依存症に苦しんだ人が、前を向いて歩いていけるように メッセージソング「めくるめく」を公開
依存症に苦しんだ当事者や家族が前を向いて歩いていけるよう、ギャンブル依存症問題を考える会は依存症当事者の著名人や当事者、家族に参加してもらいメッセージソング「めくるめく」を制作しました。録音、PV撮影現場を取材しました。

公開日:2026/03/20 07:03
依存症に苦しんだ当事者や家族が前を向いて歩いていけるように——。
そんな願いを込めて、ギャンブル依存症問題を考える会は、依存症当事者の著名人や当事者、家族に参加してもらい、メッセージソング「めくるめく」を制作しました。
プロモーションビデオ(PV)は、3月20日に大阪で開かれた同会の自死遺族会で初公開されました。
1月28日に都内で行われた録音、PV録画の現場を一部取材したので、レポートします。
コザック前田さん「過去を恥ずかしがらなくていい、と表現できるのが嬉しい」
1月28日は午前中から、都内のスタジオに著名人や依存症の当事者、家族が続々と集まってきました。

著名人だけでも、コザック前田さん、高知東生さん、青木さやかさん、江田亮さん、松田樹利亜さん、中村優一さん、増田有華さん、松村ひらりさん、橋口智紀さんら、錚々たる面々です。
順番にヘアメイクを整え、録音、PV撮影に臨みました。

私が着いた昼過ぎには、コザック前田さんが待機中でした。フルマラソンを走るために体を絞り込んでいたらしく、ほっそりとしていたのが印象的です。
さすがプロのミュージシャン。録音も、PV撮影も慣れた様子で、どちらも数回ずつの録音、録画で終えました。本人も「え?もう終わりでいいんですか?」と驚いている感じでした。
実はこのスタジオは、コザックさんが所属する事務所が以前あった場所の近所だそうです。このあたりに通っていた10年前はまさに酒と薬に依存していた時でした。
「懐かしいなあと思って周りを見てきました。シラフで再び来られたことがすごく嬉しいです」
普段、ガガガSPで歌っているパンクとは違う雰囲気の歌ですが、どんな気持ちで歌うのか録音直前に聞きました。
「こういうメッセージソングに参加することが初めてです。依存に関しては自分の中でどうしても隠しておかなきゃならない感覚が強かったので、そういう過去を恥ずかしがらなくていいという大事なことを、歌で表現できるのが嬉しい。丁寧に歌いたいと思います」

依存症は普通の人がなり、回復できる病なんだと伝えたい
もちろん発案者であるギャンブル依存症問題を考える会代表の田中紀子さんも歌いました。
夫の恵次さんと手をつないだり腕を組んだり、時には目を見合わせて笑顔で歌う様子を見て、「いつも仲良さそうですね!」と声をかけたら、恵次さんが「『仲良さそう』じゃなくて、本当に仲がいいんですよ!」と答えてくれたのが印象的でした。

「めくるめく」制作は、田中さんが、高校時代の同級生である音楽プロデューサーの北村岳士さんに「自死遺族会に向けたメッセージソングを作りたい」と相談して動き出したプロジェクトです。
田中さんは「リカバリーカルチャーってこういうことなんだよ、と見せたいと思ったんです。今回、依存症の当事者や家族がたくさん参加してくれていますが、普通の人が顔出しして、『私は依存症です』『私は依存症の家族です』と言えるよう応援する形にしたいと思いました。だからクリーニング店で働く様子や、板金工場で働く様子も出てくる。依存症の人はモンスターではなくて、普通に生活している、普通の人なんだよ、回復できるんだよということを伝えたかったんです」と狙いを語ります。
みんなが共有できる、人間の歌を書きたかった
そんな田中さんからの依頼を受けて、プロデューサーの北村さんは歌詞を書きました。ちなみに北村さんはこれまでもギャンブル依存症の啓発ドラマ「タフラブ」の主題歌『タフ♡ラブ』も作った経験があります。

「めくるめく」について田中さんから狙いを聞いた北村さんは「ラブソングというか、人間の歌として書きたかったんです。ギャンブル依存症や自死についてそのこと自体を書くのではなく、失意の底にいる家族でも友人でも当事者でも共有できる歌詞が必要だと思いました」
「めくるめく」というテーマには、慌ただしく忙しく過ごす時間と、楽しくてあっという間に過ぎてしまう時間と両方の意味を込めました。
「悲しいことがあったり、忙しくて前向きになれなかったりする時もあるし、色々な人から助けられ、仲間と過ごして夢中になる時間もある。その中で次の一歩を踏み出す時、偶然が必然になって人は変わることができる。『思わず踏み出したこの一歩から始まるのかな』という歌詞は田中さんに歌ってもらうことにしました。あの人はまさに、次の一歩を思わず踏み出させる人ですからね(笑)」
北村さんは「依存症の関係者だけでなく、いろんな人が自分に当てはめることのできる歌になったと思います。これを聞いた人が次の一歩を踏み出すための応援歌になったら嬉しいですね」と語ります。

作曲・編曲を担当した田上陽一さんは、「コンセプトは聞いていたので、みなさんで歌えるような歌いやすい、覚えやすい曲にしたかった。テーマがテーマですので、人の心に届くような、聞いた人にも変化をもたらすような歌にしたいと思いました。本気で取り組んだ楽曲なので、皆さんが歌うのを聞いて自分も感動して涙が出てしまいました」と話していました。
高知東生さん「今日は泣いても、明日には笑顔で一歩踏み出す力がある」
Addiction Reportではお馴染みの俳優、高知東生さんも昼過ぎにスタジオ入りしました。
「腹減ったよ〜」と言いながら、お昼ご飯に用意されたお弁当をかき込み、待機中は周りの人とのおしゃべりを楽しんでいました。現れるだけで周りの空気を明るくする人です。

高知さんは「言葉に意味があって、あったかさがあって、明日に向かって頑張ろうと思える歌」と話し、特に印象に残る歌詞として、「古い写真に / とびきりの笑顔みつけて / 蘇るあの日が眩しすぎてまた / 瞳を閉じた 」の部分をあげました。
「俺もお袋の写真を見ては、死んだお袋のことを思い出すからね。元々、自死遺族の人たちに、死んだとしても思い出は残っているからと伝えて共感していたけれど、そんな気持ちが現れている歌。今日は泣いたとしても、みんな明日には笑顔で一歩を踏み出す力があるのは間違いない。それを信じて、また笑顔で過ごそうよというメッセージが込められていると思います」
そう話しました。
「一人じゃないんだって応援してくれる歌」
タレントの青木さやかさんも、澄んだ歌声で熱唱していました。

この歌について「依存症でなくても胸に迫るものがあるし、曲も感動的です。見守ってくれる人とか、待っていてくれる人とか、帰っていけるところがあると伝えてくれて、辛い時こそ一人じゃないんだって応援してくれる歌でもある。そんな気持ちを込めて歌いました」と語ります。

そして、「今でも子供だった時のこととか、今でも何かが欠けていると感じる時のことが歌われているような気がします。私だけでなく、この歌を聞いて励まされる人がいたら嬉しいですね」と話してくれました。
壮観だった全体撮影
ソロパートはギャンブル依存症の当事者や家族も歌っています。

傷つき、傷つけられた過去を通り抜け、今ここでは晴れやかな表情で歌っています。

コーラスはギャンブル依存症者の家族「ギャン妻」たちが中心になって歌っています。苦しみを経験した人たちが仲間と一緒に、自分たちの歩んできた道のりを肯定し、未来を信じる歌詞を歌う姿は感動的です。

そして、個人の歌入れが終わった後、ギャンブル依存症の当事者やご家族も含めた全員がスタジオ入りして、全体撮影が行われました。

複数のカメラを使って映し出される映像と合唱は壮観です。
ぜひ実際のPVを見ていただければと思います。

とても覚えやすい歌詞、曲です。どうぞみなさんも口ずさんでください。
「めくるめく」
出会えたこと
生まれてきたこと
同じ時を生きてきたこと
そこに溢れた
その笑顔が
全ての答えになる
見慣れた空は
同じ歩幅で
新しい朝を連れてくる
少し変わった
空の色が
流れた時を知らせる
街のざわめき
懐かしい声が呼ぶようで
ふと足を止めて振り返る私に
風が吹いてた
めくるめく日々の中で
巡り巡りゆく季節
思わず踏み出した
この一歩から
始まるのかな
手を伸ばせば
触れられるような
あなたをいつも感じている
還らないもの
変わってゆくもの
すべては時の流れ
古い写真に
とびきりの笑顔みつけて
蘇るあの日が眩しすぎてまた
瞳を閉じた
めくるめく光の中
巡り巡りゆく想い
あなたに会えたこと
愛されたこと
それだけでいい
めくるめく日々の中で
巡り巡りゆく季節
思わず踏み出した
この一歩から
始まるのかな
明⽇が
