Addiction Report (アディクションレポート)

マシュー・ペリーのケタミン過剰摂に関与した最後の一人が司法取引へ 許されない金儲けのための薬物提供

人気俳優、マシュー・ペリーの死の原因となったケタミンの過剰摂取。この事件に関係した最後の一人が司法取引に応じることを決め、区切りがつこうとしています。彼らは何をしたのでしょうか?

マシュー・ペリーのケタミン過剰摂に関与した最後の一人が司法取引へ 許されない金儲けのための薬物提供
「ケタミンの女王」として知られたドラッグディーラー、ジャスヴィーン・サンガ(42)(本人のInstagramより)

公開日:2025/08/22 02:06

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「フレンズ」のマシュー・ペリーがケタミンの過剰摂取で死亡して、まもなく2年。彼の死に関与した最後の人物がついに司法取引に応じると決め、ようやく区切りが見えてきた。

 起訴された5人のうち、最後まで無罪を主張したこの人物は、「ケタミンの女王」として知られたドラッグディーラー、ジャスヴィーン・サンガ(42)。ペリーが亡くなった日に注射したケタミンは、この女性が提供したものだ。サンガはまた、2019年にドラッグを過剰摂取して死亡した当時33歳の男性にケタミンを提供したこともわかっている。

 サンガは、ペリーの死が世界中に報道された直後、優雅に日本旅行をしては、東京のマンダリンオリエンタルホテルなどで撮影した写真をインスタグラムに投稿していた。欲のために人を殺すことをなんとも感じていなかった彼女も、ようやく自分の罪の重大さに向き合うことを強いられたということだ。

サンガは、ペリーの死の直後、優雅に日本旅行をして東京のマンダリンオリエンタルホテルなどで撮影した写真をインスタグラムに投稿していた

若い頃から依存症に悩まされて

 54歳で亡くなったペリーが、若い頃からずっと依存症に悩まされてきたことは有名。最初は、アルコール。14歳で初めて口にし、「フレンズ」の大ヒットで国民的スターになった頃には毎晩飲み、二日酔い状態で撮影をしていたと、本人は認めている。

 違法ドラッグも使ったが、映画「愛されずにはいられない」の撮影で怪我をし、バイコディンを処方されると、人生はさらに転落。

 アメリカでは近年、オピオイド依存症が大問題になっているが、バイコディンもオピオイドを含む鎮痛剤で、ペリーは1日に55錠も飲むほど依存してしまった。それだけの量を普通の方法で入手するのは不可能なので、家の購入に興味があるふりをしてオープンハウスを訪れ、薬の棚をこっそり探ってオピオイドを見つけると盗んだと、彼は告白している。

回復のための努力を繰り返したが

 そこから抜け出すために、何度も努力をした。滞在型回復施設には15回も入所したし、自助団体アルコホーリクス・アノニマス(AA)のミーティングにも、数千回参加している。依存症は健康にも大きな影響を与え、手術も14回も受けた。

 最後の手術を受けてから回復に向けて再び真剣に取り組むも、鬱に悩まされていたペリーが抗うつ効果のあるケタミンに出会ったのは、合法のクリニックだ。ペリーはもっと量を増やして欲しいとお願いしたが、そのクリニックは拒否。そこに現れたのが、サルバドール・プラセンシア(43)という緊急治療を専門とする医師だ。

医師にもかかわらず、依存症につけ込んで薬物で金儲け

 大物セレブがケタミンを欲しがっていると知ったプラセンシアは、ケタミン専門クリニックを経営していたことがある長年の知り合いでサンディエゴの医師、マーク・シャーヴェス(55)に連絡し、協力を求めた。「あのバカ、いくら払うだろうね」、「さあ見てみよう」というプラセンシアとシャーヴァスのテキストメッセージのやりとりからも、本来、人の命を救うべきである彼らがペリーの依存症につけこんで金儲けをしようとしていたことがうかがえる。

 実際、プラセンシアは、シャーヴェスが1瓶12ドルで入手したケタミンを2000ドルでペリーに売りつけていた。シャーヴェスは、過去の患者の名前を使った偽の処方箋でケタミンを注文。プラセンシアが直接のやりとりをしたのはペリーの住み込みパーソナルアシスタント、ケネス・イワマサ(60)だが、プラセンシアは駐車場に停められた車の中でペリーにケタミンを注射したこともある。

ケネス・イワマサ(本人のLinkdInより)
ケタミンの取り引き窓口になり、ペリーに注射もしていたケネス・イワマサ(本人のLinkdInより)

 それでも量が足りなくなる不安が出てくると、ペリーは、業界関係者で知人のエリック・フレミング(55)が紹介したサンガからもケタミンを調達するようになった。フレミングは、良い品を「お手頃価格で入手してあげる」ための手数料を、ペリーに要求。直接の窓口は、やはりイワマサ。ペリーにケタミンを注射するのは、プラセンシアから簡単な指導を受けただけのイワマサだ。

 死の4日前に届けた25瓶を含め、合計でペリーに51瓶を売ったサンガとフレミングは、テキストメッセージを削除するなど、保身に必死になった。警察は、「9割の確率で、(かかわった人たち)みんな大丈夫だと思う。僕は(ペリーと)一度も直接やりとりしていないし。相手はいつもアシスタント(イワマサ)だった」という、フレミングがサンガに残した録音メッセージも確認している。

それぞれに言い渡される重い量刑

 プラセンシア、シャーヴェス、イワマサ、フレミングは、司法取引に応じ、有罪を認めた。最も早い9月に量刑を知らされるのは、シャーヴェス。嘘の処方箋でケタミンを調達した事実を認めている彼には、最長で10年の実刑が待ち受けている。彼は医師免許も返還した。

 11月には、イワマサとフレミングの量刑が言い渡される。最初に有罪を認め、ほかの容疑者についての捜査に協力したイワマサに予想される判決は、最長で15年の刑務所生活。フレミングの場合は、最長25年。

 6月に司法取引に応じたプラセンシアの量刑判決は12月。最長40年を言い渡される可能性がある。彼の弁護士は、ペリーを死に至らしめたケタミンはプラセンシアが提供したものではないということ、本人は大きな責任を感じていることを強調している。プラセンシアは保釈金を払って保釈され、その後も患者にその事実を通達し、危険な薬の処方をしないという条件で診療を続けることを許されてきたが、医師免許を自主的に返還するつもりでいるという。

金儲けのために、ペリーにケタミンを提供し続けた行為が許されるはずもない

 正式に司法取引をするのがこれからのサンガは、最長で65年を刑務所で過ごすこともあり得る。しかし、司法取引の過程で短くしてもらえることを、彼女と弁護士は期待しているようだ。司法取引の一部として、サンガは、自分のアパートを違法ドラッグの保管、包装、販売拠点として使っていたことも認めるかまえ。サンガは、昨年以来、勾留生活を送っている。

 依存症に苦しんできた人だと知っていながら、自らの懐を潤わせるために薬物を提供したこの人たちの罪は、とてつもなく重い。イワマサの立場はやや違っていたかもしれないが、このままでは危ないとわかっていながら止めるどころか手助けをしたという意味では同じだ。

正しい量刑が言い渡されることで再発防止を

ケタミンの過剰摂取で亡くなったマシュー・ペリー(本人のInstagramより)

 ペリーには彼を思う家族や友人がたくさんいた。その人たちは、彼のことを心配していた。それでも、欲深いこれらの人物は、あるいは彼の最も近くにいた人は、うまくすべてを隠しつつ、ペリーを死に向かうほうへとプッシュしたのだ。その結果、ペリーが死んで慌てふためいた彼らに、同情の余地はない。

 彼らに正しい量刑が言い渡されることで、今後同じような機会を得た人たちが引き受ける前に考えるようになることを願う。依存症は病気であり、周囲のサポートが必要。それを利用するなど、絶対に許されない。

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