日本にもリカバリーカルチャーを 依存症への理解を広げるキャンペーン「I'm an ADDICT」を先行公開
日本にも依存症に対するリカバリーカルチャーが生まれることを願って、依存症への理解を広げるためのキャンペーン「I'm an ADDICT」が始まります。クリエイティブ・ディレクターの橋島康祐さんと撮影を担当したカメラマン、後藤勝さん(58)にインタビューしました。

公開日:2025/02/03 02:01
ギャンブル依存症問題を考える会は、依存症への理解を広げるためのキャンペーン「I’m an ADDICT」を今春から発進する。
「私は依存症です」という意味の英語ロゴが入ったTシャツやパーカー、帽子を身につけ、その姿を発信する。その広がりによって依存症に苦しむ人への偏見を払拭し、回復を応援する空気を社会に作りたい——。そんな運動だ。
2月2日に東京・大手町で開かれた1周年記念イベントで初めて先行お披露目され、会場にはこの企画に賛同した著名人らのポートレート(撮影・後藤勝)が飾られた。今後、撮り溜めていき、写真展も開く予定だ。
この企画にどんな想いを込めたのか。発案者でこのプロジェクトのクリエイティブディレクター、橋島康祐さん(47)と撮影を担当したカメラマン、後藤勝さん(58)に聞いた。
※Addiction Reportは、「I’m an ADDICT」のメディアパートナーです。
「わたしたちの未来をひらく依存症啓発キャンペーン」がきっかけ
このプロジェクトの発案者でディレクターを務めるのは、Addiction Reportのイベントで度々カバーイラストのデザインを手がけてきた、Hangover Plate Inc. クリエイティブ・ディレクターの橋島康祐さんだ。

橋島さんがこのプロジェクトを思いついたのは、「ダメ。ゼッタイ。」に代わる依存症啓発のコピーとポスターを募集した「わたしたちの未来をひらく依存症啓発キャンペーン」に、審査員として関わったことがきっかけだ。
橋島さんは企業の広告などの仕事を多く手掛けてきたが、広告の質も2010年代ぐらいから変化しているのを感じてきた。
「利益だけ追求するのではなく、社会に対して良い影響を与える企業活動である『ソーシャルグッド』が叫ばれてきていて、自身も元々そういうことに関心がありました。特にダイバーシティ(多様性の尊重)はずっと気になっているテーマ。HIPHOPなどを見ても、マイノリティがメジャーなカルチャーを創り出すことを繰り返していて、そういう文化が好きだったので、依存症にも関心を持つようになったのです」

しかし、橋島さんが働いてきた広告業界は、そうした文化を地道に育てることではなく、いきなりインパクトを叩き出すような仕事が求められがちだ。
「それが主流なのがすごくシャクでした。自分としては、これまでの文化に対抗したものを創って、大きく育てていきたい。当たり前のものとして扱われてきた『ダメ。ゼッタイ。』は間違いだとして、対抗する文化を育てるという『わたしたちの未来をひらく依存症啓発キャンペーン』の考え方にとても共感しました」
そして、この審査に関わったことで、依存症であることを隠さず、自然に助けを求められるような社会にするために、自身も何かできないかと考えた。
そこで思いついたのが、「I’m an ADDICT」プロジェクトのアイディアだった。
アパレルで自分の考えを表明
まず頭に浮かんだのは、H I V/エイズへの理解や支援を示すレッドリボンや、乳がんの啓発や支援を示す「ピンクリボン」。でもそれは少しハードルが高い。依存症についてよく知らない人でも、ファッションとして気に入ってくれるところを入り口に、もっと気軽に身につけられるものはないか?

「Tシャツや帽子などのアパレルは、自分の考えを表明するメディアでもあります。アニメ好きの人がアニメTシャツを着ているのは、その人がそのアニメをどれだけ好きかを表明し、みんなに知ってもらいたいからですよね。身につけて自分の意見を表明できたらいいなと思ったし、身につけた姿をSNSなどで発信することで、『アイスバケツチャレンジ(※)』のように理解と支援を表明していくつながりを創ることができたらと思いました」
※筋萎縮性側索硬化症(ALS)の研究資金を集めるためのチャリティー活動。バケツに入った氷水を頭からかぶる映像を発信し、次の人を指名してリレーのように繋いでいくことで、ALSへの理解と寄付を促す運動。

丸っこい文字のロゴも橋島さんのデザイン。
「イメージとしては、書き言葉ではなく、人が喋っている言葉のように見せたかったんです。白黒にしたのは、色で意味を持たせたくなかったから。みんながそれぞれの思いで身につけてもらいたかったし、みんながそれぞれの色と組み合わせることができるニュートラルな白黒にしました」

橋島さんとしては、ムーブメントを起こした後に、この考え方が当たり前になることを願っている。
「依存症の人の回復を応援することが当たり前になったら、こんなムーブメントはいらなくなります。マイノリティから生まれた文化がメジャーになることが、最終的に目指すゴールです。厳罰ではなく、治療。それが当たり前になったら、このプロジェクトは成功なのかなと思います」
その人のありのままを写す
撮影を担当した写真家の後藤勝さんは、自身も戦争取材の後遺症から薬物に依存した経験がある。依存症には深い関心を寄せてきて、A S K依存症予防教育アドバイザーの資格も取った。

これまで、偏見を持たれるHIV/エイズと共に生きる人や難民、被差別部落などへの理解や支援を呼びかけるポートレート作品を撮影してきた。
今回のプロジェクトでの撮影を依頼されて、どんなことを思ったのだろうか?
「まさしく自分がやってきたこと、やりたいことと同じだったので、嬉しかったです。30年写真を撮ってきて、『写真はポートレートだ』と行き着きました。生身のその人を写すのがポートレート。今回のプロジェクトでもその人のありのままが写ればいいなと思って撮っています」

撮影は後藤さんのスタジオで行い、白のバックに照明もシンプルでストレートなものにした。
「白のバックは、その人が一番引き立つ背景なんです。ごちゃごちゃ飾る必要はない。撮影した結果、やはりこれで良かったと思いました」
笑い、泣き、時には踊りながら
2月2日にお披露目する第一弾として、高知東生さん、中村うさぎさん、コザック前田さん・真奈美さん夫妻、田代まさしさん、姫野桂さん、すやよしこさんを昨年12月から今年1月にかけて撮影。撮影は、笑い、泣き、時に踊りながら、順調に進められた。
「スタジオ撮影は撮る側と被写体の人の共同作業です。どちらがいくら頑張っても、片方が同じ目標や、同じ一つのものを創ろうという思いを共有しない限り、うまくいきません。今回、被写体の方もこの撮影の趣旨を理解し、頑張ってくれて、アパレルのデザインのイメージにも近づけてくれた。周りの人も盛り上げてくれました。最終的にこんな作品が撮れたのは、みんなが協力してくれたからだと思います」
次のアクションを起こすのはあなた
後藤さんはこのプロジェクトがどのように広まってほしいと考えているのだろう。
「特に日本では、『私は依存症です』と表明はしないし、依存症を快く思わない人も多い国です。身につけることで、それを目にした人が『これってどういう意味なんだろう?』とその意味を調べて、理解につなげてもらいたい。そのためにはまず着てもらうことが必要ですが、意味がわからない段階でもカッコよくて可愛いデザインなのですごくいいと思います」

「そして、写真を見た人には、依存症の問題や依存症がこの国でどう扱われているのかをまず知ってほしい。僕ができることはチームのイメージ通りに撮影すること。その次のアクションは、見た人が起こすものだと思います」
Tシャツ、パーカー、帽子などのアパレル類は、間もなく一般にも販売される(このサイトでもお知らせします)。Addiction Reportでもお知らせする。売上の一部は、依存症回復のための支援施設に寄付される。
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コメント
パーカーとバケハがカッコ良すぎて買っちゃいました!
I'm an ADDICTのシールをスマホに貼り付けてます!
I'm an ADDICTを身につけて、いろんなところへ出かけていこうと思ってます!コーディネートするのが楽しみです。
声をあげてくださったみなさんの姿に勇気をもらいました。受け取ったバトンを、依存症の問題をまだ知らない人にも伝えていきたいです。
アパレル買いたいです!
依存症に対する誤解と偏見をなくそうと、温かさと強いメッセージを込めて開催されたアディクションの記念フォーラム。笑いと涙が混じった幸せな時間でした。息子は再犯で勾留中ですが、回復途上の方々の姿は希望です。
アパレルブランドの帽子とTシャツを購入。仲間から「似合ってる」と褒められました。春になったら身につけて電車に乗ろうと思います。
小さな思いが大きなうねりに変わることを願っています。
Tシャツ買いました。アレンジして楽しみたいです❣️
依存症と言う病気がもっと理解されて社会に広まり、今困ってる人がこれを見て第一歩を踏み出せたらとても良い事ですよね
そう願ってます
【リカバリーカルチャー】
素晴らしいと思います。
完全な人なんてほとんどいないのに、非難しあうことが多い現状。オープンに認めあって笑い合って行けたら、より創造的でチャレンジしやすい未来に進めるのに。
橋島さんと後藤さんの思いに共感しました!
私も、社会を変えていきたいです。
ファッションって、メディアなんですね!たしかにメッセージを発信できますね。
マーシーの写真のかっこよさ!!
依存症と共に生きる人、回復の道を歩く人に、よりそう気持ちを持ち続けたいです。
ひろがれ〜!
今までセルフスティグマを持ち、自分たちを恥じていた私たちが、回復を続け、このブランドでカッコよく世間に依存症のこと、自分たちの新しい生き方を伝える‼️
なんて素晴らしい👍
関わってくださった皆様、ありがとうございます。