違法スポーツ賭博に日本から流れた金は年間6.5兆円に拡大 選手が八百長に巻き込まれる危険性も
2024年に海外の違法スポーツ賭博に日本から流れた金が、約6.5兆円に膨らんでいることが明らかになりました。選手の八百長につながる恐れもあると早急な対策が訴えられました。

公開日:2025/05/15 08:47
日本で若者の間に急速に拡大している違法なオンラインカジノ。
スポーツを賭けの対象としているサイトも多いが、「スポーツエコシステム推進協議会」の調査で、2024年に海外の違法スポーツ賭博サイトに日本から流れた金が、約6.5兆円に膨らんでいることが明らかになった。
調査結果を公表した同協議会の稲垣弘則代表理事(西村あさひ法律事務所パートナー)は、海外では、「マコリン条約(※)」に基づく国際連携による対策が進んでいることを紹介。
「日本でも条約の批准に向けて、議論を進めたい」と早急な対策を訴えた。
※スポーツ競技の不正操作を防止するために国際的な協力体制を推進する世界初の条約。2019年に発効し、43カ国が署名、うち14カ国が批准している。
賭け対象は野球、サッカーが多く、大相撲や高校野球も
スポーツエコシステム推進協議会は、スポーツ産業の持続的で健全な発展を目指して各スポーツ団体やメディア企業などが参画している。
調査の結果、日本からアクセス可能な海外のスポーツ賭博サイトでは、日本の野球、サッカー、バスケットボール、テニス、ゴルフなどのプロスポーツの他、国技である相撲や高校野球の試合も賭けの対象になっていることが判明した。
2024年の日本からの賭け金総額は約6兆4503億円と推計され、そのうち、日本に住む人が日本のスポーツ競技に賭けた金額は1兆183億円だった。また、日本のスポーツを対象とした賭け金総額は4兆9112億円に上った。
日本居住者が賭けの対象とした日本のスポーツで最も多いのは野球で、賭け金総額は5281億円、サッカー(3334億円)、バスケットボール(869.2億円)がそれに続いた。
無断で選手の肖像やチームのロゴを利用
稲垣氏は、「オンラインカジノの摘発強化で著名人、スポーツ選手の摘発も相次いでいる。日本居住者がスポーツを対象に賭けを行うのは刑法上の賭博罪で処罰されるが、現在摘発されている事例は海外のオンラインカジノを利用して賭博を行なったもの」と説明。
試合のライブ配信や、ユニフォームを着た日本人選手の肖像や、チームのロゴなどを無断で利用するサイトも散見され、「著作権やパブリシティ権といったスポーツ団体や選手の権利侵害が行われており、こういったものが野放しになっているのは由々しき事態。日本の多くの方々が違法なスポーツ賭博に巻き込まれているのは大きな問題」と指摘した。
またこうしたサイトにはSNSやブログを利用して、日本の利用者を違法サービスに誘導するアフィリエイト事業者も関わっており、ユーザーの負けた金額に応じて違法業者が得た利益の20〜30 %程度を受け取る仕組みができていることを紹介した。
選手や八百長などに巻き込まれるリスクも
稲垣氏は、さらにこうした違法サイトの広がりが、選手たちの八百長につながる危険性も指摘した。
「スポーツの結果を操作しようとする反社会勢力が世界的に増加している。違法市場が拡大するのに伴って不正操作のリスクは高まる。国際的に検討すべき課題」とした。
また日本の多くの利用者が、著名なスポーツ選手が出る広告を見て、「合法だ」と誤解をしている実態もあると説明。
「中には違法事業者から広告料をもらって広告に出演してしまっているような選手、元選手も出てきていることが大きな問題になりつつある」として、国際連携の元で対策を進めていくべきだと強調した。
マコリン条約の批准に向けて議論を
その中心となる対策として稲垣氏が挙げたのが、「マコリン条約」。各国に設けられた官民連携の組織(ナショナルプラットフォーム)を通じて、国際的に不正行為の監視をしたり、情報共有をしたりすることで、不正行為の摘発や予防を目指す枠組みだ。
「日本でもこういった体制の構築や国際連携の参入が急務になっている」として、同協議会でも今年1月から勉強会を開き、日本版のナショナルプラットフォーム創設や、マコリン条約批准に向けた議論を進めているとして、協力を呼びかけた。