見沢知廉(故人)の弟子にもなった。
「『わかんないって言っている子は素晴らしい』とか、『お前は貴重なんだ』と言われていました。そういう意味では、『絶対、あの時は右翼じゃないと救われなかった』と私自身、思っています。そのときは、一番死にたかった時でした。今思うと、“右翼療法”でした。そういうコミュニティだから人間を生きさせてくれました」
そして、最後の締めの言葉として、出演者は会場に訪れた人たちと「病気だョ!全員集合!!」という言葉を叫んだ。
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