Addiction Report (アディクションレポート)

買い物依存は「底尽き」もホスト狂いで溶かした3000万円、「私が欲しかったのは愛だった」

買い物依存が「底尽き」したかと思ったら、次なる依存対象はホストに…中村うさぎさんは最終的には3000万円をホスト狂いの生活で「溶かした」と明かす。

買い物依存は「底尽き」もホスト狂いで溶かした3000万円、「私が欲しかったのは愛だった」
Addiction Reportの取材に応じた中村うさぎさん(撮影・黒羽政士)

公開日:2024/04/26 02:00

買い物依存の次はホスト狂いの生活へ。依存対象がすり代わる中で作家・エッセイストの中村うさぎさんは、巨額をホストに費やしていく。

結局のところ、中村さんが手にしたかった物とは何だったのか。【ライター・千葉雄登】

前借りする時は「断腸の思い」

ーーエッセイで紹介しているお話は全部本当のことなんですね。

もちろん、そうですよ。嘘なんか一言も書いてない。

シャネルとか色々なブランドから受注会の招待状が届くでしょう。一度は、「今回は絶対に行かないぞ」と心に決めるわけ。だって、そんな場所に行ったらさ、最終的には何百万円も買わされるハメになるのが目に見えてるから。

頭では分かっているのに、心の中は「受注会に行きたい」という気持ちでウズウズするわけです。ベッドの上をゴロゴロと右に左に回転しながら、「行きたい!」「行きたくない!」ってジタバタし続けて。

でも、やっぱり最終的には行くわけですよ。しかも、受注会に行ったら行ったで「あれをちょうだい」「これもちょうだい」と色々と注文してしまう。支払いは商品が届いてからだし、その頃にはきっと払えるはずだと自分に言い聞かせてね。

数ヶ月後、色々なブランドから「ご注文いただいた商品が届きました」って電話をもらった瞬間はワクワクします。洋服は好きですから。

でも、いざ着てみると「どうしようかな」って、ふと我に返る。「これ全部買うと300万円だぞ」とか、「この買い物代を払うだけの印税は残っているのか」みたいな。

ここからはもう「買いたい」という気持ちと、「買っちゃダメだろ」という気持ちの戦いです。

編集者に電話をかけて、「もうすぐ発売のあの本って何部刷ることになったの?」って確認をしたり、前借りのお願いをしたりする時はもう毎回断腸の思いです。本当は前借りなんてしたくないし、何度もやっていると「またかよ」って顔をされるでしょう。

だけどね、やっぱりシャネルのこれを、エルメスのこれを、グッチのこれを買うためにはやめられなかったんです。

ーー結局のところ、中村さんは何が欲しかったのでしょうか。

たぶんさ、私って何が欲しいのかが自分で分かっていなかったんだと思うんだよね。

当時は離婚したばかりで孤独だった。でも、ラノベ作家としてデビューしてお金はガンガン入ってきた。

しかも付き合っていたのは不倫をしている男ですよ。そんな男と付き合っていると、どんどんと心がボロボロになるんです。だって、その男は絶対に自分のモノにはならないから。まぁ、私も私でその人と結婚する気はなかったから、私のモノになっても困るんだけどさ(笑)。

その頃は荻窪に住んでいたんだけど、それもその男が荻窪に住んでいたからなんですよ。

ある時、「こんなことを続けるのは、その人の奥さんにあまりににヒドい」と思って、別れることを決めたんです。

お金も手に入ったし、荻窪に住む理由もなくなったから麻布へ引っ越して。その頃からですね、新宿二丁目で遊ぶようになったのは。

やっぱりね、寂しかったんだと思うんですよ。

仕事もサラリーマンではないから孤独だし、ずっとパソコンに向き合って、ふとした時に「私、何やってるんだろう」って思うんです。「もう今日はこれ以上書けない」となれば、二丁目に行ってバーンと派手に遊んで。酔っ払ってはバカ騒ぎしていました。

撮影・黒羽政士

ーー買い物だけが気晴らしだった。

でもね、そのうちに買い物も欲しいものがなくなってくるのよ。

依存症の「底尽き」って言うんだけど、もう行くところまで行くと、次にやることがなくなっていく。お金を払うのも大変だしさ。

同じ頃に新宿二丁目で遊ぶことにも飽きてきて。いつも同じ店で飲むと、友人関係も固定化していくわけです。やがては行く店も固定化していく。

そんな時に友達と「河岸を変えて、向かいへ行こうか」という話になったんです。二丁目の反対側、それはつまり皆さんもご存知の歌舞伎町です。

それがまさかホスト狂いの入り口だったとは、当時は知るよしもありませんでしたよ。

歌舞伎町に足を踏み入れたのが「運の尽き」

ーーそれまでは、ホストクラブへ行ったこともなかったのでしょうか。

全くなかったです。幼い頃、あれは小学校3年生くらいのことだったと思うんだけど、当時住んでいた江戸川区から西を眺めると、遠くに新宿の街が見えたんです。

その新宿の街を指差しながら、母親が「あそこはすごい恐ろしいところだよ」と私に言うんです。「あんた、間違っても新宿・歌舞伎町にだけは行っちゃダメよ」ってね。もちろん、当時は新宿まで行く術もないんだけどさ、そこにある歌舞伎町という街には近付いてはいけないと、とことん刷り込まれていたんです。

それなのに、新宿二丁目に飽きた私は友達とホストクラブへ足を踏み入れたんです。それがもう運の尽きでした。

ーー買い物依存の次は、ホストにハマった…

もう大変なハマりようでしたよ。

ーーその理由については、ご自身の中でどのように捉えているのでしょうか。

離婚した後に買い物依存についてインタビューを受けた時に、インタビュアーから「やっぱり寂しいから、愛が欲しいから、そういう行動をするんじゃないですか」って言われた時にカチンときて、「別にそういうんじゃないわよ!」って心の内では反論していたんです。

でもね、ホストにハマった時に、ようやく「私が欲しかったのは愛だったのかな」って思ったの。私はその時、「愛してくれる男」を求めていた。

当時はすでに今の夫と結婚していました。でも、彼はゲイだから、恋愛とセックスは家に持ち込まないという約束をして結婚したんです。とても自由な関係だったけど、夫とのパートナーシップの中に恋愛関係は含まれていないから、どこかには恋愛をしたいという欲求があったんだと思うんです。

もちろん頭ではホストが愛しているのは私の金で、私のことではないと分かっていますよ。それは十分すぎるくらい分かっているつもりだった。でも、やっぱり…私は誰かに必要とされたかったんだよね…

ホストは私の金が目当てだとしても、本当に必要としてくれている。「このホストをNo.1にしてあげる」という感覚って、競走馬を育てるゲームみたいなものなんですよ。自分の推しをNo.1にするために、私もお金をひたすら突っ込んでいきました。

撮影・黒羽政士

でも、そのうちお金も尽きていき…「もうホストクラブには行けないの。あなたがNo.1になれなかったのは残念だったけど、No.3にはなったわけだし、良かったじゃない」って彼に伝えたんですよ。

すると、その男が「最後に食事にでも行こうよ」って誘ってきた。で、その食事の場で言うんです、「君のことが好きなんだ」って。

いやいやいやそれはないでしょって思うでしょう?

頭では「そんなわけがない」って私も分かっていますよ。だけど、そのホストは私の好みのタイプだからさ、嬉しくないわけがない。

私の中には常に白雪姫と魔女がいてね。魔女は非常にクールでシニカルなんだけど、白雪姫の方は何でもすぐに信じる奴なんですよ。

そのせいで、これまで何度も失敗してきた。それでも、「もしかすると今回は奇跡が起こるかも」みたいなことを白雪姫が言い出すもんだから、信じてしまうんですよね。

そこからはホストから枕営業もされてね。結局、ホストクラブで総額3000万円以上を溶かしました。


【中村うさぎ】作家・エッセイスト

1958(昭和33)年、福岡県生まれ。同志社大学卒業。0Lやコピーライターなどを経て『ゴクドーくん漫遊記』(角川書店)で小説家デビューし、同作がベストセラーに。『ショッピングの女王』(文藝春秋)、『女という病』(新潮社)、『うさぎとマツコの往復書簡』(双葉社)など著書多数。

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【中村うさぎさんインタビュー】

コメント

1ヶ月前
まり

中村うさぎさんの内容もスゴいのですが

ライターさんの質問ギョッとしました。

買物依存の人にこれを聞くのか?と。

1ヶ月前
はな

回を重ねるごとに豪快なエピソードが飛び出してびっくりします!

うさぎさんの内省も深まる様子にとても感心します。

次はどうなるの!?

1ヶ月前
キャサリン

魔女と白雪姫、すっごくわかる。

心のどこかに白雪姫がいる。

いつか王子様が、という気持ちがどこかに隠れてる。

ずっと頑張って生きてきたからこそかもしれない。

仲間に、白馬に乗った王子様なんて来ないんだよ!と言われた瞬間に、隠れてた白雪姫がひょっこり現れ、あらまそんなとこにいたんだね、あなた。と驚いたことがある。

ほんとに王子様が現れたら困っちゃうし、一番苦手なタイプなのに。

「誰かに必要とされたい」という感情は、ほんと魔物ですね。

誰かを基準でしか、自分を測れない、認められなくなっちゃうんですよね。

最終回が楽しみであるのと同時に、終わっちゃうのが寂しいなあ。

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